Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション2「太陽エネルギー変換・高度利用」
令和2年度の活動

課題1 バイオリファイナリーへ向けた生体触媒、人工触媒の開発

研究代表者 渡辺隆司(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 徳永有希、岡野啓志、斎藤香織、西村裕志 (京都大学 生存圏研究所)、永田崇、近藤敬子、片平正人 (京都大学 エネルギー理工学研究所)、入江俊一(滋賀県立大学 環境科学部)

リグノセルロース系バイオマス変換の鍵となる高効率なリグニン分解のため、セルラーゼの糖質結合モジュールとリグニンの相互作用を分子レベルで解析した。本年度は、工業的に重要なセルラーゼ生産菌Trichoderma reesei由来のセロビオヒドロラーゼIの糖質結合モジュール (TrCBM1)に対するリグニンの吸着部位を明らかにする目的で、β-O-4結合型リグニンオリゴマーモデルを合成し、そのNMRシグナルの帰属および高次構造の解析を行った。得られた結果を基に、TrCBM1に対する吸着部位をNMR化学シフト摂動法 (CSP法)により解析し、リグニンモデルが主に芳香環でTrCBM1と相互作用することやリグニンモデルの重合度やコンフィグレーションが相互作用に影響することを見出した。また、リグニン親和性ペプチドを白色腐朽菌Trametes versicolor由来のラッカーゼのN末端およびC末端に結合したリグニン分解酵素のリグニン分解特性を、二次元NMR等を用いて解析した。

成果発表

  1. Tokunaga, Y., Nagata, T., Kondo, K., Katahira, M., Watanabe, T., NMR Elucidation of Nonproductive Binding Sites of Lignin Models with Carbohydrate-Binding Module of Cellobiohydrolase I, Biotechnology for Biofuels, 13, 1,164 (2020) DOI: 10.1186/s13068-020-01805-w.
  2. Tokunaga, Y., Nagata, T., Kondo, K., Katahira, M., Watanabe, T., Complete NMR assignment and analysis of molecular structural changes of β-O-4 lignin oligomer model compounds in organic media with different water content, Holzforshung, 74, published online (2020) DOI:10.1515/hf-2020-0039.

    その他関連学会発表3件(国内2件、国際1件)

課題2 化学反応用マイクロ波加熱容器の研究開発

研究代表者 三谷友彦(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 椴木涼介、篠原真毅(京都大学 生存圏研究所)

昨年度に引き続き、電磁界結合と呼ばれる物理現象を利用した、金属の囲いがなくても安全に利用できる開放型マイクロ波加熱装置の設計開発を行った。今年度は、2次側電磁界結合共振器の終端インピーダンスを調整することにより、マイクロ波漏洩電力がこれまでの装置よりも約半減することを、電磁界シミュレーションおよび実証実験により突き止めた。マイクロ波漏洩電力の低減によりマイクロ波入力電力の上限を引き上げられることから、装置の利便性向上に繋がる研究成果を得た。

成果発表

    国内発表3

課題3 小角X線散乱分析によるリグニン分布構造解析

研究代表者 今井友也(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 堀川祥生(東京農工大学 農学研究院)

植物細胞壁構成成分の主要三成分の一つであるリグニンは非晶性で、結晶性のセルロース微繊維間を充填するマトリクス物質である。したがって細胞壁から抽出して構造解析を行うと形態が変化するため、細胞壁内での存在形態を知ることは容易ではない。しかし細胞壁内におけるリグニンの分布は、木材等の植物原材料の諸物性に大きく影響する因子であり、植物材料の有効利用のために重要な情報である。本研究では小角X線散乱(SAXS)を使ってリグニンの細胞壁内構造を可視化することを試みた。その結果、測定に工夫を凝らすことで、細胞壁内におけるリグニン分布を知ることが可能なことが判明した。

成果発表

国内発表 1件

課題4 ビフェニル/PCB分解細菌 Rhodococcus wratislaviensis T301 株の色素脱色型ペルオキシダーゼの機能解析

研究代表者 渡邊崇人(京都大学 生存圏研究所)

