関連ミッション
- ミッション1 「環境診断・循環機能制御」
- ミッション5-1 「人の健康・環境調和(生理活性物質、電磁波、大気質)」
研究概要
土壌に生息する微生物群集はきわめて多様であり、その組成や機能の変化は自然生態系における栄養塩循環などに影響を与えることが知られています。また土壌微生物は食物や病原菌を通じて私たち人間の健康に影響を与えるため、健康かつ機能的な土壌微生物群を定義・維持することは人間の安定的な生活と密接に関連しています。しかし、土壌微生物はあらゆる動植物と複雑に相互作用するため、その機能の変化を予測することは容易でなく、大きな研究課題となっています。
例えば、植物が生産する二次代謝産物は構造的・機能的に多様であり、それらが根から滲出することで土壌微生物群集が変化することが知られています。二次代謝産物は生態系における植物の適応や防御戦略に不可欠であり、中には人間の健康に有益な薬理活性を持つものも含まれています。薬理活性を持つ二次代謝産物が土壌微生物群集に与える影響はほとんど知られていませんが、これを解明することは、その生態学的役割の理解だけでなく、薬理活性物質生産の背景にある進化的な要因に関する知見につながると考えられます。
私の研究では、薬用植物として知られるマンリョウ(Ardisia crenata)が生産する二次代謝産物に着目しています。マンリョウが生産するトリテルペノイドサポニンは、伝統的に呼吸器感染症などの医薬品として用いられてきました。これらの二次代謝産物が自然生態系において土壌微生物群集に与える影響の解明を目的として研究を進めています。具体的には、二次代謝産物の添加実験や微生物DNAメタバーコーディング技術を用いて、個々の二次代謝産物がどのような土壌微生物と相互作用するのかを調べています。さらに、二次代謝産物によって変化した微生物群集が逆に植物の生育にどのような影響を与えるかというフィードバック機構も明らかにしていきたいと考えています。薬理活性のある二次代謝産物の生態学的役割を明らかにすることは、生態学のみならず薬理学的な視点から新しい治療法・利用法の可能性を探求する重要なステップであり、多角的な観点から人の安心、安全な生存圏の形成の実現に貢献することが期待されます。
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2024年8月21日作成