Research Institute for Sustainable Humanosphere

第195回定例オープンセミナー資料
IUGONETデータ解析システムを活用した大気環境の長期変動に関する研究
—地磁気日変動(Sq)振幅の長期変動特性—

開催日時 2015(平成27)年7月22日
題目 IUGONETデータ解析システムを活用した大気環境の長期変動に関する研究
—地磁気日変動(Sq)振幅の長期変動特性—
A study on long-term variation of the atmospheric environment with an aid of the IUGONET data analysis system
—Characteristics of long-term variation in the amplitude of geomagnetic solar quiet (Sq) daily variation—
発表者 新堀淳樹 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 1 (環境計測・地球再生)

要旨

地球大気は、温度構造によって下層から対流圏(~12 km)、成層圏(12–50 km)、中間圏(50–90 km)、及び熱圏(90 km~)に区分される。また、熱圏とほぼ同じ領域に重なるようにして電離圏(80–1000 km)が存在する。これらの大気層で観測されるオーロラ、大気光といった様々な諸現象は、太陽から地球大気に向かって絶えず入射してくる太陽放射や太陽風のエネルギーを駆動源としている。

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図 1: 高度500 kmにまでの地球大気中で観測される諸現象と各大気層の位置関係。横軸は緯度、縦軸は高度を示す[IUGONETパンフレットから抜粋]。

地球が受け取る太陽放射エネルギーは、極域で最小、赤道域で最大となるため、約20 km以下の赤道大気では活発な積雲対流現象が引き起こされる。この大気擾乱を起源とする大気重力波が上層大気へ運動量を輸送し、力学的摩擦効果によって中間圏・下部熱圏領域に至る大気大循環や温度構造を規定することがこれまでの研究から明らかにされている。一方、太陽風-磁気圏相互作用によって生み出された電磁エネルギーや荷電粒子の降下が極域の超高層大気に集中する。このように地球大気に入射する太陽エネルギーは、地球をとりまく空間(大気圏・電離圏・磁気圏)の中をその形態を変えながら伝搬し、多様な物理現象を引き起こす。また、地球大気は、異なる大気層間の結合が強いグローバルな複合系をなしており、そこで生じる変動現象の物理過程を解き明かすためにはこれらの大気層の間の物質輸送や運動量輸送などの相互作用の実体を調査する必要がある。したがって、太陽活動や地球温暖化などに伴う超高層大気の長期変動とその物理機構を理解するためには,全球規模の地上観測ネットワークから長期的に得られた様々な観測データを組み合わせた分野間にまたがる総合解析を行うことが必要不可欠である。

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 図 2: IUGONETプロジェクトの概念図。IUGONETでは、横断検索のための超高層大気観測データのメタデータデータベースを構築し、それをインターネット上に共有することで各観測データの相互参照を可能にしている[Hayashi et al., 2013]。

そのような背景の下、2009年度から開始された大学間連携プロジェクト「Inter-university Upper atmosphere Global Observation NETwork: IUGONET」では、図 2に示すように観測データからメタデータを抽出してインターネット上で広く共有するシステムを構築することで、各研究機関が長期にわたって蓄積してきた種々の地上観測データの相互参照をできるようにした。さらに、多種多様の観測データの描画や相関解析を容易に行えるようにするための解析ソフトウェアの開発を行ってきた。

本研究では、これらのIUGONETデータ解析システムを活用することによって地磁気日変動振幅に見られる超高層大気の長期変動特性について明らかにする。

ここで取り扱う地磁気日変動(Sq)現象は、高度80–150 km付近の昼間側電離圏を、北半球では反時計まわり、南半球では時計まわりに流れる電離圏電流によって引き起こされる。このSqの電流は、太陽極端紫外/紫外放射のエネルギー源として駆動される下部熱圏風と電離圏に存在する荷電粒子との相互作用による電離圏ダイナモ作用によって生成される。オームの法則によれば、このSq電流の大きさは、電離圏電気伝導度と電離圏ダイナモ作用による起電力(U×B)に依存して変化する。さらに、電離圏電気伝導度は、電離圏電子密度と背景磁場強度、起電力は、中性大気風と磁場強度の変動に呼応して変化する。そのため、長期の地磁気観測データからSq振幅の長期変動特性を調べることによって、超高層大気における長期変動の実態を探ることができる。

近年の研究結果[Elias et al., 2010]によれば、太陽活動を差し引いたSq 場の振幅は上昇傾向の長期トレンドを示すことが報告され、その原因として地球磁場強度の減少に伴う電離圏電気伝導度の増加に加えて、地球温暖化に伴う超高層大気の寒冷化[Akamenev et al., 2006]によってSq電流が流れている領域の電離圏電子密度の増加[Qian et al., 2008]による電離圏電気伝導度の上昇が考えられている。このことを実証するために、長期の太陽活動度データと69観測点から得られた地磁気データの解析を行った。

本セミナーでは、IUGONETプロダクトと最新のSq場の長期変動特性に関する研究成果を紹介する。

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2015年7月6日作成

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