Research Institute for Sustainable Humanosphere

第24回(2005年度第16回)定例オープンセミナー資料

開催日時 2006/02/01(水)
題目 ナノ材料による超選択的分離技術: 海水から金は採れるのか
発表者 古屋仲秀樹 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

1. 生存圏学における分離科学の重要性

有史以来人類は惑星に豊富な大気・水・土壌による拡散効果と自然浄化を利用してきた。しかしながら、人口の爆発的増加と産業活動の規模の増大は、環境に対して種々の深刻な影響を与えている。もはや、自然の拡散効果やバクテリアの分解速度に基づく自然浄化能力に頼らず、人為的に環境を浄化したり、浄化の反応速度を上げることの重要性は人類の共通認識になりつつある。そのような現状において我々は、環境浄化、天然資源の枯渇、都市鉱山の開発など、生存圏を維持する上で極めて重要な諸課題に対処しなくてはいけない。その際、分離科学は大気・水・土壌・物質の循環利用を確立するために、鍵を握るコア技術のひとつであると考えられる。

2. 分離科学におけるナノ材料の有効性

多くの場合、物質の反応はその表面を通じて生じている。このため、物質表面を構成するナノ・メートルサイズ (10−9 m) の物質を主成分とする材料は、マクロサイズの材料にくらべて高い反応性を示す。この高い反応性を利用することで、速い反応速度や少量の材料で高い反応量を得ることが可能となる。ここで問題は、何を何から分離することを目的として、どのような反応性を利用するかを見いだすことである。

3. 選択的な反応性を利用することの効果

ある種の成分に対して選択的な反応性を発見して利用することは、選択的でない反応を利用する場合に比べて目的成分の分離効率を飛躍的に向上させることができるために重要である。特に、処理対象が複雑な成分を多種含んでいる場合には、単に比表面積が高い材料を利用する場合に比べて有効性が高い。例えば、活性炭は比表面積が高いので水道水中の目的成分は除去できるが、成分が複雑な生活排水や産業排水中では著しく目的成分を吸着・除去する能力が低下する。また、アルミナに代表される従来の産業用吸着材は酸化還元電位が低いため、多くの金属を非選択的にその表面に析出させてしまい、やはり目的成分の吸着除去効率は低下する。

本研究と講演の概要

水素化した酸化マンガンが、プロトン求核性錯体、例えば亜ヒ酸、砒酸、塩化金酸などの錯体に対して示す選択的な吸着性は、多成分系からこれらの錯体だけを吸着回収して濃縮することを可能にする。今回のセミナーでは、現在、当研究センターが研究対象としている水素化した酸化マンガンのナノ材料からなる多孔体が、水中で塩化金酸に対して選択的な吸着性を示す理由を、結晶構造解析、吸着・脱着反応式の解析などを通じて解説する。また、同材料を利用することで、海水から濃度が ppt (1 兆分の 1)オーダーの金を実際に分離回収した実験結果について話題提供する。

 

古屋仲秀樹: 第24回(2005年度第16回)定例オープンセミナー(2006年2月1日) 図 1
図 1 金の吸着速度

 

古屋仲秀樹: 第24回(2005年度第16回)定例オープンセミナー(2006年2月1日) 図 2
図 2 酸化マンガンに吸着した金

 

古屋仲秀樹: 第24回(2005年度第16回)定例オープンセミナー(2006年2月1日) 図 3
図 3 金吸着の吸着等温線

 

古屋仲秀樹: 第24回(2005年度第16回)定例オープンセミナー(2006年2月1日) 図 4
図 4 脱着した金とその化学的状態

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