Research Institute for Sustainable Humanosphere

第16回(2005年度第8回)定例オープンセミナー資料

開催日時 2005/11/09(水)
題目 選択的白色腐朽とマイクロ波照射による木質バイオマス-エタノール変換の為の複合前処理
発表者 田邊俊朗 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)
共同研究者 渡辺隆司 (京都大学生存圏研究所)

篠原真毅 (京都大学生存圏研究所)

三谷友彦 (京都大学生存圏研究所)

要旨

緒言

我が国における林産業で主要な樹種は針葉樹のスギである。近年の安価な外国産木材の輸入や林業従事者の減少など様々な要因により大量の国内産スギが有効に利用されないままである。本講演では、国内スギ林を巨大なエネルギー資源の蓄積と捉え、そこからエネルギー物質を取り出す一手法を紹介する。すなわち、難分解性である針葉樹リグニンを高選択的に分解する白色腐朽菌を独自に分離し、マイクロ波照射複合前処理へ利用することでエネルギー物質生産の効率を飛躍的に高める技術開発の提案である。本複合前処理は、マイクロ波照射の処理温度を低下させ、エネルギーインプットの低減と糖の熱分解による発酵阻害物質生成の低減を同時に達成すると期待される。

方法と結果

選択的リグニン分解白色腐朽菌の探索

はじめに国内から迅速に脱リグニンできる高選択的リグニン分解白色腐朽菌を探索する。関西地区のスギ林からスギ木粉によく生育する担子菌を分離した。これらによって腐朽させたスギ腐朽材の酵素糖化率で前処理効果を評価した。スギ中のセルロースをよく残しリグニンを選択的に分解する白色腐朽菌を新規に分離した。新規分離株による腐朽材は Ceriporiposis subvermispora による腐朽材に匹敵する酵素糖化率を与えた。現在、種の同定、性質の検討を行っている。

マイクロ波照射装置の新規開発

木質へのマイクロ波の透過性、減衰吸収を考慮し、木質加熱に特化したマイクロ波照射装置を設計する。

複合的な前処理技術の開発

C. subvermispora と新規分離株で 8 週間腐朽処理を行った腐朽材に 2.45 GHz のマイクロ波を照射し加熱した。未腐朽のスギ材では、マイクロ波を照射しても、ほとんど酵素糖化が進行しないのに対して、選択的リグニン分解白色腐朽とマイクロ波照射を組み合わせた複合処理は、200 ℃以上の昇温でスギ材に対して高い前処理効果を与えることが明らかとなった。選択的白色腐朽菌とマイクロ波照射装置とを組み合わせることにより、マイクロ波照射のみでは困難であった針葉樹スギ材の酵素糖化前処理が可能となった。複合前処理のより詳細な条件を検討中である。

課題と解決試案

照射時の溶媒種類や容量、昇温温度など詳細に検討し、照射条件の最適化を図らなければならない。また装置そのものを改良し、バッチ式から連続運転が可能なものを構築すべきである。現状の温度で高効率の酵素糖化率を達成した後にいかにエネルギーインプットを減らし省エネルギー化するかを検討する。最終的には微生物代謝によるエタノール生産の低コスト化と高効率化を図る。

一つ前のページへもどる