Research Institute for Sustainable Humanosphere

第23回(2005年度第15回)定例オープンセミナー資料

開催日時 2006/01/25(水)
題目 木材腐朽菌・外生菌根菌の有機酸代謝機構の特徴と森林育成における両菌の重要性
発表者 服部武文 (京都大学生存圏研究所・助手)
関連ミッション ミッション 1 (環境計測・地球再生)
共同研究者 島田幹夫 (福井工業大学・教授)

太田明 (滋賀森林センター)

岩瀬剛二 (環境総合テクノス)

Erman Munir (北スマトラ大学)

梅澤俊明 (京都大学生存圏研究所・教授)

要旨

森林に生息し子実体(キノコ)を形成する主な微生物には、外生菌根菌と木材腐朽菌がある。外生菌根菌は担子菌と子嚢菌に分類され、若干は接合菌に属する。マツタケ、ホンシメジ、テングタケ等身近である。主に樹木を宿主とし相利共生を営む。樹木側根の表皮細胞や皮層細胞を取り囲むように菌糸を張り巡らせハルティッヒネットを形成し、さらに、側根を菌糸で覆いマントルを形成する。この結果、宿主又外生菌根菌の種類に特有の形状をもつ外生菌根が形成される。宿主の光合成産物であるグルコース、フルクトースを炭素源とし、根の外側の土壌に菌糸を広げる。その広がった菌糸を通して土壌中のミネラル、水分を宿主に供給し、樹木の生育に必須の働きをする。

一方、木材腐朽菌は担子菌、子嚢菌、不完全菌に分類される腐生菌であり、シイタケ、エノキタケ等身近である。木材細胞壁の主要化学成分であるセルロース、ヘミセルロースを炭素源にする褐色腐朽菌と、これら高分子多糖と共に芳香族高分子化合物であるリグニンを CO2 にまで分解する白色腐朽菌に主に分けられる。従って、木材腐朽菌は森林の腐植形成に重要であり、地球の炭素循環に大きな役割を果たしている。

演者らは、木材腐朽菌に特有のクエン酸 (TCA) 回路とグリオキシル酸 (GLOX) 回路の協調機作を解明してきた。さらに著者らは、外生菌根菌の有機酸、脂質代謝における、これら両回路の役割を研究している。本日は、外生菌根菌、木材腐朽菌の炭素代謝における両回路の特徴を紹介する。さらに、両菌が生産する有機酸が森林育成において果たしている重要な役割に関し若干紹介する。

木材腐朽菌オオウズラタケ、外生菌根菌ウラムラサキにおける TCA 回路 GLOX 回路の特徴は以下の点である。

  • 多くの他の微生物においてカタボライト抑制を受ける GLOX 回路が、オオウズラタケでは構成的に機能し不完全なTCA回路をおぎなっている。
  • オオウズラタケは栄養菌糸生育に必要なエネルギーを、シュウ酸生合成により得る。
  • GLOX 回路の鍵酵素であるイソクエン酸リアーゼ (ICL) とリンゴ酸合成酵素 (MS) は、グルコース炭素源で培養した他の木材腐朽菌からも高い活性が得られている。
  • 外生菌根菌ウラムラサキの GLOX 回路の鍵酵素 ICL はカタボライト抑制を受ける。
  • 外生菌根形成の一時期に GLOX 回路を機能させ脂肪酸、脂質を炭素源として利用している可能性もあるが、一過性と推測される。しかし、基物外菌糸における GLOX 回路の役割に関しては未解明である。

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