Research Institute for Sustainable Humanosphere

第43回定例オープンセミナー資料

開催日時 2006/11/29(水)
題目 植物ステロイドホルモンの生合成経路の解明とその応用
発表者 大西利幸 (京都大学化学研究所生体触媒化学研究領域・COE 非常勤研究員)

要旨

ブラシノステロイド (BR) は植物の生長、分化、形態形成、光応答において重要な役割を担う植物ホルモンである。BR は藻類、裸子植物、被子植物などに存在し、現在までに 50 種類以上の BR が構造決定されている。BR の化学構造は C27-、C28-、C29– ステロイド骨格を有し、A 環、B 環と側鎖に異なる官能基を持つ。最も生理活性の強いブラシノライド (BL) は C28– ステロイドで、他の生合成類縁化合物とともに広く植物界に存在する。BR の研究は、植物より BR を単離同定する分析化学的手法、BR の化学合成を行う有機化学的手法、そして BR 生合成欠損変異株の探索を行う遺伝学的手法により推し進められてきた。その結果、BR 生合成欠損変異株の原因遺伝子として多数のシトクロム P450 遺伝子が単離同定され (CYP85A190A190B190C190D1)、 また分析化学的手法によりそれら P450 が BR 生合成経路の多くの酸化反応 (C-2 位、C-3 位、C-6 位、C-22 位、C-23 位の酸化および水酸化反応) に関与していることが推定されている。しかし、CYP85A1 が触媒する C-6 位酸化反応以外、未だ BR 生合成に関与する P450 の酵素活性は証明されていない。一方、BR 代謝経路についての研究は、分析化学的手法により活性型 BR であるカスタステロン (CS) や BL が水酸化、エステル化または異性化された BR 類縁体が単離同定されているのみで、ほとんど未解明のままである。

そこで本研究は、従来の BR 研究とは異なる生化学的手法を用いることにより BR 生合成および代謝系に関わる P450 酵素の機能を明らかにすることを目的とした。そこでシロイヌナズナ CYP90B, 90C, 90D, 724B の 4 種の P450 について、クローニングおよび昆虫細胞や大腸菌での発現系の確立を行い、酵素機能の同定を試みた。その結果、(1) CYP90B と CYP724B が 22 位水酸化、CYP90C および CYP90D が 23 位水酸化反応を触媒すること、(2) 各酵素の基質特異性を解析することにより、推定されていた生合成経路とは異なる新規経路の存在を明らかにした。さらに植物体内の BR 内生量分析の結果、新規経路がBR 生合成主経路であることを証明した。また、半矮性を示すイネ BR 生合成突然変異体 osdwarf4-1 が、農業的価値を検証することを目的として、原因遺伝子を明らかにするとともに、酵素学的解析、分析化学的解析、また圃場実験におけるイネ収量解析を行った。

セミナーでは植物ホルモンであるブラシノステロイドとその生合成に関わるシトクロム P450 酵素を中心に、ブラシノステロイドの農業への有用性について言及したい。

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