Research Institute for Sustainable Humanosphere

第3回(2004年度第2回)定例オープンセミナー資料

開催日時 2004/11/22(月)
題目 生存圏マクロ診断手法の開発に向けて
発表者 坪内健 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション 3 (宇宙環境・利用)

要旨

「生存圏とは?生存圏科学とは何か?何をすべきか?」

21 世紀の海原を切り開いていく使命を帯びた新研究所において、我々研究者の思考指針を改めて問いただすと、従来の研究分野の垣根を取り払い、より広い視野で俯瞰的に対象を捉える姿勢が当然の帰結となる。しかし分野横断的な研究も、その表層のみを単純に足し合わせる程度のものでは大きな進歩は期待できない。各分野の思考背景・概念を充分に咀嚼し、そのアイデアを縦横無尽に駆使して新たな問題に挑む、新たな手法を開発する、新たな問題を創出することが重要である。

現在における宇宙空間圏・大気圏・森林圏・水圏といった独立相内部での現象と人間生活圏の生産・消費活動との密接な相関は、自然界の物質・エネルギー循環に非平衡状態をもたらし、その結果は互いの共存を不安定なものにしている。人類が今後も幾世代に渡って現在の生存基盤を維持していくことを可能にするために、今取り組むべき課題の一つとして現在の生存圏が内包している状態、特に危機的状況=リスクの精密な評価手法の確立を挙げる。これが生存圏の状態「診断」にあたり、ここで得られたパラメータを基に技術開発や産業活動の抑制、資源の最適分配などの戦略という「治療」への応用が期待できる。

リスク評価・マネジメントは金融工学や災害工学などで既に一般的に利用されている手法であり、その根底にあるアイデアを活用して「生存圏科学」への適用を図る。生存圏を構成する各独立相内部の詳細な物理・化学・生物過程をまずはブラックボックスとして扱い、アンサンブル平均としての量(汎地球的な地磁気変動、世界の平均気温、排出される CO2 量、など)を生存圏状態パラメータとして抽出する。こうしたマクロパラメータは長期間(年単位)の変動で見ると、太陽活動周期のようなトレンド性とノイズ的な確率変動の混合状態にある。こうしたデータに対する通常の統計処理に加えて極値統計などの技術も応用し、また別の要素との相関を取るなどして、現時点で置かれている状況の定量評価を行う。

マクロパラメータによる現時点における「生存圏状態」の評価値は、更に将来予測モデルへの初期値として用いられる。将来発生するリスク変動を確率過程として扱うにあたり、特に金融オプション取引理論として知られている Black-Scholes モデルが有用な手法と考えている。本セミナーでは、以上の主旨を本研究の方針として簡潔に述べるとともに、リスクを評価する際の BS モデルの基礎的な解説、及び応用例としての宇宙空間圏での磁気嵐現象について触れていく。

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