Research Institute for Sustainable Humanosphere

第41回定例オープンセミナー資料

開催日時 2006/11/15(水)
題目 衛星重力ミッションとその可能性
発表者 福田洋一 (京都大学理学研究科地球惑星科学専攻・助教授)

要旨

衛星で地球の重力を測るというアイデアそのものは古くからあるが,それが現実のものとなったのは21世紀に入り,2000年7月に打ち上げられたCHAMP (CHAllenging Minisatellite Payload) が歴史上初である.その後,2002年3月に打上げられたGRACE (Gravity Recovery and Climate Experiment) では,全球的な重力の時間的変化を,約1000kmの空間分解,約30日程度の時間分解能で観測することができ,広域な重力変化の研究に大きく寄与している.

GRACEによる重力場の測定には,Low Low Satellite to Satellite Tracking (L-L SST)と呼ばれる方法が用いられている.L-L SST では,低高度(400–500km)の同一軌道に2つの衛星を数100kmの間隔で打ち上げ,マイクロ波レーダーによる距離測定により,互いの衛星間距離の時間変化 (range rate),すなわち速度の測定を行う.この時,エネルギー保存則により,重力ポテンシャル V による位置エネルギーと運動エネルギーとの和は一定であるので,速度変化を測定することで,結果として重力場の変化を測定することができる.

GRACEデータの応用としては地下水や陸水の変動,氷床変動,海洋変動などの検出が重要である.これらの応用の一つとして,インドシナ半島のメコン川,イラワジ川,サルウィン川およびチャオプラヤ川の4つの主要河川流域での質量変動をGRACEデータから見積もり,陸水貯留量モデルと比較をおこなった.その結果,両者の季節変動量の見積もりでは,メコン川,イラワジ川程度の流域より広い空間スケールで良い一致をみた.

南極氷床の氷が増えているのか減っているのかは環境監視の点からも重要な問題である.GRACEで観測されるのはさまざまな原因による質量変化の積分値であり,南極での質量変化の原因を考えると,単に,現在の氷の増減ばかりでなく,ポストグレーシャルリバウンドと呼ばれる過去の氷床域の後退による質量変化の影響が重要である.GRACEデータを用いた解析では,南極大陸内に質量の増加,減少を示す幾つかの領域が見られることが判明したが,それぞれの領域について,その原因の解釈がすべて可能というわけではない.しかし,さまざまな原因を考慮して,南極域全体では,現在の氷が減っていることは間違いなさそうである.

GRACEの後継,GRACE-FO (Follow On) として,衛星間の距離測定にレーザー干渉測距を用いた SSI (Satellite to Satellite Interferometry) が検討されている.SSI では,GRACEより2~3桁感度が向上するといわれており,さらに多くの分野での応用が期待されている.この他,将来衛星重力ミッションの可能性の幾つかについても言及する.

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