Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション4「循環材料・環境共生システム」
平成30年度の活動

受賞

日本木材学会Journal of Wood Science 優秀論文賞(The Japan Wood Research Society Best Paper Award)

【受賞者】Sung Wook HWANG, Kayoko KOBAYASHI, Shengcheng ZHAI, Junji SUGIYAMA
【受賞タイトル】Automated identification of Lauraceae by scale-invariant feature transform”
【授与雑誌】journal of Wood Science volume 64

課題1 新たな木質構造の創成

研究代表者 五十田博(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 中川貴文(京都大学 生存圏研究所)、北守顕久(京都大学 生存圏研究所)、森 拓郎(広島大学大学院 工学研究科)、荒木康弘(国土技術政策総合研究所)

本年度は外部予算を獲得し、昨年度開始した鉄骨造にCLTを用いる構法について、構面実験、要素実験を実施するとともに設計法について一考した。4階建て以上の建築物では木材を露出した状態で用いることは困難であるが、鉄骨造が鉛直荷重を負担し、CLTが地震力などの水平力のみを負担するという考え方によると、露出して、つまり木材を見せて使用することもディテールの検討により可能となる。今回は鉄骨への熱流入が比較的小さいと考えられる接合を選択し、かつ、CLTの最大性能を引き出すディテールにおさめ、実施した(図1-1)。CLTの最大性能である、せん断応力度τ=2.7程度の性能を確認した。また、解析を実施し(図1-2)、実験結果を追跡する力的モデルを提案した。

図1-1:鉄骨フレームCLT構造
図1-2:解析結果

成果発表

  1. 金澤和寿美:京都大学大学院農学研究科修士論文:「CLTを耐震壁に用いた鉄骨造の構造性能」
  2. ドットコーポレーション、京都大学生存圏研究所、CLT等新たな木質建築部材利用促進・定着委託事業のうち国による開発「鉄骨フレームとCLT壁を組み合わせた架構の構造と耐火の標準納まりと設計法の開発」報告書、平成31年3月

課題2 木本植物の計量形態学的研究

研究代表者 杉山淳司(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 小林加代子(東京大学 農学研究科)、川嶋宏彰(京都大学 情報学研究科)、Hwang Sung-Wook、中島健志、喜多祐介、田鶴寿弥子、馬場啓一、今井友也(京都大学 生存圏研究所)、鳥越俊行(Nara National Musi)、今津節生(奈良大学)

阿修羅像の心木の樹種特定に向けて、九州国立博物館で撮影されたCT画像を元に、深層学習を用いた樹種識別法の検討を始めた。まず、木彫像に頻用される用材を複数個体より準備して、阿修羅像を撮影した時と同様の条件でCT像を撮影し、学習用の画像データを作成した。その画像を元に、シーケンシャルなCNNモデルを立てて識別モデルを構築し、実際の画像の判定を行った。撮影条件の違いや、鉄釘などによる実物ならではの画像の揺らぎやノイズがあるため、候補の絞り込みに問題があるものの、頭部、胴部、脚部と3種類の木材が利用されていることが統計的に支持された。が解析に応用して、国宝仏像に使用された木材の評価を行う。また、引き続き、最新の機械学習・人工知能を利用した新規な識別法や材質評価方法の確立を目指した。

成果発表

  1. 杉山淳司・小林加代子:人工知能を使って心木の樹種特定に迫る。「阿修羅像のひみつ」興福寺監修、朝日選書、2018
  2. 杉山淳司、阿修羅像 ~人工知能による樹種特定に向けて、第417回興福寺佛教文化講座要旨
  3. Kayoko Kobayashi, Sung-Wook Hwang, Takayuki Okochi, Won-Hee Lee, Junji Sugiyama, Non-destructive method for wood identification using conventional X-ray computed tomography data, Journal of Cultural Heritage, https://doi.org/10.1016/j.culher.2019.02.001.

課題3 低環境負荷型木質新素材の創成および再生

研究代表者 金山公三(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 梅村研二、田中聡一(京都大学 生存圏研究所)

薬液含浸は、木材の燃える・腐る・寸法安定性が低いという特性を改善するために不可欠な技術である。特性を十分に制御するには、木材の細胞壁(細胞実質)中に必要量の処理物質を均一に入れる必要がある。そこで、木材に薬液を注入した後の養生過程(溶媒蒸発過程)に注目し、溶液の濃度差を駆動力として生じる細胞内腔から細胞壁への物質拡散を促進する手法を研究してきた。
 片方の端部を閉鎖した樹脂製の細管(内径0.5mm, 長さ90 mm)に着色水を減圧注入したものを、温度・相対湿度を制御した雰囲気下で養生した。その結果、細管中の溶液(液相)は(図3-1)、水分蒸発が完了して消失するまで、2つの気相に挟まれた状態で移動した。また、同移動は温度と相対湿度の影響を受けることが確かめられた。 

図3-1 溶液含浸木材の養生過程における木材細胞を模した細管の概略図

成果発表

  1. 永井雅也:京都大学大学院農学研究科修士論文:「流動成形のための木材の前処理の検討―養生中の含浸木材の溶液分布の時間変化―」

課題4 未来型資源循環システムの構築

研究代表者 吉村剛(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 畑俊充、柳川 綾(京都大学 生存圏研究所)

