Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション4「循環材料・環境共生システム」
令和2年度の活動

受賞

第18回「建築と社会」賞

【受賞者】 京都大学生存圏研究所 五十田博
【受賞タイトル】 木造建築物を取り巻く動向と今後の可能性
【授与組織名】 一般社団法人日本建築協会
【受賞年月】 2020年10月

第71回日本木材学会大会「学生優秀口頭発表賞」

【受賞者】 京都大学生存圏研究所 丹治拓也
【受賞タイトル】 インプリント法を用いたセルロースナノファイバーシート表面の構造制御と濡れ性変化
【授与組織名】 一般社団法人日本木材学
【受賞年月】 2021年3月

課題1 木質材料をもちいた建築物の設計に資する部材・構造の挙動解明

研究代表者 五十田博(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 中川貴文(京都大学 生存圏研究所)、森 拓郎(広島大学大学院 工学研究科)、北守顕久(京都大学 生存圏研究所)、荒木康弘(国土技術政策総合研究所)、中島昌一(建築研究所)

本年度は科研費(基盤A)、林野庁補助事業プロジェクトに協力し、5層のCLT連層並列壁にせん断パネルダンパーを組み込んだ耐震システム(図1-1)の静的加力実験を実施するとともに設計法について一考した。現在のCLTパネル工法の構造設計法では床勝ち工法を想定しているため、今回のシステムのような連層耐震壁による壁勝ち工法に関しては構造性能に関する知見が不十分である。今回の実験では、せん断パネルダンパーが降伏するまで加力を行いロッキングによる傾斜復元力等の耐震性能を確認した。またNHERI Tallwoodプロジェクトに協力し、10層の連層耐震壁システム(図1-2)の振動台実験の事前解析を行い、試験条件等を確認した。
本システムではせん断パネルダンパー等に損傷集中させることで、地震時にエネルギー吸収能力、復旧性が高く、傾斜復元力による抵抗も期待できる、今後は振動台実験との比較や解析モデルによるパラメトリック・スタディにより研究を発展させ、本システムの構造設計法の確立に向けて検討を深める予定である。

図1-1:5層試験体
図1-2:10層試験体案 (NEHRI Tallwood HPより)

成果発表

  1. 角田功太郎、衣笠大樹、森 拓郎、中川貴文、荒木康弘、中島昌一、北守顕久、 五十田博「CLT 連層耐震壁とダンパーで構成される耐震システムの静加力実験 その1 実験概要と破壊性状」、日本建築学会日本建築学会学術講演梗概集(中国), 2020年9月
  2. 衣笠大樹、角田功太郎、森 拓郎、中川貴文、荒木康弘、中島昌一、北守顕久、 五十田博「CLT 連層耐震壁とダンパーで構成される耐震システムの静加力実験 その2 各部設計および事前解析と実験結果の比較」、日本建築学会日本建築学会学術講演梗概集(中国), 2020年9月

課題2 経年木材のDNA分析による素性分析

研究代表者 今井友也(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 田鶴寿弥子

解剖学的特徴から木材の樹種を同定することは一般的に行われており、信頼性の高い方法である。しかし、解剖学的長だけから種同定を進めることがどうしても難しいケースも散見される。その一つがヒノキとアスナロ属の木材の見分けである。今年度は、京都知恩院本堂で実際に部材として使われていた木材で、DNAバーコーディング解析を試みた。本試料は少なくとも100年以上経過した木材で、解剖学的検査の結果アスナロ属と識別されたものである。様々な条件検討を行った結果、PCR増幅については再現性よく成功できる条件を見出すに至った。すなわちDNAバーコーディング解析は、経年下木材でも十分可能であることが示された。
現在はさらなるプロトコルの最適化を進め、経年木材からDNAバーコーディングにより得られるDNA配列データの信頼性を上げるプロトコルの確立を目指している。

成果発表

  1. 今井友也、田鶴寿弥子 「DNAミニバーコーディングによる古材樹種識別の試み」 日本木材学会 組織と材質研究会 2020秋の研究会(オンライン) 2020年11月22日

課題3 新たな木質材料の創成に向けた木材の先天的機能の解明

研究代表者 梅村研二(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 安藤大将(京都大学 生存圏研究所),中川美幸(愛媛県林業研究センター)

本研究では、スギ材の二酸化窒素収着機能の詳細について検討を進めている。スギ材の利用に際しては人工乾燥処理を行うことが多く、処理温度によって抽出成分の量や質が変化する。そこで、天然乾燥や種々の温度で人工乾燥処理したスギ心材の二酸化窒素収着量につて、抽出成分量や各種成分と関連付けて検討した。その結果、スギ材は処理温度に関わらず二酸化窒素を収着したが、天然乾燥による材が最も多い収着量を示し、乾燥温度が高くなるほど収着量が低下する傾向が見られた。また、溶媒抽出によって抽出成分を除去すると、乾燥条件に関わらずほぼ同じ収着量を示した。抽出成分含有率と二酸化窒素収着量との関係を調べたところ、両者に高い相関関係が認められた。したがって、二酸化窒素収着機能は抽出成分量に大きく影響されることが明らかとなった。さらに、抽出成分を分析した結果、アビエタジエンが二酸化窒素収着に寄与している可能性が示唆された。
スギ材の二酸化窒素収着機能は含水率にも影響されるが、抽出成分との関連は未だ不明である。そのため、今後は材の含水率や抽出成分の有無が収着量に及ぼす影響について検討する予定である。

