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第30回(2006年度第4回)定例オープンセミナー資料

更新日: 2015/09/10

開催日時 2006/06/14(水曜日)
題目 金属トランスポータ発現植物による環境浄化技術の開発
発表者 増野亜実 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 1 (環境計測・地球再生)
共同研究者 矢崎一史 (京都大学生存圏研究所森林圏遺伝子統御分野・教授)

要旨

カドミウムは生体にとって微量でも害を及ぼす有害重金属であり、代表的な疾患として、我が国最初の公害病であるイタイイタイ病が知られている。社会工業化において、基盤産業資源としてカドミウムは重要な役割を果たしたが、その一方で工場跡地を中心に広範囲な土壌汚染が確認されている。コメ、ダイズなどの農作物はその体内にカドミウムを蓄積する性質を持っていることから、コメを主食とする我が国では、米作地帯のカドミウム汚染土壌の浄化は、緊急に対処すべき課題と認識されている。申請者はその有効な解決法として、植物のカドミウム吸収性を利用した土壌浄化法に着目した。汚染土壌に植えた植物に有害な物質を吸収させ,回収するという浄化法は、「ファイトレメディエーション」と呼ばれており、浄化にかかるコストが安価で使用法も簡便であるという利点がある。しかしながら,それでも実用化には解決すべき多くの問題があるのも事実である。最大の問題は,天然には有効な植物が存在しないことである。重金属に対して特に高い耐性をもち、これらを大量に蓄積する植物種は存在する。しかし、このような野生種は、小型で生育が遅い傾向があり、そのまま重金属浄化に用いるには効率が悪く、現実的には不可能である。そこで申請者は、重金属高蓄積種がもつ金属集積・耐性能の責任遺伝子を遺伝子操作によりバイオマス生産量の高い植物に導入することで、カドミウム吸収能力を飛躍的に向上させた高機能性環境浄化植物を創出したいと考えている。

これまでのファイトレメディエーションにおいては、メタロチオネインなど重金属の結合因子をターゲットにした形質転換植物が主に作出されており、中には耐性を獲得した例もあるが、重金属の蓄積部位を制御することができなかった。すなわち、吸収したカドミウムが主に根にとどまってしまい、カドミウムを除去するには土を掘り返して、根を全て回収しなければならない。この作業は膨大なコストと労力を必要とするため、実用には不向きである。それに対して植物の葉にカドミウムを輸送させることができれば、回収する際地上部のみを刈り取るだけで良く、一気に実用化への道が開ける。そこで本研究では、重金属の植物体内への取り込みやその代謝部位・蓄積部位への運搬・集積のプロセスに直接関与している輸送体の膜局在をエンジニアリングすることにより、吸収・耐性能の向上にだけでなく、蓄積部位の制御を目指す。

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