Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション1「環境診断・循環機能制御」
令和元年度の活動

課題1 大気微量成分を介した生物圏―大気圏相互作用

研究代表者 高橋けんし(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 小杉緑子(京都大学 農学研究科)、坂部綾香(大阪府立大)、伊藤雅之(兵庫県立大)、岩田拓記(信州大)

森林圏を含む陸域生態系と大気圏との間で行われる物質交換は、量こそ極めて僅かであるが、種類は非常に多彩である。それらには温室効果やエアロゾル生成に関わる物質が含まれているため、物質交換プロセスの解明はグローバルな気候変動の正確な将来予測にとって必要不可欠である。我々は、レーザー分光法と微気象学的な手法や自動開閉チャンバーを組み合わせた新しい手法により、生態系スケールからプロットスケールに亘って、様々な森林環境における温室効果気体のフラックスを連続的に観測している。

成果発表

  1. 高橋 けんし, 坂部綾香, 伊藤雅之, 岩田拓記, 安宅未央子, 小杉緑子, 長光路レーザー吸収分光による大気微量成分の超高感度検出とフラックス測定への応用, 2019年度日本分光学会年次講演会.
  2. 川井英美, 高橋けんし, 坂部綾香, 小杉緑子, 林床土壌における一酸化炭素フラックスの連続測定, 日本農業気象学会2020年大会

課題2 根圏の代謝物に関する研究

研究代表者 杉山暁史(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 濱本昌一郎(東京大学 農学生命科学研究科)、二瓶直登(東京大学 農学生命科学研究科)

植物と根圏微生物の相互作用を分子レベルで解明することを目指しており、マメ科植物と根粒菌の共生に関与する輸送体遺伝子の解析や、根圏微生物叢との相互作用に関与する植物代謝物の機能と動態の解析を進めている。今年度はダイズ根から分泌される主要なイソフラボンであるダイゼインがダイズ根圏を形成することを明らかにした。

    M1図.ダイズ根圏にイソフラボンが分泌される

成果発表

  1. Okutani F., Hamamoto S., Aoki Y., Nakayasu M., Nihei N., Nishimura T., Yazaki K., Sugiyama A. (2020) Rhizosphere modelling reveals spatiotemporal distribution of daidzein shaping soybean rhizosphere bacterial community. Plant, Cell & Environment 43(4), 1036-1046.

課題3 対流圏大気構造のMUレーダーイメージング観測

研究代表者 橋口浩之(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 Lakshmi Kantha・Abhiram Doddi(University of Colorado, USA)、Hubert Luce(Université de Toulon, France)

2015~2017年の夏季に実施されたShigaraki UAV Radar Experiment (ShUREX)キャンペーンにおいて、MUレーダーはレンジイメージングモードで長期連続運用された。Capon法により得られた高分解能のエコー強度画像は、対流圏の様々な大気構造の詳細を描き出した。図は2016年6月4日12~18時にMUレーダーレンジイメージングモードで得られたエコー強度の時間・高度変化である。14時30~50分の高度5km程度に大振幅のKelvin-Helmholtz波が存在することが分かる。

MUレーダーによるエコー強度の時間・高度変化 [Kantha et al., 2019]

成果発表

  1. L. Kantha, H. Luce, H. Hashiguchi, and A. Doddi, Atmospheric structures in the troposphere as revealed by high-resolution backscatter images from MU radar operating in range-imaging mode, Progress in Earth and Planetary Science, 6:32, doi:10.1186/s40645-019-0274-1, 2019.

課題4 一次組織の重力応答における細胞形状の変化

研究代表者 馬場啓一(京都大学 生存圏研究所)                       
共同研究者 土井隆雄(京都大学 宇宙総合ユニット)、辻祥子(京都大学 生態学研究センター)、松永菜々子(京都大学 生存圏研究所)、渡邉博之(玉川大学 農学部) 

植物の茎頂直下における一次組織では、重力の方向変化に応答して茎を屈曲させる。屈曲は、その外側と内側の生長量を変化させて生じると言われている。屈曲した形状が維持される組織と伸長成長している組織の位置関係や、屈曲部位での細胞形状の変化を観察することで伸長と屈曲の関係を明らかにする。シロイヌナズナ花茎をモデルに用いて、重力屈性が生じる組織の位置と伸長成長量の変化の関係を画像解析ソフトを用いて正確に計測したところ、屈曲は伸長成長が止まる組織で生じていることがわかった。また屈性した領域の表皮細胞は、伸長域の表皮細胞とは異なる形状変化を示していたことがわかった。

画像上で屈曲部に円を内接させて屈曲域と ピークを求める

成果発表

  1. 日本宇宙生物科学会第33回大会(千葉), 2019年9月21-22日

課題5 福島県における原発事故後の長期支援研究

研究代表者 上田義勝(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 杉山暁史(京都大学 生存圏研究所)、 鈴木史朗(京都大学 生存圏研究所)、二瓶直登(東京大学 農学生命科学研究科)、Rattanaporn Norarat (Rajamangala University of Technology Lanna, Chiang Rai, Thailand) 、谷垣実 (京都大学 複合原子力科学研究所)