これまでに深刻な環境汚染物質であるポリ塩化ビフェニル (PCB) 分解細菌十数株のゲノム解析を行い、その内、R. wratislaviensis T301 株の 3 種類の色素脱色型ペルオキシダーゼに注目してきた。今回、多用されている大腸菌の発現系ではなく、T301 株と同じ Rhodococcus 属細菌の発現系で高発現させた組換えタンパク質を用いて機能解析を試みた。その結果、これら組換えタンパク質に付加したタグの位置によって違いがあるものの、細菌由来のリグニンペルオキシダーゼとして報告された強力な PCB 分解細菌 R. jostii RHA1 株のDypB や白色腐朽菌 Phanerochaete chrysosporium のリグニンペルオキシダーゼ LiPH8 よりも基質親和性を始めとするカイネティックパラメータの値が高かった。

成果発表

  1. 渡邊崇人,リグノセルロース系バイオマスからの有用芳香族化合物生産に向けた環境汚染物質分解細菌の利用,IFO Res. Commun. 34, 149-150 (2020).

   その他国内発表 3件

課題5 窒素ドープによるササ炭素の機能化に関する研究

研究代表者 畑俊充(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 本間千晶(道総研林産試)

地球温暖化対策に係るCO2吸蔵材や環境にやさしいエネルギーデバイスの早急な開発が求められている。未利用バイオマスから地球温暖化問題を解決する有用物を生産するため、ササ炭素化物のナノ空隙に着目し、二酸化炭素吸蔵性や電気貯蔵性の検討を行った。ササは稈部よりも葉部に多くの窒素が含まれている。350℃で熱処理を行った後、熱処理物とKOHとを混合し600℃まで昇温し賦活炭化を行い、ササ炭素化物への窒素ドープの効果を確認した。0におけるCO2ガス吸着等温線のNLDFT法による解析結果から、葉部および稈部のミクロ孔空隙分布は類似であった。一方、表面積はそれぞれ738および707m2/gとなり違いがみられた。この表面積の差の要因の一つとして、ササ葉部の窒素ドープによる炭素に対する触媒活性をあげられる。ササ葉部には稈部の約10倍の窒素が含まれているからである。ササ葉部の炭化物を蓄電池として利用すれば、この特徴をさらに活かすことができると思われる。

Pore distribution of carbonized Sasa leaves.

ミッション2関連研究
(ミッション2シンポジウム発表一覧)

第433回生存圏シンポジウム(令和2年10月30日開催)にて、ミッション2関連研究発表を実施した。以下に、発表された研究テーマ19件を示す。

  1. リグニンβアリールエーテル結合分解酵素反応の質量分析
  2. 選択的白色腐朽菌が分泌する細胞外小胞に関する研究
  3. 木質バイオマス変換のためのビフェニル/PCB 分解細菌の利用
  4. 抗生物質処理のための木質系廃棄物からの酸化グラフェン・ナノTiO2 複合材料の開発
  5. 木材細胞壁内におけるリグニン可視化の試み
  6. 細菌由来セルラーゼを用いたセルロース合成酵素複合体の解析
  7. 針葉樹セルロース合成酵素の発現系構築
  8. 室内バイタルセンサ駆動用920MHz 高効率整流回路の開発
  9. 電磁界結合型マイクロ波加熱装置の高効率化に関する研究
  10. 移動体へのマイクロ波電力伝送に向けた方向及び距離推定に関する研究
  11. 小型ドローンへのマイクロ波無線電力伝送用軽量レクテナアレイの設計
  12. 高効率マイクロ波送電に向けた8GHz 可変電力分配回路の開発
  13. OAM モードによる無線電力伝送と無線通信の同時実現のための研究
  14. 二次高調波を用いた閉ループ制御型位置追従システムの開発
  15. 干渉を考慮したマルチパス環境におけるマイクロ波送電システム
  16. マイクロ波用シングルシャント型整流回路の解析
  17. EV トラックに向けた大電力レクテナの設計
  18. マイクロ波帯におけるベルトラミ場の研究
  19. 有機溶媒-水系におけるβ-O-4 結合型リグニンオリゴマーモデルの2 次元NMR スペクトルの帰属と高次構造の解析

令和元年度の活動報告はこちらから

一つ前のページへもどる