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高精細大気圏・電離圏統合モデルによる電離圏擾乱現象の解明
Study of ionospheric irregularities with high resolution atmosphere-ionosphere coupling model

更新日: 2015/04/16

氏名 横山竜宏
共同研究者 山本衛
採択年 2012(平成24) 年度

地球大気を覆う電離圏(高度 90–1000 km)は、下層大気と宇宙空間を繋ぐ遷移領域であると同時に衛星電波が遅延等の影響を受ける伝搬経路でもある。特に、局所的なプラズマ密 度の不規則構造を伴う電離圏擾乱が発生した場合には、電波の振幅、位相の急激な変動(シンチレーション)が生じるため、GPS 等による電子航法に深刻な障害を及ぼすことが知られている。このような電離圏擾乱の発生機構を解明し、発生を事前に予測することが、科学・実用の両面から 求められている。従来の地球大気の研究は、下層大気/中層大気/超高層大気/電離圏と高度で区切られた各領域において、各々の専門家によって進められてき た。特に、大気の一部が電離し電磁力学が重要となる電離圏とそれ以外の領域は、それぞれ独立した研究対象と考えられ、両者の結合という観点からの研究は非 常に限られていた。近年、学会等でも大気圏・電離圏を統一したセッションが作られる等、中性-電離大気結合の重要性が注目を集めつつある。そこで本研究で は、静力学平衡を仮定しない全球大気圏モデルの開発を見据えた研究を実施する。さらに、このモデルに電離圏プラズマ物理を統合し、大気圏・電離圏を一体の ものとして捉えることにより、局所的な現象である電離圏擾乱を全球的な視点から理解し、精度の高い電離圏擾乱の発生予測の実現を目指す。これは、従来型の 数値モデルの概念、つまり、静力学平衡を仮定した大規模な現象のみを取り扱う全球モデル、あるいは、局所的な現象のみを取り扱う非静力学モデルといった棲 み分けを取り払い、全ての現象を自己完結的に取り扱える数値モデルの開発を目指すものである。

昨年度中に、電離圏中において生じる分極電場とプラズマ密度の計算部分を見直し、効率の良い並列計算を実現した。これにより、計算の大規模化によるスケー ラビリティが大きく向上し、次期スーパーコンピュータへの対応が容易となった。本年度の計画として、既存の中緯度電離圏モデルを赤道域まで拡張し、非静力 学大気圏モデルを統合させる。赤道域におけるプラズマバブルと呼ばれる電離圏擾乱は、特に深刻な電波障害を引き起こすため、発生機構の解明と発生の予測が 強く求められている。下層大気が電離圏の及ぼす影響について定量的に考察するとともに、インドネシアを中心に展開されている生存圏研究所の観測網と数値モ デルとの比較を行い、プラズマバブルの生成機構解明を目指す。

2012m03

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