関連ミッション
- ミッション2 (太陽エネルギー変換・高度利用)
- ミッション5 (高品位生存圏)
研究概要
植物細胞壁成分であるリグニンは賦存量の多い天然由来の芳香族バイオマス資源であり、化石資源の代替として注目されているポリマーである。リグニン分解による芳香族化合物の創出は、バイオマス利用における基本的な手段であるが、選択性の低さが課題となっている。これは、フェニルプロパノイドであるモノリグノールに由来する3つのモノマーユニット(H核, G核, S核)が、ラジカルカップリングにより様々な結合様式(e.g., β-O-4 結合, β-1 結合)により重合することで構成されるリグニンの構造の複雑さに起因している。また、リグニン分解においては、反応中に生じる中間体が再重合することによる反応性の低下も問題として挙げられる。
申請者の先行研究では、木質バイオマスからの生理活性物質創出を行ってきた。バイオマス変換方法であったマイクロ波ソルボリシス(加溶媒分解)において、ジオール(OH基を2つ持つアルコール)を含む混合溶媒を用いていたことから、本研究の共同研究者であるPeter J. Deuss博士らの研究チームによる報告である、diol-assisted fractionation (DAF) 法による再重合を抑制した効果的なリグニン分解および芳香族化合物創出に興味を持った [1 – 3]。これを受けて、本研究では、DAFを用いた生理活性物質の創出・単離を目的とする。先行研究において未達成であった「生理活性の本体である化合物の単離・構造決定」を実現するために、リグニンモデル化合物を材料とし、リグニン構造への新規モチーフ構造の導入を行うことで効果的な生理活性化合物の創出を目指す。
バイオマスからの生理活性物質創出には、バイオマスの種類・変換方法・化合物・生理活性のように複数のファクターが関わっており、得られる化合物およびその活性情報は膨大となる。この複雑性を「可能性」と読み替え、高付加価値なバイオリファイナリー、および新しい価値観・社会システムの構築を目指す。本研究はPeter J. Deuss 博士(University of Groningen, The Netherlands)および Mirjam Kabel博士(Wageningen University & Research, The Netherlands)との共同研究である。
[1] P. J. Deuss et al. 2015, J. Am. Chem. Soc., 137, 7456 – 7467. [2] A. D. Santi et al. 2020, ChemSusChem, 13 (17), 4468 – 4477. [3] A. D. Santi et al. 2021, ACS Sustain. Chem. Eng., 9 (5), 2388 – 2399.
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2025年4月30日作成