Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション3「宇宙生存環境」
平成30年度の活動

平成30年度 受賞

田中館賞

【受賞者】銭谷誠司 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)
【授与組織名】 国地球電磁気・地球惑星圏学会
【受賞年月】2018(平成30)年5月23日
【受賞対象】新しいアプローチの導入による磁気リコネクションのミクロ構造の解明

課題1 シミュレーションによるサブストームの研究

研究代表者 海老原祐輔(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 田中高史 (九州大学 名誉教授) 、上吉川直輝(京都大学 生存圏研究所)

オーロラ爆発が起こると莫大なエネルギーが極域超高層大気で消費され、大気を温める。オーロラ爆発は地震と同じように一種のエネルギー解放過程であり、その大きさを予測することは難しいと考えられていた。太陽風の条件を様々に変えたシミュレーションを行い、オーロラ爆発の大きさ(ジェット電流の強さ)は太陽風から磁気圏に流入するエネルギーにほぼ比例することが分かった。オーロラ爆発のエネルギー源は太陽風とともに太陽から引き出される太陽の磁場だと考えられていたが、磁気圏に流入するエネルギーのうち3割から9割は太陽風が持つ運動エネルギーが起源であることもわかった。大規模数値シミュレーションにより、太陽風という形態で太陽から地球に取り込まれるエネルギー変換の仕組みと流れがおよそ把握できるようになった。

成果発表

  1. Ebihara, Y., T. Tanaka, and N. Kamiyoshikawa, New diagnosis for energy flow from solar wind to ionosphere during substorm: Global MHD simulation, J. Geophys. Res. Space Phys., 124, 360-378, doi:10.1029/2018JA026177, 2019.

課題2   放射線帯の相対論的電子フラックス変動の研究

研究代表者 大村善治(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 謝怡凱 (京都大学 生存圏研究所)

ホイッスラーモード・コーラス放射による放射線形成過程を再現するために、テスト粒子計算に基づく数値グリーン関数法を用いたモデリングを行った。経度方向に局在したコーラス放射を想定し、コーラス放射によって加速された相対論的な高エネルギー電子が経度方向にドリフトする過程を通じて、地球を取り巻く全球的なトーラス状の放射線帯が次第に形成されることを検証した2)。今後の展開として、相対論的電子を降下させるEMIC波と電子を加速するホイッスラーモード・コーラス波を組み合わせ、さらにこれらの波動の斜め伝搬の効果も取り入れた数値グリーン関数のデータベースを構築し、より現実的な放射線帯モデリングを実行できる環境を整えてゆく。

局所的な経度範囲で発生したコーラス放射による電子加速と放射線形成

成果発表

  1. Kubota, Y. and Y. Omura, Nonlinear dynamics of radiation belt electrons interacting with chorus emissions localized in longitude, Journal of Geophysical Research: Space Physics, 123, 4835–4857. https://doi.org/10.1029/2017JA025050, 2018.
  2. Hsieh, Y.-K., and Y. Omura, Nonlinear damping of oblique whistler mode waves via Landau resonance. Journal of Geophysical Research: Space Physics, 123, 7462–7472, https://doi.org/10.1029/2018JA025848, 2018.
  3. Li, L., X.-Z. Zhou, Y. Omura, Z.-H. Wang, Q.-G. Zong, Y. Liu, et al., Nonlinear drift resonance between charged particles and ultralow frequency waves: Theory and observations. Geophysical Research Letters, 45, https://doi.org/10.1029/2018GL079038, 2018.
  4. Kakad, B., Y. Omura, A. Kakad, A. Upadhyay, and A. K. Sinha, Characteristics of subpacket structures in ground EMIC wave observations. Journal of Geophysical Research: Space Physics, 123. https://doi.org/10.1029/2018JA025473, 2018.
  5. Omura, Y., Hsieh, Y.-K., Foster, J. C.,、Erickson, P. J., Kletzing, C. A., & Baker, D. N. (2019). Cyclotron acceleration of relativistic electrons through Landau resonance with obliquely propagating whistler-mode chorus emissions. Journal of Geophysical Research: Space Physics,  https://doi.org/10.1029/2018JA026374

