Research Institute for Sustainable Humanosphere

第47回定例オープンセミナー資料

開催日時 2007/01/17(水)
題目 火山噴煙の観測的研究
発表者 寺田暁彦 (京都大学理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター・研究機関研究員)

要旨

ひとたび噴火が始まれば,火口には危険で近づくことはできない.噴き出した火山灰や火山ガスは大気の広い範囲に撒き散らされるため,総噴出量や噴出率推移 といった,噴火現象を記述する基本的な情報さえ得られないことが多い.一方,噴煙の上昇速度や大きさの時間発展は,映像から計測できる.これらの量を,噴煙モデルや経験的関係を用いて解析して,噴出量や噴出温度,およびその推移を見積もることができる.

1. 噴煙現象とは

火山噴煙は,火山灰,火山ガス(ほとんどが水蒸気),水滴および上昇中に巻き込んだ周辺大気等の混合物であり,噴出時の温度は 1 000 ℃前後に達することもある.噴煙は,地下から大気へ,熱や物質を輸送する主要な手段とも言え,噴出率やその変化は噴火現象の本質を探る上で重要な情報である.

古典的なモデルによれば,噴煙の最高到達高度は,火口からの熱エネルギー放出率の 1/4 乗に比例する(Morton et al., 1956).ところが,噴煙の中には,十分な熱エネルギーを持つにも関わらず,途中で上昇を止めて崩れ落ち,地表を這うように流れる火砕流と呼ばれる現象に移行することもある.このように,噴煙運動は多様で複雑な現象である.

2. 噴煙のダイナミクス

噴煙運動の多様性は,噴煙の主要な駆動力が浮力であることに関係する.つまり,浮力の支配要因として,火口で与えられた熱エネルギーばかりでなく,周辺大気との混合や水蒸気の相変化が重要である.火山噴煙運動の解析とは,このような浮力変化の各要因を解析することを意味する.

本講演では周辺大気との混合,すなわち周辺大気が噴煙内へ取り込まれる Entrainment を取り上げる.Entrainment は噴煙に発達した乱流渦が担っており,取り込み効率を決定する要因は不明な点が多い.ここでは,流れの自己相似性に基づき,三宅島火山や浅間火山で得られた映像の解析から,空気の取り込み率を見積もった例を紹介する.また,極端な例として,有珠火山で撮影された,Entrainment が起きない噴煙の例も紹介する.

3. 噴煙解析手法

実験のように制御できず,危険で,いつ起きるかわからい火山噴火を観測する手法には,安全・簡便なこと,繰返し測定が容易なことが必要である.本講演では,これまでの講演者の取組みを中心に,噴煙規模に応じた 3 つの解析手法を紹介する.(1) 水蒸気の効果を考慮した噴煙解析モデルと,三宅島火山で得られた噴煙画像の解析.(2) 半経験的な関係を用いた,風にたなびく噴煙の画像解析.(3) 温かい地面からの放熱率を,氷を用いて直接測定する試み.

4. 噴煙解析の応用例

噴煙解析結果を用いた火山研究の一例として,本講演では三宅島火山で 2000 年に始まった大量の火山ガス放出に関する研究と,阿蘇火山・中岳第一火口に生成されている,火口湖の水温や水量変動の研究を紹介する.

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