Research Institute for Sustainable Humanosphere

第9回(2005年度第1回)定例オープンセミナー資料

開催日時 2005/06/29(水)
題目 微生物とマイクロ波照射を複合的に用いるスギからエタノールへの変換技術
発表者 田邊俊朗 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)
共同研究者 渡辺隆司 (京都大学生存圏研究所)

篠原真毅 (京都大学生存圏研究所)

三谷友彦 (京都大学生存圏研究所)

要旨

緒言

本研究では、スギリグニンを高選択的に分解する白色腐朽菌を独自に分離し、脱リグニン工程へ利用することでエタノールなどエネルギー物質生産の効率を飛躍的に高める技術の開発を提案する。白色腐朽菌処理を前段に組み込んだ複合前処理は、マイクロ波照射の処理温度を低下させ、エネルギーインプットの低減と糖の熱分解による発酵阻害物質生成の低減を同時に達成すると期待される。はじめに国内から迅速に脱リグニンできる高選択的リグニン分解白色腐朽菌を探索する。探索中同時に木質加熱に特化した 5.8 GHz のマイクロ波照射装置を新規に開発する。新規株と新規設計装置を用いて脱リグニン工程の前段に白色腐朽、後段にマイクロ波照射加熱を行う、複合的な省エネルギータイプ前処理技術を開発する。最終的には微生物代謝によるエタノール生産の低コスト化と高効率化を図る。

方法と結果

選択的リグニン分解白色腐朽菌の探索

関西地区のスギ林からスギに生育する担子菌を分離し、腐朽材の酵素糖化率で前処理効果を評価した。スギ中のセルロースをよく残しリグニンを選択的に分解する白色腐朽菌を新規に分離した。新規分離株による腐朽材は Ceriporiposis subvermispora による腐朽材に匹敵する酵素糖化率を与えた。現在、種の同定、性質の検討を行っている。

マイクロ波照射装置の新規開発

木質へのマイクロ波の透過性、減衰吸収を考慮し、木質加熱に特化した 5.8 GHz のマイクロ波照射装置を設計した。組み立てた照射装置を用い、スギ材に 10 分間照射処理を行ったところ、スギ材の酵素糖化率が未処理原料木粉に対して約 2.5 倍上昇することが示された。現在、照射方法の改善および照射条件などを検討している。

複合的な前処理技術の開発

C. subvermispora と新規分離株で 8 週間腐朽処理を行った腐朽材にマイクロ波照射し試料温度加熱した。未腐朽のスギ材では、マイクロ波を照射しても、ほとんど酵素糖化が進行しないのに対して、選択的白色腐朽とマイクロ波照射を組み合わせた複合処理は、180 ℃まで昇温するとスギ材に対して高い前処理効果を与えることが明らかとなった。選択的白色腐朽菌とマイクロ波照射装置とを組み合わせることにより、マイクロ波照射のみでは困難であった針葉樹スギ材の酵素糖化前処理が可能となった。複合前処理のより詳細な条件を検討中である。

課題と解決試案

現照射装置の効果を 2.45 GHz マイクロ波照射の場合と比較検討せねばならない。また、現照射装置を用いる複合前処理の工程では、照射中の試料温度が酵素糖化率に影響する重要な因子である。装置上の問題で 130 ℃までの昇温に留めたところ低い酵素糖化率に留まったため、容器を変更して 180 ℃までの加熱を行えた。続いて 200 ℃までの昇温を行うため、大型の照射用耐圧容器に変更し、それに伴う空洞共振器の改変を行う。このような高温での処理で高い酵素糖化率を得てから、いかに省エネルギーを実現するかを図る。そのためには、エタノールなど有機溶媒や炭素および金属酸化物、粘土などマイクロ波増感加熱触媒を腐朽材に添加し、もともと高速に加熱できるマイクロ波照射の特性をさらに生かして急速昇温させ、電力消費を抑制することを検討する。

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