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重力勾配計の小型可搬化開発
Development of a transportable laser-interferometric gravity gradiometer

更新日: 2015/04/16

氏名 潮見幸江
共同研究者 津田敏隆
採択年 2014(平成26) 年度

重力勾配計は、地下の密度変化を検知する装置である。近距離であるほど感度が向上するため、地下数 m 程度の検出には特に有望である。この利点を生かして、土壌水分量の計測に応用できる可能性がある。土壌水分量は作物の育成環境を把握する上で重要な要因と なるが、従来の計測法では少数の観測点でのデータが代表値として用いられることが多く、空間的に不均一な現状を把握することが困難となっている。重力勾配 値は原理的に振動の影響を受けにくいため、飛行船などの運搬体上でも良い精度が期待できる。重力勾配計測をマッピングに応用することで空間的な不均一性を これまでより詳細に把握できる可能性がある。

ここで開発している重力勾配計[1]は、従来のものとは異なりレーザー干渉計型であり、高感度でドリフトの少ない測定ができる。また独自に開発した「投げ 上げ法」を採用しているため、比較的小型で可搬化も可能であることが特徴である。2009 年度より重力波検出実験に用いられるレーザー干渉計技術の応用として東京大学宇宙線研究所にて開発が開始され、2011 年より京都大学火山研究センター(阿蘇)にて火山での実地測定に向けた開発が行われた。装置に内在する種々のノイズ源を特定し改良を重ね、2014 年 3 月に鉛を用いた校正を行った結果、目標としていた数 µGal/m 以下の精度で連続観測を実施できることが確認された。初の実地測定として近年大規模噴火の可能性が示唆されている桜島火山において連続観測を行った。本研 究では、これらの火山地域における開発と実地測定で得た見識をもとに移動観測を想定した小型可搬装置の開発を行っている。

小型可搬化が実現されると移動観測が比較的容易となり、森林の地下水や土壌水分量のマッピングなどに応用できる可能性がある。また、複数台をいくつかの観 測点に設置してネットワークを構築し、同時測定を行うことで地下水の流動の様子を捉えることができる可能性もある。さらに開発を推進し、船や飛行船などの 運搬体上での観測が可能となれば、より広域なマッピングに対応でき、植生分布と土壌水分量の関係などの調査に利用できる可能性がある。これらの応用を念頭 に、小型可搬化・運搬体搭載機実現のための計測技術の開発を行っている。

参考文献
[1] 潮見幸江,黒田和明,寺田聡一,坪川恒也,西村純,日本測地学会誌,第58巻,第4号(2012),131–139.

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