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第10回(2005年度第2回)定例オープンセミナー資料

更新日: 2015/09/10

開催日時 2005/06/29(水曜日)
題目 Statistical analysis on the geomagnetic extreme event
発表者 坪内健 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 3 (宇宙環境・利用)
共同研究者 大村善治 (京都大学生存圏研究所)

要旨

生存圏の状態を診断し、将来の予測を行うには、時系列データの性質を詳細に理解する必要がある。その性質は大きく分けると持続的・周期的なものと突発的なものに分類できる。前者は汎地球的な温暖化や季節変動といったマクロなトレンドを示すものであり、現象の因果関係の解明が研究の中心となる。一方後者の場合、こうしたイベント発生はランダム的な性質を帯び、出現時期・規模・頻度の精確な特定が困難なため、確率分布の特性を理解することが予測につながる。突発的イベントでは特に、平常時の変動から大きく逸脱した極端現象(洪水、大地震、金融恐慌など)が重要である。これは数年、数十年に一度程度しか発生しない非常に稀なイベントだが、一度生じてしまうとシステム全体に致命的な損害を与えるため、発生頻度を精密に見積もることが実用上不可欠になる。ランダム過程は数学的取扱いの容易さから正規分布で仮定されることが多いが、実際の現象では特に極端領域の発生頻度が過小評価されてしまう傾向が強い。本研究では極端現象のデータの分析に特化した手法である極値統計理論を用いることで、生存圏におけるリスク現象の発生可能性の定量化を試みる。

現在は具体的な事象として地磁気嵐を取扱っている。これは太陽風プラズマが地球磁気圏との相互作用を通じて磁気圏内部に強大な電流系を形成することによって地磁気を大きく乱す現象で、その影響は人工衛星の通信系や姿勢制御の障害や地上送電線系の損傷を引き起すことが知られている。地磁気嵐の規模を示す指数として用いられている Dst 指数は、1957 年から今日まで 1 時間毎の膨大なデータベースとして記録されており、強度や時間変動幅の統計性を調べる上で非常に質が高い。まずデータが極値統計に従うことを検証し、最尤法によるデータフィッティングから分布関数を導出した。得られた分布関数から T-year level (T 年に一度発生するレベル)の推定を行い、将来宇宙環境で活動する際のリスクの換算手法として提唱する。また、予測モデルの実用化に向けたアイデアも考察する予定である。

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