Research Institute for Sustainable Humanosphere

第199回定例オープンセミナー資料
ジオスペース探査ERGプロジェクト

開催日時 2015(平成27)年10月21日
題目 ジオスペース探査ERGプロジェクト
Geospace Exploration Project: ERG
発表者 三好由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所・准教授)
関連ミッション ミッション 3 (宇宙環境・利用)

要旨

内部磁気圏と呼ばれる地球の周辺の宇宙空間には、放射線帯(ヴァン・アレン帯)と呼ばれる高エネルギーの荷電粒子が捕捉されている領域が存在します。この放射線帯の粒子は、人工衛星の帯電やなどを引き起こすため、その変動過程の理解と予測は宇宙天気研究の最重要課題の一つです。放射線帯に存在する高エネルギーの電子の数や空間分布は、宇宙嵐と呼ばれる太陽や太陽風に起因して地球周辺の宇宙空間で起こる擾乱時に大きく変動することが知られています。放射線帯の電子数の減少や増加がどのような物理メカニズムに起因するのか? そのメカニズムの候補として様々なモデルが提案されています。しかし、変動を引き起こす主要なメカニズムについては、まだ特定されていません。電子のエネルギーを増やすメカニズムとして、低いエネルギーの電子がプラズマの波との電磁気的な相互作用によって加速され高いエネルギーになるプロセスがあります。私たちは、1 eV程度の低エネルギープラズマから、MeVを超える高エネルギーの電子がプラズマの波を介して動的に結合する「エネルギー階層間結合」が放射線帯の変動を理解するためのキーワードと考えています。

この放射線帯の変動要因の解明、さらには内部磁気圏で起こる様々なプラズマ現象の解明を目指して、現在、日本では ERGプロジェクトが進行しています。このERGプロジェクトは、科学衛星による「その場」でのプラズマ総合観測、磁場や光学観測といった地上ネットワーク観測にもとづくジオスペースのリモートセンシング観測、そしてモデリングやシミュレーション研究の3つの異なる研究手法を組み合わせたチームから構成されています。

そのERGプロジェクトで核となるのが、2016年度の打ち上げを目指して宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)で開発が行われている、ジオスペース探査衛星(ERG: Exploration of energization and Radiation in Geospace)です。このERG衛星には、放射線帯や内部磁気圏の変動を解明するための様々な装置が搭載されています。たとえば、電子の観測は12 eVから20 MeVの6桁以上にわたる広いエネルギー範囲の観測を行い、エネルギーによって異なる電子のふるまいを統一的に理解することを目指しています。また、プラズマ波動を計測するための観測器も、DCから10 MHzと広い周波数帯域にわたって電界の観測を行います。さらに、このERG衛星には、プラズマの波と電子との相互作用を定量的に観測するための世界で初めてなる装置も搭載されます。これらの装置は、京都大学を中心とするチームによって開発が行われています。

本セミナーでは、放射線帯、内部磁気圏研究の概要をご紹介させていただくとともに、ERGプロジェクト、特に打ち上げを控えたERG衛星計画についてお話しさせていただきます。

ERGプロジェクトの詳細につきましては、下記のHPをご覧ください。
宇宙科学連携拠点ERGサイエンスセンターHP
http://ergsc.stelab.nagoya-u.ac.jp/

S0199_Miyoshi jpeg
図:放射線帯を観測するERG衛星の想像図(左)。ERGプロジェクトのロゴマーク(右)。

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2015年10月19日作成

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