Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション5-3「日常生活における宇宙・大気・地上間の連関性」
平成30年度の活動

課題1 スペースデブリの観測技術と軌道モデル構築に関する研究

研究代表者:小嶋 浩嗣(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:山本 衛、橋口 浩之、鳥居拓哉、平田拓仁(京都大学大学院工学研究科)

測位・観測・通信等の生活情報のための宇宙インフラや国際宇宙ステーションの維持と利用を図るために、これらに衝突して破壊する恐れのあるスペースデブリに関して、その観測、軌道進化に対する工学研究を推進した。特に観測では大型の大気レーダーであるMUレーダーを用いることにより、スペースデブリ専用レーダーに加えて大気用・気象用レーダーを用いたスペースデブリの捕捉手法を確立することができる。これまでの研究により、MUレーダーを用いたスペースデブリの観測計画の立案手法が確立され、本年度は、実際に取得されたデブリからのエコーに対し、SRDI法とRCS法を組み合わせて適用し、レーダーの波長よりも小さい特定のデブリに対し、その回転状態の把握とその回転半径・散乱断面積の導出に成功した。また、軌道推定手法においても、Gauss-Newton法を用いた軌道推定手法を適用し、数十秒という短い観測時間ながら、デブリの軌道面の推定誤差を1度以下で推定することに成功した。そして、エコー強度のデブリ回転変動とその特徴抽出、複数アンテナによるエコー強度差の利用による観測精度の向上などにより、デブリの詳細な形状情報の取得、より具体的な回転情報の取得、各軌道要素導出による軌道推定の精度の向上を行った。

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成果発表

  1. Takuya Torii, Hiroshi Yamakawa, Hiroyuki Hashiguchi, Mamoru Yamamoto , Orbit Determination of Unidentified Space Debris by Using MU Rader, 3rd ARN Symposium,Taichung, 2018.
  2. Takuto Ueno, Hiroshi Yamakawa, Hiroyuki Hashiguchi, Mamoru Yamamoto, ,Study on 3D Simulation for Shape Estimation of Space Debris Using MU Radar, 3rd ARN Symposium,Taichung, 2018.
  3. 鳥居拓哉, 山川宏, 橋口浩之, 山本衛 , Muレーダーを用いた観測による未知スペースデブリの軌道推定手法に関する研究, 第62回宇宙科学連合講演会, 久留米, 2018.
  4. 上埜拓仁, 山川宏, 橋口浩之, 山本衛 , MUレーダーを用いたスペースデブリの3次元形状推定に関する研究, 第62回宇宙科学連合講演会, 久留米, 2018.

課題2 衛星測位システム(GNSS)を用いた大気圏の変動特性の解明

研究代表者:矢吹正教 (京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:津田敏隆、Noersomadi (京都大学 生存圏研究所)

本研究では、汎地球測位衛星システム(GNSS)の測位データを大気計測に用いる「GNSS気象学」に関する実証観測とデータ解析を通じて、降水過程や気候変動の理解に資する研究を推進する。平成30年度は、GNSS電波掩蔽観測による気温プロファイルを用いた熱帯対流圏界面付近の大気安定度微細構造の変動特性の研究、および可降水量の水平分布計測を目的として京都府宇治市周辺と滋賀県甲賀市信楽町周辺に展開したGNSS稠密観測網の観測データの解析を行った。

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成果発表

  1. Noersomadi, T. Tsuda, and M. Fujiwara, Characteristics of the tropical tropopause inversion layer using high-resolution temperature profiles retrieved from COSMIC GNSS Radio Occultation, Atmos. Chem. Phys. Discuss., https://doi.org/10.5194/acp-2018-1182, in review, 2018.
  2. Oigawa M., T. Tsuda, H. Seko, Y. Shoji, E. Realini, Data assimilation experiment of precipitable water vapor observed by a hyper-dense GNSS receiver network using a nested NHM-LETKF system, Earth Planets Space, 70:74. https://doi.org/10.1186/ s40623-018-0851-3, 2018.

課題3 GPSを用いた電離圏3次元トモグラフィ

研究代表者:山本 衛(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:齊藤 昭則(京都大学 大学院理学研究科)、斉藤 享(電子航法研究所) 

GPSは全世界における測位サービスとして定着している。GPSシステムは、周波数の違う2つの電波の伝搬の差から電離圏中の全電子数(Total Electron Consistent: TEC)が観測できる。我が国では国土地理院による電子基準点の観測網GEONETが利用でき、TEC 観測は電離圏の研究に広く用いられてきた。本課題では、理学研究科および電子航法研究所と共同して推進している、電子密度の3次元分布を明らかにするトモグラフィ解析の高度化を目指す。今年度は、リアルタイム・トモグラフィー解析を順調に継続する一方、GEONETの過去データを用いた大量解析に取り組んだ。生存圏研究所のAKDK全国・国際共同利用の下で、スーパーコンピューターによる並列処理を開発した。これによって、全国200点のデータに基づく15分毎の3次元トモグラフィ解析について、1年間分を約30時間で実行することに成功した。現在から2002年までの解析を終えており、今年度末までにはGEONETが発足した1996年までの到達を目指している。また解析結果の品質を確かめるため、イオノゾンデやGPS掩蔽観測との統計的な比較を行った。台湾・韓国の研究者とも交流を継続中であり、両地域のGPS観測データを活用した解析の拡大にも取り組んだ。結果として、解析領域の周辺における解析結果の品質向上が確認されている。

