Research Institute for Sustainable Humanosphere

第124回定例オープンセミナー資料

開催日時 2010/10/20(水)
題目 熱帯域上部対流圏循環の構造
Large-scale circulation in the tropical upper troposphere
発表者 西憲敬 (京都大学大学院理学研究科・助教)
関連ミッション ミッション 1 (環境計測・地球再生)

要旨

熱帯域ではコリオリ力が弱く、中高緯度でみられるような地衡風バランスが成り立たないため、気圧や温度は比較的一様な水平分布を示している。そのため、空間構造の解析には精密な観測が必要である。ここでは、2006 年に運用を開始した COSMIC 衛星の精密温度観測を用いてみいだされた上部対流圏の精密温度構造について紹介する。

熱帯対流圏で卓越する活発な対流活動は、成層圏・中間圏でみられる波動の重要な波源であることはよく知られている。近年その解析が進むにつれて、具体的にどのような種類・スケールの波が、熱帯のどの地域から成層圏に伝播しているかの知識が必要とされている。

しかし、対流圏と成層圏の境である圏界面(高度約 17–18 km)付近は温度や風の構造が複雑であることから、その領域での波動伝播の解析は難しい面があった。特に温度については圏界面で鉛直温度勾配が急激にかわるため、その測定は限られた高層観測ゾンデなどを除くと困難であった。しかし、近年発展してきた衛星による GPS 掩蔽法は、地球の接線方向から温度による大気の屈折を用いて計る方法で、全球的にすぐれた鉛直分解能で温度情報を提供できるようになった。わたしたちは 2006 年に運用開始した COSMIC 衛星によるこの方法を用いて、圏界面付近にみられる興味深い定在温度構造を見いだすことができた。

北半球夏にはアジアモンスーンが活発で、上部対流圏では亜熱帯インド洋領域ではチベット高気圧とそれに伴う循環の一部をなす東風ジェットが支配的である。その中に、1–2 ヶ月間、まわりに比べて明瞭に高温な領域が定在し、高度が上がるにつれてその位置が東にずれていることがわかった。この成因について、モンスーン活動と赤道波動の 2 つの仮説を提唱して、その妥当性を議論した。

また、そのような圏界面付近の温度や風分布の経度依存性が、具体的に波動伝播に影響を与えている様子を、赤道ケルビン波の解析例を用いて紹介したい。これらの大規模循環・波動の理解は、波源である対流圏と、その影響を受ける成層圏から熱圏までの赤道大気の鉛直方向の結合を理解する上で重要であると考えられる。

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