課題3 宇宙電磁環境の精密・多点観測を可能にする超小型プラズマ波動観測器の開発

研究代表者 小嶋 浩嗣(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 頭師孝拓 (奈良工業高等専門学校 電気工学科)、笠原禎也 (金沢大学総合メディア基盤センター)

宇宙空間電磁環境を探査する衛星やロケットに搭載されるプラズマ波動観測器の小型化はすでに潮流となりつつある超小型衛星での利用において必須のものである。超小型衛星は宇宙空間の「多点同時観測」を実現するための重要な手段であり、それに搭載可能なプラズマ波動観測器の小型化は大きな技術的ブレイクスルーが無い限り不可能である。そのため我々はプラズマ波動観測器専用のICチップ(ASIC: Application Specific Integrated Circuit)を自ら開発し、超小型化する研究に取り組んできた。平成30年度は前年度に開発した新型のスペクトル受信器用アナログASICとFPGAによる組みあわせにより、従来型の観測器から大幅に小型化し、かつ、高性能化した観測器の開発に成功した。特にそのサイズは、アナログ部・デジタル部を統合した状態で55 mm x 80 mm x 35 mmというサイズを実現した。このシステムは、波形捕捉型の受信器と同一チップで実現できるポテンシャルをもっており、将来の超小型プラズマ波動器に対する道を拓いた。

開発に成功した新型スペクトル観測器のチップ内レイアウト[Zushi et al., 2017].

成果発表

  1. Zushi, T., H. Kojima, Y. Kasahara, and T. Hamano, Development of a miniaturized spectrum-type plasma wave receiver comprising an application-specific integrated circuit analog front end and a field-programmable gate array, Meas. Sci. Technol., 30,doi: 10.1088/1361-6501/ab0821, 2019.

課題4 新規材料の宇宙利用可能性に関する研究

研究代表者 上田 義勝(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 徳田 陽明、(滋賀大学)、廖 正浩(中国 同済大学)、Vishnu Thonglek, Rattanaporn Norarat(タイRajamangala University of Technology Lanna)

将来の宇宙利用に期待される新規材料として、微細気泡技術に関する基礎・応用利用研究を継続している。我々はこの微細気泡の基礎特性に関する研究と、応用試験、また融合研究として、いくつかのミッションにまたがる形として、各大学や研究機関とも共同研究を行ってきている。

High-speed image of microbubble generation with/without UFB (a: original photo of ejected water with UFB; b: original photo of ejected water without UFB; c: photo a after analyze particles; d: photo b after analyze particles)

成果発表

  1. V. Thonglek, K. Yoshikawa, Y. Tokuda and Y. Ueda, Identification of High Concentration Ultra-Fine Bubbles in the Water, International Journal of Plasma Environmental Science and Technology, 2018/12

課題5 低軌道宇宙環境耐性をもった木質系炭素膜の微細構造解析

研究代表者 畑 俊充(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 小嶋浩嗣、飛松裕基 (京都大学 生存圏研究所)

高度200から700kmの低地球軌道において、宇宙機の表面材料は原子状酸素(AO)により急速な酸化劣化を生じる。木質炭素材の宇宙圏における利用可能性を検討するため、ブナ、スギ、およびイネから得たリグニンを調製した。900℃で炭素化し高解像度透過電子顕微鏡を用いて微細構造を解析したところ、炭素化によりブナ、スギ、およびイネの炭素格子の面間隔がそれぞれ0.44, 0.44, および0.32nmとなった。炭素化前と比較するとそれぞれの面間隔の収縮率は41, 59, および22%であった。木質由来の炭素材は空孔径が小さくそろっており、宇宙圏で問題となる原子状酸素の吸着効果が大きく現れることが期待できる。この結果は、木質由来ならではの炭素材の宇宙利用の優位性を獲得できる可能性を示している。

Resistance against atomic oxygen by carbon

成果発表

  1. 畑 俊充、大西慶和、井出 勇、バイオマス炭素化物の機能性発現のための比表面積と空孔径分布の解析、第385回生存圏シンポジウム、ADAM/フラッグシップ/ミッション2合同シンポジウム(京都、2018/11/26)

 

平成29年度活動報告はこちらから

一つ前のページへもどる