課題4 日本の電力網を流れる地磁気誘導電流(GIC)計算モデルの開発

研究代表者:海老原祐輔(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者:大村善治(京都大学生存圏研究所)、後藤忠徳(京都大学工学研究科)、中村紗都子(京都大学生存圏研究所)、亘慎一(情報通信研究機構)、菊池崇(名古屋大学名誉教授),田中高史(九州大学名誉教授)、藤田茂(気象大学校)

太陽でコロナ質量放出現象(CME) が起こると地球では磁気嵐が発生することがある。このとき宇宙空間を流れる大電流によって送電網に地磁気誘導電流(GIC)と呼ばれる電流が流れる。日本の送電網を流れるGICを物理的に正しくモデル化するため、宇宙空間を流れる電流が日本列島に誘導する電場(GIE)を有限差分時間領域(FDTD)法によって解いた。アメリカ海洋大気局(NOAA)の標高モデルと堆積層の厚さモデルに基づき、日本列島直下の電気伝導度分布(地殻比抵抗構造)を陸地、海水、堆積層に分類し、各々について電気伝導度を仮定した。日本は海に囲まれた島国であるという地理的特徴に加え、限られた大都市に人口が集中している(つまり変電所等が偏在している)ため、一様な電離圏電流を仮定してもGIC の流れ方は複雑になることが分かった。また、500 kV送電網に加え、187 kV以上の電圧階級を持つ全国の送電網をモデル化し、一様地電場を仮定し、GICの流れ方を調査した。

成果発表

  1. Nakamura, S., Y. Ebihara, S. Fujita, T. Goto, N. Yamada, S. Watari and Y. Omura, Time domain simulation of geomagnetically induced current (GIC) flowing in 500 kV power grid in Japan including a three-dimensional ground inhomogeneity, Space Weather, 16, 1946-1959, doi:10.1029/2018SW002004, 2018.

課題5 MUレーダー・小型無人航空機(UAV)観測による大気乱流特性の国際共同研究

研究代表者:橋口浩之(京都大学生存圏研究所)
共同研究者:山本衛、矢吹正教(京都大学生存圏研究所)、Lakshmi Kantha, Dale Lawrence (University of Colorado, USA)、Hubert Luce (Toulon-Var Univ., France), Richard Wilson (LATMOS, CNRS, France)

ShUREXキャンペーンで使用したUAV

乱流混合は熱や物質の鉛直輸送に寄与する重要なプロセスであり、これまで、MUレーダーを用いたイメージング(映像)観測により大気乱流の発生・発達・形成メカニズムや、メソ~総観規模現象との関連が研究されてきた。近年の小型無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle; UAV)の進歩により、遠隔操作による上空の計測が従来よりも容易に行えるようになりつつあり、日米仏の国際共同研究により、2015~2017年の6月にコロラド大で開発された気象センサーを搭載した小型UAVとMUレーダーとの同時観測実験(ShUREX(Shigaraki, UAV-Radar Experiment)キャンペーン)を実施した。

成果発表

  1. Luce, H. Hashiguchi, L. Kantha, D. Lawrence, T. Tsuda, T. Mixa, and M. Yabuki, On the performance of the range imaging technique estimated using Unmanned Aerial Vehicles during the ShUREX 2015 campaign, IEEE Transact. Geosci. Remote Sens., 56 doi:10.1109/TGRS.2017.2772351, 2018.
  2. Luce, L. Kantha, H. Hashiguchi, D. Lawrence, T. Mixa, M. Yabuki, and T. Tsuda, Vertical structure of the lower troposphere derived from MU radar, Unmanned Aerial Vehicle and balloon measurements during ShUREX2015, Progress in Earth and Planetary Science, 5, doi:10.1186/s40645-018-0187-4, 2018.
  3. Kantha, H. Luce, and H. Hashiguchi, On a Numerical Model for Extracting TKE Dissipation Rate from Very High Frequency (VHF) Radar Spectral Width, Earth and Planetary Science, 70:205, doi:10.1186/s40623-018-0957-7, 2018.
  4. Luce, L. Kantha, H. Hashiguchi, D. Lawrence, and A. Doddi, Turbulence Kinetic Energy Dissipation Rates Estimated from Concurrent UAV and MU Radar Measurements, Earth and Planetary Science, 70:207, doi:10.1186/s40623-018-0979-1, 2018.

課題6 宇宙からの地球大気環境モニタリング

代表者氏名:塩谷 雅人(京都大学生存圏研究所)
共同研究者:斉藤 昭則(京都大学理学研究科)

地球を周回する衛星からのグローバルな大気観測は,地球環境変動を理解するために必須の情報源となっている.社会的あるいは科学的な要求を踏まえて,下層大気の変動に対して敏感な高層大気領域の熱的・力学的構造,さらには大気微量成分分布を高精度でモニタリングするための装置の検討をおこない,次世代の観測手段を提案する.
人の生存環境にとって,中層大気(成層圏+中間圏)領域の果たす役割は大きく,その熱的・力学的構造,さらに大気微量成分分布は人間活動による擾乱の影響を受けている.この大気領域については,2009-2010年にかけて国際宇宙ステーションに搭載された観測装置JEM/SMILESが,世界で始めて4K冷却による超高感度サブミリ波大気観測をおこなった.この技術を基礎として,次世代の大気環境モニタリングをおこなうにはどのような観測が必要なのかを検討する.

成果発表

  1. Shiotani, M., Satellite observation of the whole atmosphere – Superconducting Submillimeter-Wave Limb-Emission Sounder (SMILES-2) SPARC General Assembly 2018, Kyoto, Japan, October, 2018.

 

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