Research Institute for Sustainable Humanosphere

樹体内炭素動態に基づいた森林土壌の炭素放出プロセスの解明
Forest soil carbon dynamics: carbon allocation of tree photosynthate to belowground ecosystem

氏名 安宅未央子
共同研究者 高橋けんし
採択年 2019(平成31)年度

土壌から放出するCO2量は、全球で約80 PgC yr−1 (化石燃料起源のCO2量の11倍)を占めている。よって、地球温暖化に伴う環境変動の影響を受けて、土壌炭素放出速度がわずかでも変動すれば、全球レベルの大気中のCO2濃度に強く影響する。しかし、土壌炭素放出は時間的・空間的に大きく変動し、十分な精度で定量評価することが難しい。このばらつきの原因として、土壌炭素放出は「植物由来の呼吸」と「微生物呼吸」といった本質的に由来の異なるプロセスが混合した結果であり、各々の呼吸は異なった環境応答性をもっていることが挙げられる。森林生態系スケールの土壌炭素放出量ひいては炭素収支を正確に定量するためには、各々のCO2放出特性を個別に分離して理解する必要がある。

特に、森林炭素収支研究では、測定手法の限界から光合成由来の炭素を介した土壌炭素放出プロセスの把握が進んでいない。光合成によって樹木に取り込まれた炭素は、幹や根・菌根菌(根圏)に配分・呼吸として再放出されるのに加え、根圏から炭素を分泌(根圏滲出物)し、根圏まわりの土壌有機物分解を促進する働きがある。これまでの自身の研究では、活性の高い細根に着目し、高頻度測定による細根呼吸速度の環境応答特性を評価してきた。その結果、根圏炭素動態は、地上部の光合成活動による地下部への遅い炭素(C)供給に加え、早いC供給の2つのプロセスによって影響を受けていることが示唆された。地下部への遅いC供給は、地上部から地下部へと移動するその距離や速度によるものだと推測される。一方、地下部への早いC供給は、既に師管内に存在している同化産物が押し出されたものだと推測される。従って、地下部の炭素放出プロセスは、地上部光合成と連動した様々な時間スケールでのC供給によって応答していると予測される。

本研究では、樹木の葉群から菌根菌糸に至る各部位の炭素吸収・放出速度を網羅的かつリアルタイムで測定できる手法と樹体内炭素動態を測定できるパルスラベリング法を用いて、樹木全体の炭素吸収・放出速度の環境応答特性を評価し、樹体内炭素動態と関連付けることで、地上部-地下部生態系間のつながりに着目した森林土壌炭素放出プロセスを定量的に解明する目的とする。本研究は、気候変動に対する樹木の生理的応答とそれと連動する土壌圏炭素動態のより正確な推定を目指し、土壌圏-大気圏の物質循環メカニズムを明らかにすることから、「ミッション1:環境診断・循環機能制御」に関わる課題と位置づけられる。

2019m03 JPEG

ページ先頭へもどる
2019年4月8日作成

一つ前のページへもどる