Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション5-4「木づかいの科学による社会貢献(木造建築、木質住環境、木質資源・データベース、木づかいの変遷)」
令和元年度の活動

受賞

平成31年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 理解増進部門

【受賞者】京都大学生存圏研究所五十田博、中川貴文
【授与組織名】文部科学省
【受賞年月】2019年4月
【受賞タイトル】 極大地震で人命を失わず継続使用できる木造住宅の普及啓発

 課題1 アジアにおける木材情報の調査と保存

研究代表者 杉山淳司(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 田鶴寿弥子(京都大学 生存圏研究所)、伊東隆夫(奈良文化財研究所)、メヒテル・メルツ(東アジア文明研究センター、フランス)、Hwang Sung Wook (京都大学生存圏研究所)、小林加代子(京都大学 農学研究科)、高妻洋成(奈良文化財研究所)

我が国の適所適材の用材観や伝統的木製品は、アジア域の相互的文化交流の歴史によって培われた賜物であり、それらの知識なしに、我が国特有の木の文化を理解することは不可能である。本研究では、東アジア(中国、韓国、日本)との国際共同研究として、貴重な木製品や建造物などの樹種識別ならびに学術的研究を実施することを主課題とする。
本年度は、中国・日本の古代の木彫像を多数所蔵しているアメリカ合衆国ボストン美術館・クリーブランド美術館へ田鶴が秋に赴き、試料の採取および樹種識別調査を行った。現在、伊東隆夫京大名誉教授(奈文研)、メヒテル・メルツ博士(東アジア文明研究センター(フランス))、田鶴寿弥子(京大生存研)、杉山淳司(同左)により、樹種同定を進め論文執筆中である。2019年度行ったフィラデルフィア美術館の調査では中国の木彫像については、Tilia sp., Paulownia sp., Salix sp., Lauraceae,.などが、日本の木彫像についてはTorreya nuciferaなどの利用が判明したが、今回ボストン美術館のデータからは、日本の木彫像についてChamaecypris obtusaの多用が目立った。これらの資料ならびに樹種識別情報は、我々日本の歴史ならびに東アジア地域の宗教上の繋がりを知る上で貴重な情報である。今後もデータベースの拡充にむけて尽力したい。来年度もアメリカ国内、MOU締結済みの国立台湾歴史博物館、新たにヨーロッパの複数の博物館や美術館に保管されている木彫像の樹種調査をすすめる予定である。また、継続して勧めている日本国内の茶室建築における樹種調査では、国宝如庵、裏千家今日庵、管田庵をはじめとした複数の茶室調査を終了しており、現在論文および報告書を投稿予定である。

成果発表

  1. 田鶴寿弥子, 杉山淳司, 山下立, 滋賀県地域における狛犬の樹種調査 -近江の狛犬 基礎資料集成(稿4・木造狛犬(樹種同定作品)篇)-, 安土城考古博物館紀要, 26・27号合併号, 1-24, 2020
  2. Yusuke Kita, Suyako Tazuru, Junji Sugiyama, Two-dimensional microfibril angle mapping via polarization microscopy for wood classification, IOP Conf. Series: Earth and Environmental Science, 012028, 415, 2020/02
  3. Suyako Tazuru, Junji Sugiyama, Wood identification of Japanese Shinto deity statues in Matsunoo-taisha Shrine in Kyoto by synchrotron X-ray microtomography and conventional microscopy methods. Journal of Wood Science, 65, 2019.
  4. 田鶴寿弥子, 杉山淳司, 重要文化財願興寺本堂保存修理工事における用材調査, 生存圏研究, 15, 68-74, 2019.
  5. 田鶴寿弥子, 東アジアの木質文化財における用材観の解明, 月刊考古学ジャーナル, 733, 32-33, 2019.
  6. 田鶴寿弥子, メヒテル・メルツ, 伊東隆夫, 杉山淳司, フィラデルフィア美術館蔵の日本の神像における樹種識別調査例, SPring-8/SACLA 利用研究成果集, Vol. 7, No.2, 216-218, 2019.
  7. Suyako Tazuru, Junji Sugiyama, Wood selection of traditional tea ceremony rooms in Japan, The 4th Asia Research Node Symposium on Humanosphere science (The 407th Symposium on Sustainable Humanosphere),Nanjing, China, 2019/12.
  8. Suyako Tazuru, Junji Sugiyama, Wood selection of traditional tea ceremony rooms in japan, The 4th Asia Research Node Symposium on Humanosphere science (The 407th Symposium on Sustainable Humanosphere) , 2019/12.
  9. Suyako Tazuru, Wood identification of wooden statues by synchrotron X-ray micro tomography and conventional microscope method, Museum of Fine Arts Boston (USA), 2019/11. (invited presentation)