成果発表

  1. Miyuki Nakagawa, Kenji Umemura, Shuichi Kawai and Kozo Kanayama; Influence of drying temperature on NO2 sorption ability of cedar timber, J Wood Sci (2020) 66:30, DOI: 10.1186/s10086-020-01877-0

課題4 未来型資源循環システムの構築

研究代表者 吉村剛(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 畑俊充(京都大学 生存圏研究所)

  1. 輸入木質材料を対象とした侵入木材害虫の包括的調査
    木材流通のグローバ ル化・高速化は我々に安価な製材品を供給し、豊かな住環境を 提供してきた。その一方で、海外製品・家具等に付着した昆虫類がノーチェック 国内 に持ち込まれ定着するという「外来種問題」も引き起こしてきた。なぜなら、木材こん包材は検疫の対象となっているものの、合板・パーティクルボードなどの多くの木製品は検疫の対象外であるからである。本研究では、このような目的意識から、まず輸入合板を対象とし、大手建材会社の協力を得て、輸入直後のコンテナ及び保管倉庫の調査を実施した。調査は、コンテナ内面及び保管倉庫側面・排水用溝を掃除機でサンプリングすることにより実施した。その結果、32個の虫体試料を得ることができ、現在同定中ではあるものの、一部乾材害虫の可能性があるサンプルが含まれていた。
  2. CO2吸着炭素の空隙構造解析
    CO2吸着炭素をバイオ炭へ応用するために、熱処理条件がナノ空隙構造へ及ぼす影響をCO2吸着測定により調べた。得られた吸着等温線のNLDFT法(Non–Local Density Functional Theory ;非局在密度汎関数法)による解析から、800℃よりも600℃の表面積が大きいことがわかった。NLDFT法によりミクロ孔内に閉じ込められたCO2気体の相挙動をより正確に把握し、主にミクロ孔からなる詳細な空孔径分布が明らかとなった。原料の木材にボールミリングを施すことにより、表面積はさらに大きくなった。熱処理条件を変えることにより、得られる多孔質炭素のミクロ孔構造および化学構造が変化し、CO2を効率的に吸着する材料が得られる可能性が示された。
図4-1 サンプリングされた乾材害虫と思われる虫体試料
図4-2 600℃で熱処理した主としてミクロ孔からなる木質炭素の電子顕微鏡図

 

成果発表

  1. 畑 俊充、本間千晶、押田京一:熱処理および賦活条件が木質炭素の微細空隙構造に及ぼす影響、第71回日本木材学会、東京、2020年3月.

課題5 セルロースナノファイバーの製造と利用

研究代表者 矢野浩之(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 阿部賢太郎,田中聡一(京都大学 生存圏研究所)

植物細胞の基本骨格物質であるセルロースナノファイバーを活用した材料開発を進めている。特に高強度複合材料の開発に注力している。
CNFは基本的に親水性であるため,シランカップリング処理により疎水性CNFを調整した.マイクロ構造はインプリント法によって容易にCNFフィルム表面に付与することができる.今回は,表面に凹凸構造(深さ2 µm)を有するシリコンウエハー上でキャスト処理を行うことでCNF表面にパターンを転写した.未処理のCNFを乾燥させた場合,強固な水素結合によりCNFは固く凝集し,本来のナノ構造が消失する.しかし,疎水化CNFは乾燥後も凝集は起こらず,均一なナノネットワーク構造を保持する.これにより,マイクロ構造×ナノ構造を有する疎水化CNFフィルムの作製を行った.結果として,このCNFフィルムの接触角は約160度と,蓮の葉と同等の超撥水性が発現された.ただし,このCNFフィルムは蓮の葉とは異なりフィルムを傾斜させても水滴が滑走せず吸着したままであった.これは,ペタル(花びら)効果と呼ばれるもので,CNF特有の性質から発現した現象であると考えられる.

成果発表

  1. (総説)矢野浩之、セルロースナノファイバー材料の開発と実装、繊維学会誌 76 (11), 2020
  2. Ishikura Y, Yano H. Microfibrillated-cellulose-reinforced polyester nanocomposites prepared by filtration and hot pressing: Bending properties and three-dimensional formability, Journal of Applied Polymer Science 137 (33), 48192, 2020
  3. Tanpichai S, Biswas SK, Witayakran S, Yano H. Optically transparent tough nanocomposites with a hierarchical structure of cellulose nanofiber networks prepared by the Pickering emulsion method, Composites Part A: Applied Science and Manufacturing 132, 105811, 2020

 

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