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炭素安定同位体を用いた樹木炭素蓄積量に影響する要因の解明

更新日: 2024/08/21

氏名 田邊智子
共同研究者 高橋けんし
採択年 2024(令和6) 年度

関連ミッション

  • ミッション1 「環境診断・循環機能制御」

研究概要

現在の炭素収支を正確に把握することは、今後の気候変動を確からしく推定するための大前提である。人為由来で放出されたCO2は陸―海―大気を循環するが、全球的な炭素循環モデルにおいて、最も不確実性が高いのは森林生態系による炭素吸収量と分かっている。樹木が蓄積した炭素量を正しく計測し、蓄積量が多い年はどのような条件であったかを明らかにできれば、将来の炭素循環ひいては世界中の気温予測精度は大きく改善される。
樹木が光合成により大気中から取り込んだ炭素は、分裂組織の異なる伸長成長と肥大成長というふたつの成長に使われると長期間樹体内に蓄積される。したがって、樹木成長量は中長期的な森林の炭素循環を考えるうえで重要な要素の一つである。成長量の年変動は、幹の高さ1.3 m(胸高)の肥大量を指標とした評価が主流であり、それらと気象要素との網羅的な統計解析を行うことで、成長量に影響しうる気象要因が抽出されてきた。
一方で、胸高の幹肥大量の多い年に、幹伸長量や枝肥大量も多いとは限らない。つまり、ある高さの幹肥大量では、個体全体の成長量の年変動を正しく評価できていない可能性がある。またこれまでは月別の気象データを用いた解析が踏襲されてきたが、同じ月でも上旬と下旬では成長段階が異なるため、月別の期間は樹木の成長開始や停止といった成長フェノロジーと対応していない。
本研究の目的は、従来の解析では見過ごされてきた幹肥大以外の成長にも着目したうえで、樹木の成長量を大きく左右する光合成期間を特定することにある。各器官の成長量に直結する光合成期間が分かれば、その間の気温や日射量といった環境要因が、それぞれの成長量に大きく関与していることが示唆される。今後起こるとされる環境変動に対して、樹木成長量がどのように変化し得るかといった予測への直接的な貢献が期待できることから、ミッション1: 環境診断・循環機能制御に関わる研究課題である。具体的には、成長フェノロジーの測定と炭素安定同位体を利用した光合成産物の追跡を繰り返し行うことにより、樹木の時間軸で期間を区切ったうえで、その間の光合成産物の行き先を照合する。3年生のモミ(Abies firma)苗80本を育て、幹と枝の伸長量と肥大量を対象とした。幹枝ともに、伸長成長が停止したのち肥大成長が開始する傾向にあった。光合成産物の行き先を追跡するため、現在安定同位体の解析を進めている。

研究概要図

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2024年8月21日作成

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