福島県現地での環境放射能解析と、農耕地周辺での対策技術研究に重点をおきながら、歩行サーベイによる環境放射能のリアルタイム測定を行う事で、特に農耕地周辺の環境放射能を精査している。また、同時に農耕地内部とその周辺の土壌及び水のサンプリングを行い、環境放射能の経時的な変化を追跡する。今年度も福島県飯舘村における歩行サーベイ調査を今年度も継続して行った。また、タイ・ラジャマンガラ工科大学のRattanaporn Norarat助教を招聘した。タイとの国際共同研究テーマについて議論しつつ、福島県での支援研究を行った。

成果発表

  1. R. Norarat, V. Thonglek, Y. Ueda, Ultrafine bubbles (UFB) stability and its filtering effect, International Journal of Plasma Environmental Science and Technology, vol. 14, accepted
  2. Ueda, Y., Nihei, N., Tanigaki, M., Norarat, R., Radioactive Cesium Distribution Measurement by Using KURAMA in Iitate Village, Fukushima, the International Workshop on Environmental Engineering 2019, Okinawa, 2019.6.27

課題6 ライダーによる大気微量成分の計測

研究代表者 矢吹正教(京都大学 生存圏研究所)

大気物質からのミー散乱やラマン散乱、蛍光を検出して大気微量成分(エアロゾル、水蒸気、気温など)を精測するライダーを開発し、大気環境変動の解明や気象予測精度の向上に必要となるデータを取得する。令和元年度は、大気圏の気象・環境を監視する水蒸気・オゾンラマンライダーの検証実験、および気温ラマンライダー分光検出器の開発を推進した。また、エアロゾルや植生等からの蛍光をリモートセンシングするための深紫外波長を光源とする蛍光ライダーの初期実験を行った。

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成果発表

  1. Yabuki, M., Y. Kawano, Y. Tottori, M. Tsukamoto, E. Takeuchi, T. Hasegawa, and T. Tsuda, A Raman lidar with a deep ultraviolet laser for continuous water vapor profiling in the atmospheric boundary layer , The 29th International Laser Radar Conference (ILRC29)(Hefei, China,) June 24-28, 2019.

課題7 熱帯荒廃草原の植生回復とバイオマスエネルギー生産に向けたイネ科植物の育種

研究代表者 梅澤俊明(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 飛松祐基、宮本託志、高田理江、武田ゆり、山村正臣、鈴木史朗(京都大学 生存圏研究所)、水野広祐(京都大学 東南アジア地域研究研究所)、小西哲之(京都大学 エネルギー理工学研究所)、坂本正弘(京都大学 大学院農学研究科)、サトヤ ヌグロホ(インドネシア科学院)、サフェンドリ コマラ ラガムスタリ(インドネシア政策大学院大学)

東南アジアの天然林伐採跡地に成立する荒廃草原の適切な管理と植生回復は、歴史的負の遺産の補償と環境保全および資源生産・利用に関わる課題であり、これら熱帯荒廃草原の植生回復とバイオマスエネルギー生産を目指した研究を進めてきた。本ミッションでは、本年度より新たに上記研究の展開として、太陽光発電とバイオマス生産を連携させた炭素隔離に適するバイオマス植物の育種を進めている。特に、高炭素含量の高成長性イネ科バイオマス植物の育種を進めている。

成果発表

  1. OsMYB108 loss-of-function enriches p-coumaroylated and tricin lignin units in rice cell walls, T. Miyamoto, R. Takada, Y. Tobimatsu, Y. Takeda, S. Suzuki, M. Yamamura, K. Osakabe, Y. Osakabe, M. Sakamoto, T. Umezawa, Plant J., 98, 975-987 (2019)
  2. Altered lignocellulose chemical structure and molecular assembly in CINNAMYL ALCOHOL DEHYDROGENASE-deficient rice, A. F. Martin, Y. Tobimatsu, R. Kusumi, N. Matsumoto, T. Miyamoto, P. Y. Lam, M. Yamamura, T. Koshiba, M. Sakamoto, T. Umezawa Sci Rep., 9, 17153 (2019)

 

課題8 昆虫、微生物、植物の相互作用に関する研究

研究代表者 柳川 綾 (京都大学 生存圏研究所)

有機農法促進・改良に関する課題を立ち上げた。農業生態系における、植物、昆虫、微生物間に認められる相互作用を調査するため、昆虫病原性糸状菌を土中に混合し、植物の生長や土壌中微生物活性にどのような影響があるか調査するための試験を開始した。

有機農法試験のために玄米上に培養した昆虫病原性糸状菌の土壌投入

平成30年度活動報告はこちらから

 

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