Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション2「太陽エネルギー変換・高度利用」
令和元年度の活動

課題1 CAD抑制植物が合成するアルデヒドリグニンの化学変換利用特性

研究代表者 飛松裕基(京都大学  生存圏研究所)
共同研究者 梅澤俊明(京都大学  生存圏研究所)、Xiao Zhang (Washington State University)

リグニンの高度利用は持続型社会構築に資するバイオマス総合利用システム(バイオリファイナリー)の確立に必須の課題である。本研究では、リグニン生合成遺伝子CAD抑制植物が特異的に合成する改変リグニン(アルデヒドリグニン)に着目したバイオマス化学変換利用効率の向上を検討している。本年度は、CAD欠損イネ変異株から得たアルデヒドリグニンを含むイネバイオマスの各種分解利用特性の解析を行った。その結果、アルデヒドリグニンの導入が、特にアルカリ溶液や深共晶溶媒(DES)を用いたイネバイオマスの成分分離の促進に有効であり、さらに、引き続く酵素糖化及びリグニン酸化分解における有用産物の収率向上にも寄与することを見出した。

成果発表

  1. Martin A.F., Tobimatsu Y., Kusumi R., Matsumoto N., Miyamoto T., Lam P.Y., Yamamura M., Koshiba T., Sakamoto M., Umezawa T., Altered lignocellulose chemical structure and molecular assembly in CINNAMYL ALCOHOL DEHYDROGENASE-deficient rice. Sci. Rep., 9, 17153 (2019). doi: 10.1038/s41598-019-53156-8.

その他関連学会発表4件(国内3件、国際1件)

課題2 バイオリファイナリーへ向けた生体触媒、人工触媒の開発

研究代表者 渡辺隆司(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 西村裕志、徳永有希、岡野啓志、斎藤香織、小林直子、三谷友彦 (京都大学 生存圏研究所)、永田崇、近藤敬子、片平正人 (京都大学 エネルギー理工学研究所)、磯崎勝弘、高谷光、中村正治 (京都大学 化学研究所)、樫村京一郎 (中部大学 工学部)、入江俊一(滋賀県立大学 環境科学部)

本研究は、リグノセルロース系バイオマス変換の鍵となる高効率なリグニン分解のため、セルラーゼの糖質結合モジュール(CBM)やペプチドとリグニンの相互作用を分子レベルで解析するとともに、これらのリグニン親和性分子を結合したリグニン分解酵素や触媒を合成するとともに、マイクロ波による反応促進効果も解析し、効率的なバイオマス変換法を開発することを目的とする。糸状菌由来セルラーゼのCBMとリグニンとの結合を解析するため、安定同位体でラベルしたCBMを発現・精製し、木材由来単離リグニンとの親和性を二次元NMRで解析した。また、13Cラベルしたリグニンオリゴマーモデルを合成し、CBMとの相互作用を二次元NMRで解析した。さらに、リグニン親和性ペプチドを結合した担子菌由来ラッカーゼを発現・精製し、ペプチドの結合によるリグニン分解性の変化を解析した。

成果発表

    1. Yuki Tokunaga, Takashi Nagata, Takashi Suetomi, Satoshi Oshiro, Keiko Kondo, Masato Katahira and Takashi Watanabe, NMR Analysis on Molecular Interaction of Lignin with Amino Acid Residues of Carbohydrate-Binding Module from Trichoderma reesei Cel7A, Scientific Reports, 9, 1977. (2019).
    2. 渡辺隆司、徳永有希、「バイオマス変換に向けたリグニンとその親和性分子における相互作用解析」、バイオサイエンスとインダストリー、77, 373-377 (2019).

    海外招待講演1件、国内招待講演1件、国内発表3件

課題3 化学反応用マイクロ波加熱容器の研究開発

研究代表者 三谷友彦(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 椴木涼介、篠原真毅(京都大学 生存圏研究所)

電磁界結合と呼ばれる物理現象を利用した、金属の囲いがなくても安全に利用できるマイクロ波加熱装置の設計開発を行った。純水以外の被加熱サンプルとして有機溶媒を想定し、電磁界シミュレーションによる加熱装置の評価を行った。シミュレーション結果より、純水よりも比誘電率が小さい被加熱サンプルでは入射したマイクロ波電力の半分以上が反射することが判明し、広範囲の比誘電率に対応する装置設計が必要であることが明らかとなった。

成果発表

  1. Mitani, T., Nishio, D., Shinohara, N., “Feasibility Study on Simultaneous Microwave Heating of Multiple Samples by Electromagnetic Coupling-Type Applicator”, 53rd Annual Microwave Power Symposium (IMPI 53), pp.97-99, Las Vegas, USA, Jun. 18-20, 2019.
  2. Mitani, T., “Recent Trend in Microwave Sources for Microwave Heating Applications”, 2019 URSI-Japan Radio Science Meeting (URSI-JRSM 2019), Tokyo, Japan, Sep. 5-6, 2019.

