Research Institute for Sustainable Humanosphere

第98回定例オープンセミナー資料

開催日時 2009/09/09(水)
題目 イエシロアリの行動を利用した糸状菌感染阻止の仕組み
Defense mechanism against fungal infection of the termite, Coptotermes formosanus due to behavior
発表者 柳川 綾 (京都大学生存圏研究所・学術振興会特別研究員)
関連ミッション ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

現在の昆虫病理学では、社会性昆虫と単独性昆虫の生体防御機構に区別はないが、社会性昆虫の生体防御においては、「社会的行動」が生体防御に関与をしてい る可能性が高い。また、シロアリは社会性昆虫であるという興味深いテーマをもち、各カストは分業に基礎を置きながらコロニーの統合をはかっている。近年、 シロアリの防除を対象に糸状菌資材を用いた生物農薬が開発されたが、フィールドでの効果が安定的に得られていない状況である。病原微生物に対するコロニー の防御に集団がどのように関与しているかは不明の点が多いが、集団で生活することが単独性昆虫にはない有利な点を生んでいることが予想される。そこで、防 除資材の改良および社会性昆虫の防御メカニズムの解明することを視野に、病原微生物に対するイエシロアリ Coptotermes formosanus Shiraki の生体防御機構を調査した。

まず、社会性昆虫であるイエシロアリを集団飼育すると単独飼育に比べ病原糸状菌に対して抵抗力を著しく増強させることを見出した。また、集団飼育していて も化学的処理により行動を制御すると、 抵抗力の増強はなくなった。物理的および化学的な行動制御実験より、集団レベルでイエシロアリの抵抗力が増強することは社会性昆虫独特の相互グルーミング 行動が関与していることを示唆する。そこで、単独飼育と集団飼育におけるイエシロアリ表皮上の病原菌(分生子)付着量の経時的変化を調査したところ、単独 飼育では付着した分生子の脱落は少ないが、 集団飼育では大部分の分生子が脱落していた。脱落した分生子は消化管内より検出されることより表皮に付着した分生子はネストメイトのグルーミングによって 除去され、 セルフグルーミングによる除去効果は低いことが明らかになった。

次に、イエシロアリ職蟻がネストメイト表皮上に付着した異物をどのように認識し除去しているのかということを、触角の役割に着目して調査を進めた。触角を 切除した職蟻では分生子の除去能力が低下するとともに感受性が高まることから、相互グルーミングによる分生子除去機構に触角が関与していることが示唆され た。これは、イエシロアリ触角上の化学受容器の 3 種昆虫病原性糸状菌分生子の揮発成分に対しる電気生理学的な応答によっても支持された。

S0098_Yanagawa

 

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