Research Institute for Sustainable Humanosphere

第217回定例オープンセミナー
木質バイオマス素材の固相流動現象による成形技術(流動成形の開発)

開催日時 2017(平成29)年2月1日(水) 12:30–13:20
開催場所 総合研究実験1号棟5階 HW525
題目 木質バイオマス素材の固相流動現象による成形技術(流動成形の開発)
Developments of plastic forming process of wood biomass resources using their solid-state fluidity
発表者 三木恒久(国立研究開発法人産業技術総合研究所・主任研究員)
関連ミッション ミッション4 循環材料・環境共生システム

要旨

これまでに、木材の高機能化・高度利用に関する研究は数多く実施されてきたが、建築材料・部材以外の用途に木質材料が適用されている例は少ない。それは、金属やプラスチックなどの工業材料に比べて、力学的性質のバラツキが大きいために、製品の特性・品質制御が困難であることが要因である。また、木材を構成する細胞壁は、結晶性セルロースを骨格に、非結晶物質が充填した複合高分子層の階層的(層状)構造から形成されるために、材料科学に基づいた木材物性の発現に関して未だ不明な点が多いことも物性制御を困難にしている。したがって、木材の微細構造とマクロな物性を関連づける研究の蓄積が必要であり、このような微細構造の観点から種々の加工・処理条件を最適化する“木質系材料の加工・処理技術”の確立は、今後、工業材料として木材を利活用するためには必須となる。

本研究では、木質系素材の工業材料化を図るべく、微細構造の観点から物性を制御しようとする研究開発を行っている。その中で見出した“木質流動現象”(図 1)を塑性加工などの賦形技術として工業的に確立することを目的としている。

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図 1 木質流動現象

図 1の原子間力顕微鏡(AFM)像に示すように、木質素材に適切な添加剤を導入することによって、細胞間層がゲル状に変化する。この状態で、外力を作用させると、細胞界面ですべり変形を生じて細胞同士の相対的な位置変化を与えることができる。その結果、巨視的な大変形を与えることが可能である。 図中、光学顕微鏡像においては、ブナの添加剤処理材の変形率は、繊維(L)方向は約10 %に対して、接線(T)方向には約150 %、半径(R)方向(紙面垂直方向)は約−90 %にも及んだ。

一般に、製品形状を得るための工業的手法として、金属材料やセラミックス、樹脂材料では塑性加工が広く用いられている。木質系材料においても、圧縮加工や曲げ木など変形加工と呼べる成形法は古くから利用されてきたが形状自由度や生産性は他の工業材料と比べて低い。

木質流動現象を用いれば、汎用の塑性加工の適用が可能となり任意形状の木質製品を比較的高い生産速度で得ることができる。更に、添加剤として熱硬化性樹脂などを用いれば、成形と同時に、強度や寸法安定性、耐熱性などの高機能化を図ることもできる。図 2のような射出成形も行える。木質繊維の配向状態を制御することによって、曲げ強度150 MPa以上(密度約1.4 g/cm3)のエンジニアリングプラスチックに匹敵する物性を得ることも十分可能である。

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図 2 射出成形への適用例

現在、産総研の本研究グループが主体となって木質流動成形技術の実用化に向けた共同研究を行っている(図 3)。特に、汎用樹脂製品に対して意匠性や物性面で優位性のある用途での展開を目指している。自動車内装材では、意匠・デザインが重要視されるセンターパネルなど、現在突板(0.3 ㎜厚さ)が使用されている本木パネルへの本成形品の適用、建材付属部品ではサッシカバーなど難燃性能と複雑形状が要求される用途への展開、音響部材としては音質に優れた“竹”の流動成形による振動板の開発を行っている。また、本技術の実用化には金型や潤滑剤などの周辺技術の改良も必要不可欠であるため木質素材と含浸剤だけでなく製造技術も含めた検討を行っている。今後の課題としては、弱電製品、情報・家電周辺機器部材など触感が求められる用途において、本物感に代表される質感を向上させる素材処理方法を開発することである。

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図 3 流動成形の実用化研究

参考文献:日刊工業新聞社「工業材料」誌『産総研NEWS』2015年5月号

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2017年1月23日作成

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