Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション5-3「日常生活における宇宙・大気・地上間の連関性」
令和元年度の活動

課題1 衛星測位システム(GNSS)を用いた大気圏の変動特性の解明

研究代表者:矢吹正教 (京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:津田敏隆、Noersomadi (京都大学 生存圏研究所)

本研究では、汎地球測位衛星システム(GNSS)の測位データを大気計測に用いる「GNSS気象学」に関する実証観測とデータ解析を通じて、降水過程や気候変動の理解に資する研究を推進する。令和元年度より、準天頂衛星(QZSS)対応受信機による赤道大気観測を開始した。また、滋賀県甲賀市信楽町と三重県伊賀市に展開したGNSS稠密観測網による水平分布計測と、信楽MU観測所に設置のラマンライダーによる鉛直分布観測を組み合わせた水蒸気空間分布の観測を実施した。

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成果発表

  1. Yabuki, M. et al., Spatial and temporal distribution of tropospheric water vapor observed by a Raman lidar and a GNSS receiver network over Shigaraki, Japan, Japan Geoscience Union Meeting 2019, May 26-30, 2019.
  2. Yabuki, M., et al., A Raman lidar with a deep ultraviolet laser for continuous water vapor profiling in the atmospheric boundary layer, The 29th International Laser Radar Conference (ILRC29)(Hefei, China,) June 24-28, 2019.

課題2 GPSを用いた電離圏3次元トモグラフィ

研究代表者:山本 衛(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:齊藤昭則(京都大学 大学院理学研究科)、斉藤 享(電子航法研究所) 

GPSは全世界における測位サービスとして定着している。GPSシステムは、周波数の違う2つの電波の伝搬の差から電離圏中の全電子数(Total Electron Consistent: TEC)が観測できる。我が国では国土地理院による電子基準点の観測網GEONETが利用でき、TEC 観測は電離圏の研究に広く用いられてきた。本課題では、理学研究科および電子航法研究所と共同して推進している、本研究は、電子密度の3次元分布を明らかにするトモグラフィ解析の高度化を目指す。リアルタイム・トモグラフィ解析を順調に継続する一方、GEONETの過去データを用いた大量解析にも取り組んできた。今年度は、イオノゾンデなど他の観測データを取り入れた異種データ混在のトモグラフィ解析手法の開発を行っており、初期的な結果を得るところまで進めることができた。台湾・韓国の研究者とも交流を継続中であり、両地域のGPS観測データを活用した解析の拡大にも取り組んでいる。最近では、GPS以外の衛星測位システム(総称名GNSS)からの信号も受信できる、GNSS受信機が現れ、極めて安価になりつつある。新しいGNSS受信機の活用についても研究を進めたい。

左図:GPS-TECトモグラフィの概念図、右図:3次元リアルタイム・トモグラフィ解析の例

成果発表

  1. S. Saito, et al., Real-time 3-D Ionospheric Tomography and Its Validation by the MU Radar, APRASC 2019, New Delhi, March 2019S.
  2. S. Saito, M. Yamamoto, A. Saito, and C.-H. Chen, Real-time 3-D ionospheric tomography over Japan with GNSS observations, URSI JRSM, Tokyo, Sep. 2019.
  3. Ssessanga Nicholas, Utilizing 4D-var technique to image South African regional ionosphere, 4th PSTEP International Symposium (PSTEP-4), Nagoya University, Jan 28-30, 2020.

課題3 日本の電力網を流れる地磁気誘導電流(GIC)計算モデルの開発

研究代表者:海老原祐輔(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:大村善治(京都大学生存圏研究所)、後藤忠徳(京都大学工学研究科)、中村紗都子(京都大学生存圏研究所)、亘慎一(情報通信研究機構)、菊池崇(名古屋大学名誉教授),田中高史(九州大学名誉教授)、藤田茂(気象大学校)

太陽でコロナ質量放出現象(CME) が起こると地球では磁気嵐が発生することがある。このとき宇宙空間を流れる大電流によって送電網に地磁気誘導電流(GIC)と呼ばれる電流が流れる。日本の送電網を流れるGICを物理的に正しくモデル化するため、宇宙空間を流れる電流が日本列島に誘導する電場(GIE)を有限差分時間領域(FDTD)法によって解いた。アメリカ海洋大気局(NOAA)の標高モデルと堆積層の厚さモデルに基づき、日本列島直下の電気伝導度分布(地殻比抵抗構造)を陸地、海水、堆積層に分類し、各々について電気伝導度を仮定した。日本は海に囲まれた島国であるという地理的特徴に加え、限られた大都市に人口が集中している(つまり変電所等が偏在している)ため、一様な電離圏電流を仮定してもGIC の流れ方は複雑になることが分かった。また、500 kV送電網に加え、187 kV以上の電圧階級を持つ全国の送電網をモデル化し、一様地電場を仮定し、GICの流れ方を調査した。高緯度地方を流れるGICの主要な原因となるのはオーロラ・サブストームに伴って流れるオーロラジェット電流である。一方、日本のような中低緯度地方を流れるGICの主要な原因となるのは赤道環電流である。それぞれの電流に付随するエネルギーの流れを電磁流体シミュレーションを用いて明らかにした。