その他国内発表 1件

課題4 窒素ドープによる木質炭素の機能化に関する研究

研究代表者 畑俊充(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 本間千晶(道総研林産試)

未利用バイオマスから地球温暖化問題を解決する有用物を生産するため、二酸化炭素吸蔵や電気の貯蔵において重要な役割を果たす木質炭素のナノ空隙に着目した。アンモニアあるいはエチルアミンを350℃の温度下で吸着させた木質熱処理物を、高温で炭化することにより、木質炭素への窒素ドープを実現した。窒素ドープによって触媒活性を高めた木質熱処理物のナノ空隙構造を調べ、熱処理条件が得られたナノ空隙を含む多孔質炭素の面間隔へ与える影響をX線光電子分光分析装置と透過電子顕微鏡を用いて解析し、上記のガス処理により面間隔が小さくなることがわかった。

成果発表

国内発表 2件

課題5 エクスパンシンによる植物細胞壁の緩み現象における構造変化の解析

研究代表者 今井友也(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 石丸恵(近畿大学生物理工学部)、湯口宜明(大阪電気通信大学)

木質等のバイオマスは一般に高分子性固体である。そもそも生物が自身の生存のために合成したバイオマスは、そのライフサイクルの中でその構造が様々に調整される。その過程の本質は常温常圧水系溶媒下での高分子構造変調機能に他ならないので、学術的に大変興味深いだけでなく、新規産業技術の潜在的なシーズでもある。
そこでそのような固体構造変調機能の一例として、エクスパンシンと呼ばれるタンパク質による植物細胞壁構造の緩みに着目し、研究を開始した。今年度は、小角X線散乱(SAXS)と走査型電子顕微鏡を用いて、モモ果実の成熟過程における構造変化の解析を行った。SAXSにより何らかの構造変化が起きていることを確認できた。

成果発表

国内発表 1件

ミッション2関連研究
(ミッション2シンポジウム発表ポスター一覧)

第402回生存圏シンポジウム(令和元年12月18日開催)にて、ミッション2関連研究ポスター発表を実施した。以下に、ポスター発表された研究テーマ23件を示す。ポスターセッションでは、各発表者にミッション2概略図上に各研究テーマの位置付けを付箋紙で表してもらった。

  1. 高効率マイクロ波電力伝送のための方向および距離同時推定手法の検討
  2. Development of sugarcane trash fractionation process for an integrative biorefinery platform
  3. ミニドローン用マイクロ波無線電力伝送システムの実用化に向けたビームフォーミングの検討
  4. 溶解性多糖モノオキシゲナーゼの反応におけるマイクロ波効果
  5. 双曲型メタマテリアルを用いた無反射マイクロ波四分の一波長板
  6. 組換えイネを用いたリグニン芳香角組成–リグノセルロース利用特性相関の解析
  7. マルチパス環境下でのマイクロ波送電システムに関する研究
  8. 選択的白色腐朽菌が分泌する細胞外代謝物の役割
  9. 管内検査ロボットへの無線給電に関する研究
  10. 段階的酵素分解法を用いたリグニン多糖複合体の調製と分析
  11. 未来の科学者のための科学実験 “ひらめきときめきサイエンス”
  12. Altered lignocellulose chemical structure and molecular assembly in lignin-modified rice mutants
  13. 電磁界シミュレーションによる電磁界結合型マイクロ波加熱装置のパラメータ検討
  14. 小角X線散乱によるモモ果実成熟過程における細胞壁構造変化の観察
  15. 表面波を抑制する両円偏波アンテナの開発
  16. マイクロ波照射下によるユーカリ グロビュラス及びスギ木粉の有機酸への可溶化
  17. 8 GHzマグネトロンフェーズドアレーの開発
  18. マイクロ波ソルボリシスによる植物バイオマスからのリグニン由来抗腫瘍活性物質の創出
  19. タイトル:マグネトロンを用いる無線電力伝送と通信システムの研究
  20. 安定同位体標識リグニンオリゴマーモデルを用いたセルラーゼ糖質結合モジュールとの相互作用解析
  21. ウェアラブルデバイスへ向けたマイクロ波電力伝送における920MHz整流回路の設計
  22. ビフェニル/PCB 分解細菌 Rhodococcus wratislaviensis T301 株の色素脱色型ペルオキシダーゼの生化学的性質
  23. 成層圏プラットフォーム飛行船に向けた長方形アンテナによるマイクロ波電力伝送システム検討

平成30年度の活動報告はこちらから

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