Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション5-4「木づかいの科学による社会貢献(木造建築、木質住環境、木質資源・データベース、木づかいの変遷)」 平成30年度の活動

受賞

2019年度日本農学賞                    

【受賞者】杉山淳司(京都大学生存圏研究所教授)
【授与組織名】一般社団法人日本農学会
【受賞年月】2019年
【受賞タイトル】 「セルロースから木材に至る層階状構造とその多様性に関する研究」

第56回読売農学賞

【受賞者】杉山淳司(京都大学生存圏研究所教授)
【授与組織名】読売新聞社
【受賞年月】2019年
【受賞タイトル】 「セルロースから木材に至る層階状構造とその多様性に関する研究」

平成30年度耐震改修優秀建築・貢献者表彰(第8回) 

【受賞者】京都大学生存圏研究所五十田研究室
【授与組織名】日本建築防災協会
【受賞年月】2019年2月
【受賞タイトル】 「志摩観光ホテル ザ クラシック、ザ クラブ 耐震改修優秀建築賞」

 課題1 アジアにおける木材情報の調査と保存

研究代表者 杉山淳司(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 田鶴寿弥子(京都大学 生存圏研究所)、伊東隆夫(奈良文化財研究所)、メヒテル・メルツ(東アジア文明研究センター、フランス)、Hwang Sung Wook (京都大学生存圏研究所)、小林加代子(東京大学 農学部)、高妻洋成(奈良文化財研究所)

我が国の適所適材の用材観や伝統的木製品は、アジア域の相互的文化交流の歴史によって培われた賜物であり、それらの知識なしに、我が国特有の木の文化を理解することは不可能である。本研究では、東アジア(中国、韓国、日本)における貴重な木製品や建造物などの樹種識別を実施することとともに、東南アジアの文化財が多く保管されている海外の機関との連携により、木彫像をはじめとした文化財における国際共同研究を実施した。
中国・日本の古代の木彫像を多数所蔵しているアメリカ合衆国のフィラデルフィア美術館をはじめとした機関の学芸員およびコンサベーターとの協力体制を構築し、東アジアに起源をもつ木彫像の樹種調査を行った。調査には光学顕微鏡およびSPring-8の放射光マイクロCTを活用した。その結果、中国および日本における用材観について様々な知見を獲得できた。これらの試料ならびに樹種識別情報は、我々日本の歴史ならびに東アジア地域の宗教上の繋がりを知る上で貴重な情報である。一部の成果は、書籍ART OF CHINA Highlights from the Philadelphia Museum of Artにて掲載済みであるほか、学会にて発表を行った。また、継続して勧めている日本国内の茶室建築における樹種調査では、島根県管田庵をはじめとした複数の茶室調査を進めており、現在論文および報告書を執筆中である。

成果発表

  1. 田鶴寿弥子, 建造物保存修理工事における部材の樹種調査の現状, 建築史学, 72, 2019.
  2. 田鶴寿弥子, 杉山淳司, 熊本地震により倒壊した熊本市洋学校教師館における樹種調査,木材学会誌, 65, 1, 33-38, 2019.
  3. 田鶴寿弥子, メヒテル メルツ, 伊東隆夫, 杉山淳司, フィラデルフィア美術館所蔵の東アジア地域の木彫像群における放射光マイクロCTを活用した用材調査, 日本木材学会函館大会にて発表、2019/03.
  4. 田鶴寿弥子, 反町始, 杉山淳司, 天野山金剛寺 木造大日如来坐像・木造不動明王坐像・木造降三世明王坐像の樹種同定報告 美術院修理報告書(仮題)印刷中
  5. 田鶴寿弥子, Mechtild Mertz, 伊東隆夫,杉山淳司, フィラデルフィア美術館所蔵の東アジア地域の木彫像群における放射光マイクロCTを活用した用材調査, 日本木材学会函館大会, 2019年3月.
  6. Suyako Tazuru, Junji Sugiyama, Wood identification of traditional tea ceremony room, CKJ seminar 2018 in Nanjing, China, 2018/10.
  7. Yusuke Kita, Suyako Tazuru, Junji Sugiyama, Multilateral analyses of anatomically similar Japanese cypress wood in historical and traditional buildings              CKJ seminar 2018 in Nanjing, China, 2018/10.

課題2 熱帯における年輪気候学

研究代表者 田鶴寿弥子(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 田上 高広(京都大学 理学研究科)、渡邊 裕美子(京都大学 理学研究科)、久持 亮(京都大学 理学研究科)D5、中島健志(京都大学 生存圏研究所)M2、大室 渉(京都大学 理学研究科)M2、杉山 淳司(京都大学 生存圏研究所)

インドネシアやミャンマーをはじめとした熱帯域における気候変動を解明する一つの手がかりとして樹木成長輪に着目し、成長輪の幅や同位体比分析による年輪気候学の基礎研究を推進した。ミャンマー・バゴー山地における現地調査と情報収集: 2018年11月19~27日に、アジア・アフリカ地域研究研究科の竹田教授とイエツェン農業大学の大学院生3名による協力のもと、ミャンマー・バゴー山地において、チーク試料収集にむけた現地情報の収集を行った。バゴー山地のチーク植林地において、チーク切株の直径や年輪数などを計測した。また、バゴー山地の西部に位置する、ピイにおけるチーク植林地を訪問し、チークの大径木に関する情報の収集に努めた。バゴー山地における現地調査後、首都ネピドー近郊にあるイエツェン農業大学を表敬訪問した。ミャンマー産チークを用いた年輪気候学における共同研究に関して意見交換し、ミャンマー産チーク古材や他の研究者の動向などについて情報収集した。
また、国産スギの年輪解析にAIを活用するなど、様々な切り口からの情報の蓄積を試みている。