課題2 熱帯における年輪気候学

研究代表者 田鶴寿弥子(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 田上 高広(京都大学 理学研究科)、渡邊 裕美子(京都大学 理学研究科)、久持 亮(京都大学 理学研究科)、中島健志(京都大学 生存圏研究所)、大室 渉(京都大学 理学研究科)M2、杉山 淳司(京都大学 生存圏研究所)

インドネシア・環境森林省FOERDIAでの研究打ち合わせと情報収集: 2019年8月14~16日に、インドネシア科学院Bambang Subiyanto氏の紹介のもと、ジャカルタにある環境森林省FOERDIAを表敬訪問した。General DirectorのAgus Justianto氏、Bogor DirectorのDwi Sudharto氏、Kris Subiyanto氏、Ratih Damayanti氏とチーク試料収集にむけて意見交換し、現地情報の収集に努めた。ジャカルタとボゴールのFOERDIAに展示してある、350年ほどのチーク円盤は貴重なので、試料提供は難しいとのことであったが、ジャワ産チーク大径木について情報収集して頂けるようお願いし、快諾して頂いた。ジャワ産チークを用いた年輪気候学の共同研究に関して意見交換し、現地の課題と要請事項について詳細に情報収集した。後11月には技術協定締結に至った。
比叡山スギにおける年輪幅と同位体比変動: 京都・比叡山のスギの円盤試料について、年輪幅や水素・炭素・酸素同位体比を分析し、過去350年ほどの時系列変動データを得た。最終的には年輪内の局所組織構造が、年輪幅より正確な気象気候プロキシとなりうることを見出した。

成果発表

  1. Ohmuro, W., Watanabe, Y., Li, Z., Nakatsuka, T., Takeda, S. and Tagami, T., 2019. Basic research on paleoclimate reconstruction using teak tree-rings collected from Bago Mountains, Myanmar.  The 4th Asia Research Node Symposium on Humanosphere Science, Nanjing International Conference Hotel, China, December 26-27th, 2019.
  2. Watanabe, Y. and Tagami, T., 2019. Paleoclimate study based on tree-ring width and the isotopic geochemistry; case studies of Indonesia and Myanmar.  The 4th Asia Research Node Symposium on Humanosphere Science, Nanjing International Conference Hotel, China, December 26-27th, 2019.
  3. Feng Wang, Dominique Arseneault, Biao Pan, Qian Liao, Junji Sugiyama: Pre-1930 unstable relationship between climate and tree-ring width of Pinus taiwanensis hayata in southeastern China. Dendrochronologia, 57, 125629, 2019..
  4. 中島健志:古気候プロキシとしての年輪内局所構造の検討、京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修士論文 (2019)
  5. T Nakajima, Kobayashi K, Sugiyama J, Anatomical traits of Cryptomeria japonica tree rings studied by wavelet convolutional neural network, IOP Conf. Series: Earth and Environmental Science 415(012027) (2020)

課題3 伝統構造・未来住空間

代表者氏名:五十田 博(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:中川貴文、北守 顕久、Li Zherui(京都大学 生存圏研究所)、森 拓郎(広島大学 工学研究科)、小松 幸平(京都大学 生存圏研究所)、Que Zeli(中国 南京林業大学 材料科学与工程学院)、Min-Fu Hsu(台湾国立成功大学 建築学部)、Yu-Lin Chung(台湾国立成功大学 建築学部)、Yulianto P Prihatmaji(インドネシア イスラム大学 建築学部)

