Research Institute for Sustainable Humanosphere

第209回定例オープンセミナー
Development of techniques for highly controlled chemical treatment in wood flow forming

開催日時 2016(平成28)年7月27日(水) 12:30–13:20
開催場所 総合研究実験1号棟5階 HW525
題目 Development of techniques for highly controlled chemical treatment in wood flow forming
木材の流動成形における高度制御型化学処理手法の開発
発表者 田中聡一(京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション4 循環材料・環境共生システム

要旨

木材の流動成形は、木材細胞間の滑りによる流動現象を利用した新しい加工技術である。流動成形で得られた成形体は従来の木質材料や木材よりも高強度であることが知られている。流動成形では、塊の木材を金型に入れ圧縮・流動させることで成形体が得られる (図 1)。流動成形の利点は、木材を一工程で自由な形に成形でき、かつ木材構成単位である細胞構造を壊さずに活かすことができる点にある。

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図 1 木材の流動成形プロセス

しかしながら、無垢の木材で作製した成形体は、沸騰水中に1時間浸漬しただけで分解する(図 2)。従って、形状や性質が安定した成形体を得るためには、原料となる木材に化学処理を施すことによって木材細胞壁中の不安定な非結晶領域を安定化させ、同領域が水分の収着点や分解の起点になることを防がなくてはならない。

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図 2 無垢の木材で作製した成形体

木材の安定化を目的とした化学処理は、木材原料に処理物質の溶液を注入し(図 3(i)含浸工程)、溶媒を蒸発させる(図 3(ii)養生工程)という手順で行われている。しかしながら、化学処理した原料の成形体は、それでもなお変色(図 4)や変形を起こすのが現状である。

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図 3 流動成形する前の木材原料の化学処理

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図 4 化学処理した木材原料で作製した成形体の変色

これは、成形前の木材細胞壁中に、処理物質が十分に行き渡っていない不安定な非結晶領域が残存することによるものと考えられる。従って、処理物質が原料中の細胞壁に十分に行き渡るように化学処理を制御する必要がある。

本研究では、不安定な非結晶領域を安定化させるために、特に養生工程(図 3(ii))に着目した 養生工程の直前では(図 5(i))、細胞壁の非結晶領域には、処理物質だけでなく溶媒も存在するため、非結晶領域が不安定なままである。養生工程においてはある大気条件下で(図 5(ii))、 処理物質が細胞内腔から細胞壁へ拡散し、細胞壁中の溶媒を置換することが示唆されている(A. J. Stamm (1956) Forest Products Journal, Vol. 6, No. 5, pp. 201–204)。しかしながら、物質の細胞壁への拡散が促されるのに適切な大気条件(相対湿度(RH)や温度)は明らかになっていない。大気条件を適切に操作できれば、化学物質を細胞壁にたくさん拡散させて、細胞壁中の溶媒を置換することができるため、細胞壁を化学物質でより一層満たすことができるはずである。

本セミナーでは、処理物質による細胞壁の充填にとって適切な養生条件を探すことを目的として、養生のRHが細胞壁への物質拡散に及ぼす影響を調べた研究について紹介する。

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図 5 化学処理における養生工程の重要性と課題

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2016年7月22日作成

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