Research Institute for Sustainable Humanosphere

第176回定例オープンセミナー資料

開催日時 2013/12/18(水)
題目 能登半島で雲の種を測る
Observation of Cloud condensation nuclei at Noto Peninsula, Japan
発表者 岩本洋子 (金沢大学環日本海域環境研究センター・博士研究員)
関連ミッション ミッション 1 (環境計測・地球再生)

要旨

はじめに

大気エアロゾルは、大気中で雲凝結核(Cloud Condensation Nuclei; CCN)として働くことで雲の放射特性や寿命を変化させ、地球の気候に影響を与える。将来の地球全体の放射バランスや水循環過程を評価するうえで、実大気観測により CCN 特性を把握し、数値モデルの精緻化につなげることが重要である。CCN の観測データが世界各地で着実に揃いつつある一方で、観測は短期的なものが多く、CCN 特性の季節変化を捉えたものは少ない。本研究では、能登半島の先端に位置する能登大気観測スーパーサイト(Noto Ground-based Research Observatory; NOTOGRO)において、CCN の通年観測を行い、東アジア域のエアロゾルの CCN 能を評価するうえで、代表性の高いデータを取得することを目指した。

方法

大気エアロゾル試料は PM10 インレット(地上 14.7 m)から採取した。拡散ドライヤに通して除湿し、電荷を中和したサブミクロンサイズのエアロゾルを微分型移動度分級器(Differential Mobility Analyzer; DMA)へ導入した。DMA で粒径選別したエアロゾルを凝結核計数器(CN カウンタ)と CCN カウンタにそれぞれ導入し、全粒子(CN)と CCN の個数粒径分布を得た。CCN カウンタのカラムの水蒸気過飽和度は 0.1 %、0.2 %、0.5 %、0.8 % の順に 30 分間隔で切り替えた。大気エアロゾルの CCN 能の評価は CCN 効率スペクトルの解析を通して行った。CCN 効率スペクトルは、粒径に対して、CN 個数濃度(NCN)に占める CCN 個数濃度(NCCN)の割合(NCCN/NCN)をプロットしたもので(Fig. 1)、エアロゾルの混合状態や粒子の化学成分を知る手がかりとなる。NCCN/NCN が 0.5 となる粒径を CCN 活性化粒径(dact)とし、SS と dact の関係から粒子の化学成分に依存する吸湿成長パラメータ κ (Petters and Kreidenweis, 2007)を見積もった。先行研究より、κ は硫酸アンモニウムで 0.61、有機物では 0~0.25 の値が報告されている。

結果と考察

NOTOGRO で観測された実大気エアロゾルの dact は硫酸アンモニウムと比べて大きく(Fig. 1)、κ の平均値は 0.12~0.33 であった。これまで行われた他の東アジア域での CCN の観測結果と比較して、NOTOGRO で観測された κ の値は小さく、1 年を通して CCN への有機エアロゾルの寄与が大きいことがわかった。また、小さい粒径範囲(<100 nm)で κ の値が小さい、すなわち、より有機物の寄与が大きいことがわかった。CCN 効率スペクトルの解析を通して、バルク化学分析では得にくい微小粒径範囲のエアロゾルの化学組成の情報を高い時間分解能で得る事ができた。

S0176_Iwamoto
Fig. 1. 水蒸気過飽和度0.13%における硫酸アンモニウム粒子と実大気エアロゾルのCCN効率スペクトル

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