  1. シロアリ・木材腐朽菌などによる木材の劣化機構の解明とその防除
    木材害虫の生態解明とその防除に向けた取り組み:ホソナガシンクイ、ケブカシバンムシ等の重要な乾材害虫の人工飼育に日本で初めて成功し、その食害生態の解明に関する研究を実施するとともに、高周波を用いた駆除処理の可能性を実証した。
  2. バイオマス由来新機能カーボン素材
    熱硬化フェノール樹脂炭素化物と木質由来炭素化物の複合化により木質複合活性炭を製造し、CO2吸着量の向上を図った。
  3. 安全で快適な居住環境創出のための昆虫・植物・微生物由来物質の利活用
    三枝祭の斎行時期は雑菌が増殖しやすい梅雨時であることから、切り花を居住空間内に維持する効果を、ササユリの花香成分が人体に与えうる効果から検証したところ、ご神花には、姿見の美しさだけでなく、その花香にリラックス効果があることが示唆された。

図4-1 高周波発振装置を用いた殺虫処理
図4-2 ササユリを用いた実験の様子

成果発表

  1. Ikhsan Guswenrivo, Hiroki Sato, Izumi Fujimoto and Tsuyoshi Yoshimura: First record of the termite ectoparasite Laboulbeniopsis tarmitarius Taxter in Japan, Mycosecience, 59, 247-251, 2018, DOI: 10.1016/j.myc.2018.01.00
  2. Lee-Jin Bong, Kok-Boon Neoh and Tsuyoshi Yoshimura: Comparison of Water Relation in Two Powderpost Beetles Relative to Body Size and Ontogenetic and Behavioral Traits, Environ. Enotomol., 2018, 1-7, DOI: 10.1093/ee/nvy062
  3. 簗瀬佳之、森 拓郎、Emiria Chrysanti、吉村 剛、大村和香子、板倉修司、藤井義久:アコースティック・エミッションおよびマイクロ波によるアメリカカンザイシロアリ食害の非破壊的検出、環動昆、29(2)、41-47, 2018 DOI: https://doi.org/10.11257/jjeez.29.41
  4. Hasan Ashari Oramahi, Tsuyoshi Yoshimura, Farah Diba, Dina Setyawati and Nurhaida: Antifungal and antitermitic activities of wood vinegars from oil palm trunk, J. Wood Sci., 64, 311-317, 2018, DOI:10.1007/s10086-018-1703-2
  5. Lee-Jin Bong, Kok-Boon Neoh and Tsuyoshi Yoshimura: Deevelopmental irregularity and abnormal elytra formation in the oriental wood borer by physical disturbance, J. Insect Sci., 18(1), 12, 1-6, 2018, DOI: 10.1093/jisesa/iey001
  6. 藤澤瑞希ら:三枝祭御神花ササユリLilium japonicum花香が有する心理的なリラクゼーション効果 (生薬学会誌, 印刷中)

課題5 セルロースナノファイバーの製造と利用

研究代表者 矢野浩之(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 阿部賢太郎(京都大学 生存圏研究所)

植物細胞の基本骨格物質であるセルロースナノファイバーを活用した材料開発を進めている。特に高強度複合材料の開発に注力している。
 粒子径の異なる3種のアクリル樹脂ラテックス(粒子径55、130、527nm)とCNF水分散液を所定の割合で混合し、様々なCNF/樹脂率の水溶液を作製した。吸引濾過によりマットを形成後、真空乾燥により繊維率0%~5%のCNF/アクリル樹脂複合化フィルム(厚さ200~300μm)を得た。この複合化フィルムの機械的性質および動的粘弾性を評価した。
 アクリル樹脂粒子の表面にCNFが均一に分布し、CNFによるネットワーク構造が形成されていることが確認できた(図5-1)。乾燥状態におけるシート弾性率について図5-2に示す。

図5-1 CNF/アクリル樹脂微粒子(粒子径527nm)
図5-2 複合材料のヤング率

成果発表

  1. Igarashi Y, Sato A, Okumura H, Nakatsubo F, Yano H, Manufacturing process centered on dry-pulp direct kneading method opens a door for commercialization of cellulose nanofiber reinforced composites, Chemical Engineering Journal, 563-568, 2018
  2. Abe K, Morita M, Yano H, Fabrication of optically transparent cotton fiber composite, Journal of Materials Science, 53 (15), 10872-10878, 2018/08
  3. Yano H, Omura H, Honma Y, Okumura H, Sano H, Nakatsubo F, Designing cellulose nanofiber surface for high density polyethylene reinforcement, Cellulose, 25 (6), 3351-3362, 2018
  4. Wang L, Okada K, Sodenaga M, Hikima Y, Ohshima M, Sekiguchi T, Yano H, Effect of surface modification on the dispersion, rheological behavior, crystallization kinetics, and foaming ability of polypropylene/cellulose nanofiber nanocomposites, Composites Science and Technology, 168 (10), 412-419, 2018

 

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