Research Institute for Sustainable Humanosphere

第36回定例オープンセミナー資料

開催日時 2006/09/20(水)
題目 ボディーガードを雇う植物 —生物間相互作用ネットワークの作用中心—
発表者 高林純示 (京都大学生態学研究センター・教授)

要旨

生態系の中で生物は、お互い何らかの関係を持ちながら生活している。その関係性には「食う-食われる」という栄養の流れを伴う直接的な関係だけでなく、一見結びつきそうにない 2 種の生物個体間での「情報をやりとりする間接的な関係」もあることが明らかになってきた。被食-捕食による直接的な相互作用と情報を介した間接的相互作用の総体を「生物間相互作用ネットワーク」と呼ぶ。本セミナで注目する生物間相互作用ネットワークは「植物-植食性昆虫-捕食性天敵」という 3 つの栄養段階にまたがるものである。この 3 栄養段階にわたる相互作用系(以下三者系と省略)では、1980 年代より「植物が昆虫などの植食者の食害をうけた場合、その植食者の捕食性天敵を呼び寄せる匂い成分を誘導的に生産・放出する」という現象(下図)が報告されてきている。これは植物のボディーガードを雇う戦略といえる。この関係を媒介している植物由来の揮発性成分は、植食者の食害で特異的に誘導され、植食者誘導性植物揮発性物質 (Herbivore-induced plant volatiles: 以下 HIPV と省略)と呼ばれている。

HIPVs は (1) 植物-天敵間相互作用のみならず、(2) 植物-植物間相互作用、(3) 植物-害虫間相互作用をも媒介し、生物間相互作用ネットワークは我々の想像以上に複雑であると予測される。HIPV が媒介する生物間相互作用ネットワーク研究に関する最近の知見を述べる。

高林純示: 第36回定例オープンセミナー(2006年9月20日)

 

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