成果発表

  1. Ebihara, Y., Mechanism of auroral breakup, Japanese Journal of Multiphase Flow, 33, 3, 267-274, doi:10.3811/jjmf.2019.T012, 2019.
  2. Ebihara, Y., and T. Tanaka, Evolution of auroral substorm as viewed from MHD simulations: Dynamics, energy transfer and energy conversion, Reviews of Modern Plasma Physics, 4:2, doi:10.1007/s41614-019-0037-x, 2020.
  3. Ebihara, Y., L. C. Lee, and T. Tanaka, Energy flow in the Region 2 field-aligned current region under queai-steady condition, J. Geophys. Res. Space Res., 125, 2, e2019JA026998, doi:10.1029/2019JA026998, 2020.

課題4 MUレーダー・小型無人航空機(UAV)観測による大気乱流特性の国際共同研究

研究代表者:橋口浩之(京都大学生存圏研究所)
共同研究者:山本衛、矢吹正教(京都大学生存圏研究所)、Lakshmi Kantha, Dale Lawrence (University of Colorado, USA)、Hubert Luce (Toulon-Var Univ., France), Richard Wilson (LATMOS, CNRS, France)

乱流混合は熱や物質の鉛直輸送に寄与する重要なプロセスであり、これまで、MUレーダーを用いたイメージング(映像)観測により大気乱流の発生・発達・形成メカニズムや、メソ~総観規模現象との関連が研究されてきた。近年の小型無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle; UAV)の進歩により、遠隔操作による上空の計測が従来よりも容易に行えるようになりつつあり、日米仏の国際共同研究により、2015~2017年の6月にコロラド大で開発された気象センサーを搭載した小型UAVとMUレーダーとの同時観測実験(ShUREX(Shigaraki, UAV-Radar Experiment)キャンペーン)を実施した。図はUAVが強い乱流中を水平飛行した時に得られた気温の周波数スペクトルを示す。-5/3乗則に従うスペクトルが得られており、風速スペクトルでも同様に-5/3乗則に従っていた。

 

UAV水平飛行で得られた気温の周波数スペクトル。赤線は傾き-5/3乗を示す。[Luce et al., 2019]

成果発表

  1. L. Kantha, H. Luce, and H. Hashiguchi, Mid-level Cloud-base Turbulence: Radar Observations and Models, J. Geophys. Res.: Atmosphere, 124, doi:10.1029/2018JD029479, 2019.
  2. L. Kantha, H. Luce, H. Hashiguchi, and A. Doddi, Atmospheric structures in the troposphere as revealed by high-resolution backscatter images from MU radar operating in range-imaging mode, Progress in Earth and Planetary Science, 6:32, doi:10.1186/s40645-019-0274-1, 2019.
  3. H. Luce, L. Kantha, H. Hashiguchi, and D. Lawrence, Estimation of Turbulence Parameters in the Lower Troposphere from ShUREX (2016-2017) UAV Data, Atmosphere, 10, 384, doi:10.3390/atmos10070384, 2019.

課題5 宇宙からの地球大気環境モニタリング

代表者氏名:塩谷雅人(京都大学生存圏研究所)
共同研究者:斉藤昭則(京都大学理学研究科)

地球を周回する衛星からのグローバルな大気観測は,地球環境変動を理解するために必須の情報源となっている.社会的あるいは科学的な要求を踏まえて,下層大気の変動に対して敏感な高層大気領域の熱的・力学的構造,さらには大気微量成分分布を高精度でモニタリングするための装置の検討をおこない,次世代の観測手段を提案する.
人の生存環境にとって,中層大気(成層圏+中間圏)領域の果たす役割は大きく,その熱的・力学的構造,さらに大気微量成分分布は人間活動による擾乱の影響を受けている.この大気領域については,2009-2010年にかけて国際宇宙ステーションに搭載された観測装置JEM/SMILESが,世界で始めて4K冷却による超高感度サブミリ波大気観測をおこなった.この技術を基礎として,次世代の大気環境モニタリングをおこなうにはどのような観測が必要なのかを検討する.

成果発表

  1. Shiotani, M., et al. (2019). A Proposal for Satellite Observation of the Whole Atmosphere – Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder (Smiles-2). Presented at the IGARSS 2019 – 2019 IEEE International Geoscience and Remote Sensing Symposium. https://doi.org/10.1109/igarss.2019.8898423
  2. Baron, P., et al. (2020). Potential for the measurement of mesosphere and lower thermosphere (MLT) wind, temperature, density and geomagnetic field with Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder 2 (SMILES-2). Atmospheric Measurement Techniques, 13(1), 219–237. https://doi.org/10.5194/amt-13-219-2020

 

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