Research Institute for Sustainable Humanosphere

第46回定例オープンセミナー資料

開催日時 2006/12/27(水)
題目 環境保全型技術を用いた木質物質の有用資源化
発表者 中村嘉利 (金沢大学自然科学研究科・助教授)

要旨

近年、石油や石炭等の化石資源の枯渇に伴い、その代替資源として再生産可能な循環型資源である木質物質が注目されている。また、木質物質中の構成成分のすべてを有用物質あるいは製品に変換する資源化技術は廃ガス、廃水、固形廃棄物を発生しないので、人体や環境に優しい(悪影響を与えない)環境保全型技術として期待される。本研究では、水蒸気爆砕、抽出分離操作と種々の変換操作から成る環境保全型技術を用いて木質物質を無駄なく完全に高付加価値の有用物質に変換するための資源化法を開発した。さらに、本法を応用した (1) 廃棄物の発生を抑制した新規パルプ製造法と (2) ファイトレメディエーション(植物利用による環境修復技術)に用いられた植物体の有用資源化法について検討した。水蒸気爆砕は木質物質の脱リグニンのために非常に効果的であり、爆砕生成物は水やメタノール等の比較的環境負荷の小さい溶媒を用いた抽出分離操作によって比較的容易に水可溶性物質、メタノール可溶性リグニン(低分子量リグニン)、ホロセルロースと Klason リグニン(高分子量リグニン)に分離された。水可溶性物質は単糖やオリゴ糖を含むので、生理機能性食品や医薬品の素材としての利用が期待される。メタノール可溶性リグニンからは環境ホルモン活性を持たないエポキシ樹脂が合成され、市販のビスフェノール A ジグリシジルエーテル(従来からエポキシ樹脂の原料として用いられているが、環境ホルモン活性が懸念されている物質)の代替原料として使用できることがわかった。ホロセルロースはセルラーゼを用いた酵素糖化や種々の微生物によってメタン、抗菌性紫色素や乳酸等に変換され、Klason リグニンは炭化により活性炭に変換された。次に、本法をパルプ製造と重金属汚染土壌のファイトレメディエーション後の植物体からの有価金属の回収に応用した結果、パルプ製造では NaOH 前処理を併用することにより環境負荷の大きい亜硫酸塩等を全く使用しない硫黄フリーの新規パルプ化法、植物体からの有価金属の回収では有価金属を含有する 抽出成分のみを分離して金属回収を行う新規分離・回収法を開発することができた。従来までのパルプ製造では使用される亜硫酸塩等とともに木材物質中のヘミセルロースやリグニンが亜硫酸またはクラフトパルプ廃水として排出されるが、本法では廃水が無発生であるばかりでなくそれらの成分(ヘミセルロースやリグニン)も有用物質に変換できた。また、重金属汚染土壌のファイトレメディエーション後の植物体から有価金属の回収を行う際には植物体の燃焼による CO2 の発生(地球温暖化の原因)が懸念されるが、本法では有価金属を含有する抽出成分のみを燃焼して他の成分は有用資源化されるので、環境負荷を低減できると思われる。

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