成果発表

  1. Hisamochi, R., Watanabe, Y., Sano, M., Nakatsuka, T., Kurita, N., Matsuo-Ueda, M., Yamamoto, H., Tazuru, S., Sugiyama, J., Subiyanto, B., Marsoem, S.N., Tsuda, T. and Tagami, T., 2018.  Cellulose oxygen isotopic composition of teak (Tectona grandis) collected from Java Island: a tool for dendrochronological and dendroclimatological analysis.  Dendrochronologia 52, 80-86.
  2. 新井貴之・渡邊裕美子・久持亮・杉山淳司・松尾美幸・山本浩之・津田敏隆・田上高広, 2018.インドネシア島チークを用いた年輪気候学における年輪幅測定法の検証.日本地球惑星科学連合2018年大会,幕張メッセ国際会議場(千葉),5月20日-5月24日.
  3. 大室渉・渡邊裕美子・田上高広・竹田晋也, 2018.ミャンマー・バゴー山地産チーク年輪幅と気象データとの比較.日本地球惑星科学連合2018年大会,幕張メッセ国際会議場(千葉),5月20日-5月24日.
  4. Takeshi Nakajima, Kayoko Kobayashi, Junji Sugiyama, Data mining in tree-ring of Cryptomeria japonica: an approach using wavelet convolutional neural network, 13rd Joint Seminar of China-Korea-Japan on Wood Quality and Utilization, 2018

課題3 伝統構造・未来住空間

代表者氏名:五十田 博(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:北守 顕久(京都大学 生存圏研究所)、森 拓郎(広島大学 工学研究科)、小松 幸平(京都大学 生存圏研究所)、Que Zeli(中国 南京林業大学 材料科学与工程学院)、Min-Fu Hsu(台湾国立成功大学 建築学部)、Yu-Lin Chung(台湾国立成功大学 建築学部)、Yulianto P Prihatmaji(インドネシア イスラム大学 建築学部)

アジア域における伝統的な木造建築から、最新の中層木造建築までの種々の住環境的特徴や構造的性能を評価することにより「木づかい」の理解を深化させるとともに、その知見に立脚した新しい高性能木質素材を開発・利用することにより、安心安全な未来型木質住空間の創成を目指しています。
伝統構法技術に関して、断面の大きい木造軸組の構造耐力性能を正当に評価する道筋を見出すため、接合耐力を考慮に入れた垂れ壁付き独立柱の評価手法の検討や、耐久性や剛性を高めた掘立柱構法の技術的改良をおこなっている。また、木造文化財の維持保全のため、木材部材の内部欠陥を探査する超音波測定手法の改良を検討している。後者は中国の文化財を対象とし、南京林業大学との共同研究として学生を受け入れて基礎研究を実施した。さらに、めり込みと言った伝統構法の根幹をなす木材物性を現代構法に取り入れるため、CLTのめり込み性能を評価する基礎研究を推進している。

成果発表

  1. Rui Li, Hiroshi Isoda, Akihisa Kitamori : Partial Compression Properties of Glulam against CLT block loading, 第69回日本木材学会大会要旨集,函館, 2018.3
  2. 安部総一、北守顕久、五十田博: CLT 床パネルの外層ラミナの方向と余長の有無がめり込み強度値に与える影響, 第69回日本木材学会大会要旨集,函館, 2018.3
  3. Yifan Liu, Zeli Que, Qicheng Teng, Akihisa Kitamori:Ultrasonic Nondestructive Testing on The Lintels of The Main Hall of Ancestor’s Monastery, 第69回日本木材学会大会要旨集,函館, 2018.3山本寛人,五十田博,楠 浩一、加速度記録をウェーブレット変換して求めたCLT工法建築物の層間変位の推定精度、日本木材学会大会、2018年3月                   

課題4 高性能木質素材

研究代表者 金山 公三(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 梅村 研二(京都大学 生存圏研究所)、田中 聡一(京都大学 生存圏研究所)、梶川 翔平(電気通信大学大学院 情報理工学研究科)、趙 中元 (南京林業大学)、張 敏  (浙江農林大学)、Ragil Widyorini(ガジャマダ大学 森林学部)、Sukma Surya Kusumah(インドネシア LIPI 生物材料研究センター)、Rahma Nur Komariah(ジャンビ大学 森林学部)

木質系材料の有効利用は、資源枯渇および地球温暖化に貢献する。それを促すためには木材の長寿命化が欠かせない。長寿命化には①リサイクル技術および②バルク材の高機能化が有効と考えられている。それぞれに対応して、①木質材料用の天然系接着剤の開発、および②薬液含浸の高度化を進める。
世界的な森林面積の減少や低炭素化社会への移行を考え、オイルパームの樹幹を原料に用いたパーティクルボードの研究開発を行っている。オイルパームの樹幹のうち、内側部分からパーティクルを調製し、リン酸アンモニウムとスクロースを接着剤としてパーティクルボードを試作した。その結果、曲げ性能と寸法安定性に優れたボードが得られることを見出し、現在詳細な検討を進めている。この他、中国やインドネシアとの共同研究について議論を進めるとともに、論文投稿の打ち合わせや学生の受け入れについても協議した。

成果発表

  1. ラーマ・ヌル・コマリヤ、梅村研二、田中聡一、金山公三:第56回一般社団法人日本接着学会年次大会、東京、6/14-15(2018)
  2. Rahma Nur Komariah, Kenji Umemura, Soichi Tanaka, Firda Aulya Syamani, Kurnia Wiji Prastiyo, Subyakto, Kozo Kanayama: The 14th Pacific Rim Bio-Based Composite Symposium, Oct. 29-31, Makassar, Indonesia (2018)

 

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