Research Institute for Sustainable Humanosphere

大気微量成分観測に基づく対流圈成層圏大気輸送過程の評価
A study of transport processes from the troposphere to the stratosphere based on observations of atmospheric trace gases

氏名 稲飯洋一
共同研究者 塩谷雅人
採択年 2013(平成25) 年度

地球温暖化、オゾンホールはそれぞれ、温室効果気体の大気中への人為的過剰放出、人工物質であるフロンガスに由来するオゾン破壊物質の排出が原因で生じて いる。温室効果気体やオゾン破壊物質は主に対流圏に排出され、これらを含む対流圏の大気は赤道域に存在する対流圏-成層圏遷移層; 熱帯対流圏界層(Tropical Tropopause Layer (TTL))を通過して成層圏全体へと輸送される(Brewer-Dobson 循環)。成層圏における温室効果気体の増加は、対流圏温暖化を加速させる一方で、成層圏の寒冷化をもたらし極成層圏雲の発生頻度を高める事で、フロンガス 排出規制により近年拡大が停止していたオゾンホールの再拡大に繋がる。このように地球温暖化やオゾンホールの問題に成層圏は大きな役割を持つが、成層圏へ の物質輸送過程は十分に理解されておらず、それらの将来予測に大きな不確定性を生んでいる。

増加トレンドを持つ温室効果気体、二酸化炭素(CO2)や六フッ化硫黄(SF6)は、上部対流圏以高の化学 過程にほとんど関与しないため、それらの濃度は力学過程の評価に利用できる。本研究では、熱帯域におけるオゾン・水蒸気観測データに加え、赤道域で実施さ れた成層圏大気採集実験、上部対流圏における微量気体観測プロジェクト(Comprehensive Observation Network for TRace gases by AIrLiners (CONTRAIL))、地上観測拠点などでそれぞれ得られている熱帯成層圏、上部対流圏、下部対流圏における CO2 と SF6 濃度データを解析し、対流圏から TTL そして成層圏への物質輸送過程を化学的観点から評価しその実態を観測事実に基づき明らかにする。

2013m01
図:対流圏、熱帯対流圏界層(TTL)、成層圏の模式図(緯度-高度断面)。対流圏の大気はTTLを通過し成層圏へと流入する(青矢印)。本研究ではこの循環場に沿った大気微量成分観測データ(赤丸部)を解析し大気輸送過程を評価する。

一つ前のページへもどる