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万能アンテナの開発
Development of universal antenna

更新日: 2022/07/28

氏名 氏原秀樹
共同研究者 三谷友彦
採択年 2022(令和4) 年度

関連ミッション

  • ミッション2 太陽エネルギー変換・高度利用
  • ミッション3 宇宙生存環境

研究概要

通信やリモートセンシング、測地や電波天文観測、衛星の軌道決定、無線送電など様々な用途にアンテナが使われている。その用途ごとに異なる周波数でアンテナは設計されるが、様々な用途を兼用できる広帯域アンテナが実現できれば受信機も含めたシステム全体を軽量・コンパクトにできる。あるいは多数のスペクトル線を同時に観測できたり、熱放射など広い周波数範囲の放射への感度や測地精度が向上する。電波望遠鏡など高い分解能が必要なアンテナには口径が大きなカセグレン光学系が使われるが、その小さな幅鏡に合わせた細いビーム幅のフィード・アンテナが必要である。そのフィードの広帯域化は高次モードのために設計が難しく、特に細いビーム幅のフィードは多量の計算機リソースを要するため難しかった。前職ではこれらの点で原理的に有望な開口面コルゲートホーンやマルチモードホーンで広帯域フィード(3.2–16 GHz)を実用化し、VLBI(超長基線干渉計)による日本とイタリア間(=ほぼ地球の端と端)での光格子時計の周波数比較を世界で初めて実現した(*)。

どちらも構造が簡素なので高周波化しやすく、ビーム幅の選択肢も広い。この「設計自由度の高さ」から新たな用途を切り拓くべく「万能アンテナ」と称して、(欧州のとある)電波望遠鏡のアップグレード用の広帯域フィード(1.5–15.5 GHz)や大気中の水蒸気量の精密測定とともに様々なVLBI観測もできる広帯域フィード(16–64 GHz:科研費21H04524)などを開発中である。前者のビーム幅は非常に細いため、古い大型電波望遠鏡のアップグレードだけでなく光学望遠鏡の改造も可能である。後者は測地や電波天文、衛星の軌道決定などのVLBI観測に誤差をもたらす22 GHz帯の水蒸気のスペクトラムと、これに裾野がかぶる30 GHz帯の雲中の水滴や50 GHz帯の酸素のスペクトラムも広帯域フィードで同時に観測することでVLBI観測の精度向上を狙っている。もちろん気象観測用の水蒸気ラジオメータとしても従来より高分解能なので、例えば地球の水と熱の循環を担う火山の噴煙や線状降水帯の観測に活用すれば地球物理の理解やジオハザードの軽減にも貢献できるだろう。あるいは小型探査機用の標準的な観測・通信システムを実現できれば探査機の容積・重量や設計・検証時間、コストを大幅に節約できる。遮断特性の良いOMTやフィルタと組み合わせれば科学観測と通信だけでなく無線送受電も兼用でき、特にクレータの永久影の中や外惑星の衛星、雲の下の探査などにも有益だろう。近年主流のソフトウエア受信機と組み合わせれば打ち上げ後でも観測・通信周波数が柔軟に変更ができる。なので例えば月の裏側や地球を離れた静かな環境で、どの周波数で通信をしてるかわからない地球外文明を探査するには最適ではなかろうか。このように「万能」アンテナのコンセプトのもと、これまでの不可能を可能にするアンテナシステムを構築していきたい。

*“Intercontinental comparison of optical atomic clocks through very long baseline interferometry”
Nature Physics, October 2020, Pages:, Pizzocaro, M., Sekido, M., Takefuji, K. Ujihara, H. et al.
DOI: https://doi.org/10.1038/s41567-020-01038-6

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2022年7月27日作成

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