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大気圏環境情報分野の伊藤雅之准教授が、熱帯泥炭土壌のpH増加時のメタン生成能とメタン生成菌叢の変化に関する論文を発表しました

大気圏環境情報分野の伊藤雅之准教授が、熱帯泥炭土壌のpH増加時のメタン生成能とメタン生成菌叢の変化に関する論文を発表しました。本研究は、泥炭地開発における温室効果ガス放出抑制のための重要な知見を提供するものです。

インドネシアやマレーシアなど東南アジアを中心に、泥炭湿地林という熱帯林が存在します。そこでは特に雨季に地表面が水に覆われるため、葉や枯死木などの有機物が数千年にもわたって分解されずに蓄積します。そのため、熱帯泥炭湿地林は、水と炭素の貯蔵庫とも呼ばれています。
近年は、森林伐採や排水路の建設を伴ったプランテーション(アブラヤシなど)への土地利用転換が進んでいます。排水路の建設により水位の下がった状態では、泥炭が空気(酸素)に触れるため、微生物による分解(呼吸)などから温室効果ガスの1位である二酸化炭素が大気へと放出されます。一方で雨季に水につかった酸素の無い状態(嫌気的といいます)では第2位の温室効果ガスの、メタンが生成されます。
また泥炭土壌はもともと酸性(pHが低い)が強いのですが、プランテーションでは植物の生育をよくするために、アルカリ性の石灰を用いて中和することがよく行われます。
本研究では泥炭湿地林の土壌のpHを調整し、水に浸した嫌気的な状態で培養する実験をしました。その結果、pHを中性に近づけた土壌ではもともとの強酸性土壌ではほとんど生成されなかったメタンがより多く生成されること、メタンを生成する微生物の割合が大きく増加することが示されました。この結果は、熱帯泥炭地を開発する際の土壌pHと水位の管理を適切にすることが、泥炭からの温室効果ガス放出を抑制するために重要だということを示すものです。

この成果は,2025年2月24日付でElsevier社の学術誌『CATENA』に掲載されました。

【タイトル】Increasing the pH of tropical peat can enhance methane production and methanogenic growth under anoxic conditions

【著者】Kitso Kusin, Kaho Ogawa, Hideyuki Doi, Takeshi Tokida, Takashi Hirano, Adi Jaya, Masayuki Itoh*(責任著者*)

【掲載誌】CATENA

【URL】https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0341816225000931(外部サイトに接続します)

研究成果に関するお問い合わせ先:大気圏環境情報学分野 伊藤雅之 
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