アジア域における伝統的な木造建築から、最新の中層木造建築までの種々の住環境的特徴や構造的性能を評価することにより「木づかい」の理解を深化させるとともに、その知見に立脚した新しい高性能木質素材を開発・利用することにより、安心安全な未来型木質住空間の創成を目指しています。
伝統構法技術に関して、断面の大きい木造軸組の構造耐力性能を正当に評価する道筋を見出すため、接合耐力を考慮に入れた垂れ壁付き独立柱の評価手法の検討に加え、差し鴨居のdiagonal effectを実験により検証し、理論式を作成し、妥当性を証明した。

成果発表

  1. ドットコーポレーション、京都大学生存圏研究所 国土交通省平成31年基準整備促進事業「差し鴨居接合部を有する垂れ壁の軸組の壁倍率に関する検討」令和2年3月

課題4 高性能木質素材

研究代表者 金山 公三(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 梅村 研二(京都大学 生存圏研究所)、田中 聡一(京都大学 生存圏研究所)、梶川 翔平(電気通信大学大学院 情報理工学研究科)、趙 中元 (南京林業大学)、張 敏  (浙江農林大学)、Ragil Widyorini(ガジャマダ大学 森林学部)、Sukma Surya Kusumah(インドネシア LIPI 生物材料研究センター)、Rahma Nur Komariah(ジャンビ大学 森林学部)

木質系材料の有効利用は、脱炭素化や地球温暖化に貢献する。それを促すためには木材の長寿命化が欠かせず、その方法として①リサイクル技術および②バルク材の高機能化が有効と考えられる。それぞれに対応して、①未利用材の木質材料化と天然系接着剤の開発、および②薬液含浸による耐久性向上技術の開発を進める。
最近は、世界的な森林面積の減少や脱炭素化に向けた社会動向を踏まえ、オイルパームの樹幹を原料に用いたパーティクルボードの研究開発を行っている。オイルパームの樹幹のうち、内側部分からパーティクルを調製し、リン酸アンモニウムを添加してパーティクルボードを試作した。その結果、寸法安定性に優れたボードが得られることを見出し、国際共著論文を出版した。現在、そのメカニズムについて詳細な検討を進めている。この他、中国やインドネシアとの共同研究について、先方の先生を招聘して研究を進めるとともに、論文投稿の打ち合わせを行った。また、学生の受け入れについても協議した。

成果発表

  1. Rahma Nur KOMARIAH, Takuji MIYAMOTO, Soichi TANAKA, Kurnia Wiji PRASETIYO, Firda Aulya SYAMANI, SUBYAKTO, Toshiaki UMEZAWA, Kozo KANAYAMA and Kenji UMEMURA: High-performance binderless particleboard from the inner part of oil palm trunk by addition of ammonium dihydrogen phosphate, Industrial Crops and Products, 141, 111761 (2019)

国際活動

ARNシンポジウムにおけるセッションオーガナイゼーション

2019年12月26, 27日に中国南京において開催された生存圏アジアリサーチノード会議において、関連する3つののセッションをオーガナイズした。 A new horizon of humanosphere science and humanityでは考古学や建築学と木材科学との学際的な研究成果が発表された。またWood information : climatology and Tree ring scienceでは、年輪(成長輪)情報から抽出される様々な情報について、気候学や考古学といった多方面からの研究成果が発表された。最後にTimber architecturesのセッションでは日本と中国の研究者から最新の研究成果が発表されるなど、生存圏科学の国際化の推進と国際連携の強化を進めることができた。

部局間学術交流協定

2019年11月22日インドネシア環境林業省森林研究開発イノベーション局林産物研究・開発センターとの間で、『次世代研究者のための科学研究情報資源としての木材標本の有効な利用に関する覚書』に調印した。本件を先導された本学名誉教授津田敏隆教授に謝意を表する。

平成30年度活動報告はこちらから

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