Research Institute for Sustainable Humanosphere

第51回定例オープンセミナー資料

開催日時 2007/05/30(水)
題目 R 型二酸化マンガンによる水の酸化と二酸化炭素の還元
発表者 古屋仲秀樹 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

1. 発表の概要

R 型二酸化マンガン (RMO) を酸処理によって化学的に水素化した酸化マンガン (CPMO) が、付加的なエネルギーなしに水溶液中でその表面に塩化金イオンを金属金として還元析出する現象が報告された1).しかしながら、CPMO の組成や還元のために必要な電子が何処から供給されたのかが解っていなかった.本研究では、CPMO の組成が R 型二酸化マンガンの結晶にプロトンと電子をカップルで含んだ (H+,e)MnO2 という、これまで知られていなかった物質であると考えると、CPMO が示す種々の特性をうまく説明できることを豊富な実験結果を用いて示す.

2. 実験方法

X 線回折法、X 線吸収端分析法、非弾性中性子散乱法などを使って CPMO の組成と構造を調べた.また、透過型電子顕微鏡法とアルカリ滴定法によって CPMO 表面におけるパラジウムの析出反応を調べた.さらに、CPMO の化学的反応性を主にガスクロマトグラフ法を用いて調べた.

3. 結果および検討

各種分析結果を総合することで、CPMO が含むプロトンと電子は R 型二酸化マンガン (RMO) に特有な水の酸化反応によって供給されており、RMO の表面には水を酸化分解する触媒活性点が多数存在しているものと考えられた.ところで、植物の光合成に関する最新の報告では、葉緑体内に含まれる酸素発生 中心 (OEC) における水の酸化反応が酸化マンガンの触媒反応に基づくことが知られている.また、近年 OECの構造も明らかにされつつある2).本研究では RMO を酸処理している際に O2 ガスの発生が確認され、また、CPMO が CO2 ガスを分解して CH2O を合成すること、さらに CPMO から電気をとりだすことも可能であることを確認した.これらは光合成反応の出発点に位置する反応である 2H2O → O2 + 4H+ + 4e および、最終段階の反応である CO2 + 4H+ + 4e → CH2O + H2O が RMO を触媒として生じていることを示唆する.植物の葉緑体内における OEC の存在密度に比べて RMO 表面での OEC に相当する触媒活性点の存在密度は遥かに高く、簡易・安価に合成できる二酸化マンガン単独によって上記の反応が得られることは、工業的に多くのメリットを もたらすと予想できる.RMO は酸性の条件下で水を酸化して生じた電子とプロトンをそのメソポーラスな表面 (80–200 m2/g) に多数存在する O-O 間にチャージする。そのチャージされた RMO, (CRMO*) は、水中では電子を貴金属イオンにディスチャージし、同時に電荷中性を保つためにプロトンを水中に放出して RMO に戻る、また空気中では二酸化炭素をホルムアデヒトと水に還元して RMO に戻る。RMO と CRMO* の変化は可逆的であるため、チャージとディスチャージを繰り返して使用することが可能である。また、CRMO* のチャージ状態はそれが水で湿った間維持されるため、ライフタイムの短い従来の触媒材料に比べて実用的であり、今後その応用が期待できる.

引用文献

1) H. Koyanaka, et al, Gold recovery from parts-per-trillion-level aqueous solutions by a nanostructured adsorbent, Separation and Purification Technology, Vol. 43, pp. 9–15, (2005)

2) B. Loll, et al, Towards complete cofactor arrangement in the 3.0A resolution structure of photosystem II, Nature, Vol. 38/15 Dec., (2005)

古屋仲秀樹: 第51回定例オープンセミナー(2007年5月30日)

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