Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション1「環境診断・循環機能制御」
平成30年度の活動

課題1 大気微量成分を介した生物圏―大気圏相互作用

研究代表者 高橋けんし(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 小杉緑子(京都大学 農学研究科)、坂部綾香(大阪府立大)、伊藤雅之(兵庫県立大)、岩田拓記(信州大)

森林圏を含む陸域生態系と大気圏との間で行われる物質交換は、量こそ極めて僅かであるが、種類は非常に多彩である。それらには温室効果やエアロゾル生成に関わる物質が含まれているため、物質交換プロセスの解明はグローバルな気候変動の正確な将来予測にとって必要不可欠である。我々は、レーザー分光法と微気象学的な手法や自動開閉チャンバーを組み合わせた新しい手法により、生態系スケールからプロットスケールに亘って、様々な森林環境における温室効果気体のフラックスを連続的に観測している。

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成果発表

  1. Iwata, H., M. Mano, K. Ono, T. Tokida, T. Kawazoe, Y. Kosugi, A. Sakabe, K. Takahashi, and A. Mityata, Exploring sub-daily to seasonal variations in methane exchange in a single-crop rice paddy in central Japan, Atmospheric Environment, 179, 156-165, doi: 10.1016/j.atmosenv.2018.02.015, 2018.

課題2 根圏の代謝物に関する研究

研究代表者 杉山暁史(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 濱本昌一郎(東京大学 農学生命科学研究科)、二瓶直登(東京大学 農学生命科学研究科)

植物と根圏微生物の相互作用を分子レベルで解明することを目指しており、マメ科植物と根粒菌の共生に関与する輸送体遺伝子の解析や、根圏微生物叢との相互作用に関与する植物代謝物の機能と動態の解析を進めている。今年度はダイズ根圏でのイソフラボンの動態についてのシミュレーションと実証を行った。

図.ダイズ根圏にイソフラボンが分泌される

 

成果発表

  1. 杉山暁史 根圏を調べる方法 生存圏研究 14, 59-61 (2018)

課題3 EAR-RASSによる赤道域気温プロファイルの高分解能観測

研究代表者 橋口浩之(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 津田敏隆(京都大学 生存圏研究所)、Ina Juaeni・Halimurrahman・Noersomadi(LAPAN, Indonesia)

赤道域は地表へ入射する太陽放射エネルギーを最も強く受ける領域で、地球大気の各種現象の駆動源であるが、その中でも特にインドネシア海洋大陸域では、太陽光による島嶼の加熱と周辺の海洋からの水蒸気供給によって、地球上で最も対流活動が活発である。我々は、2001年から赤道大気レーダー(EAR)によって風速3成分を連続観測しているが、気温は大気の安定度を決める重要なパラメータである。高層の気温プロファイルを測定する一般的な手法は気球観測であるが、時間分解能に劣る。そこで、EARと音波を併用して高時間分解能で気温の高度プロファイルを測定するRASS技術の開発を行った。

RASS(Radio Acoustic Sounding System)観測の概念図

成果発表

  1. Ina J., H. Tabata, Noersomadi, Halimurrahman, H. Hashiguchi, and T. Tsuda, Retrieval of Temperature Profiles using Radio Acoustic Sounding System (RASS) with the Equatorial Atmosphere Radar (EAR) in West Sumatra, Indonesia, Earth, Planets and Space, 70:22, doi:10.1186/s40623-018-0784-x, 2018.
  2. Ina J., H. Hashiguchi, G. A. Nugroho, Halimurrahman, Safrijon, Ridlo, and T. Tsuda, Variability of the troposphere and the tropopause parameters at the tropical region, 1st International Conference on Tropical Meteorology and Atmospheric Sciences (invited), Bandung, Indonesia, September 19-20, 2018.
  3. Ina J., H. Tabata, Noersomadi, Halimurrahman, H. Hashiguchi, and T. Tsuda, The Effect of the Acoustic Source Location on the Height Profiles of Virtual Temperature in the Tropical Troposphere, The 3rd Asia Research Node Symposium on Humanosphere Science, Taiwan, September 25-27, 2018.

課題4 一次組織の重力応答における細胞形状の変化

研究代表者 馬場啓一(京都大学 生存圏研究所)                       
共同研究者 土井隆雄(京都大学 宇宙総合ユニット)、辻祥子(京都大学 生態学研究センター)、松永菜々子(京都大学 生存圏研究所)、渡邉博之(玉川大学 農学部) 

植物の茎頂直下における一次組織では、重力の方向変化に応答して茎を屈曲させる。屈曲は、その外側と内側の生長量を変化させて生じると言われている。屈曲した形状が維持される組織と伸長成長している組織の位置関係や、屈曲部位での細胞形状の変化を観察することで伸長と屈曲の関係を明らかにする。シロイヌナズナ花茎をモデルに用いて、重力屈性が生じる組織の位置と伸長成長量の変化の関係を画像解析ソフトを用いて正確に計測したところ、屈曲は伸長成長が止まる組織で生じていることがわかった。また屈性した領域の表皮細胞は、伸長域の表皮細胞とは異なる形状変化を示していたことがわかった。

画像上で屈曲部に円を内接させて屈曲域と ピークを求める

成果発表

  1. 第82回日本植物学会大会 (広島) 2018年9月14-16日

課題5 福島県における原発事故後の長期支援研究

研究代表者 上田義勝(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 杉山暁史(京都大学 生存圏研究所) 鈴木史朗(京都大学 生存圏研究所)、二瓶直登(東京大学 農学生命科学研究科)Rattanaporn Norarat (Rajamangala University of Technology Lanna, Chiang Rai, Thailand) 谷垣実 (京都大学 複合原子力科学研究所)

福島県現地での環境放射能解析と、農耕地周辺での対策技術研究に重点をおきながら、歩行サーベイによる環境放射能のリアルタイム測定を行う事で、特に農耕地周辺の環境放射能を精査している。また、同時に農耕地内部とその周辺の土壌及び水のサンプリングを行い、環境放射能の経時的な変化を追跡する。今年度も福島県飯舘村における歩行サーベイ調査を今年度も継続して行った。また、タイ・ラジャマンガラ工科大学のRattanaporn Norarat助教を招聘した。タイとの国際共同研究テーマについて議論しつつ、福島県での支援研究を行った。

成果発表

  1. Rattanaporn Norarat, Yoshikatsu Ueda, Introduction of Collaborative Study between Rajamangala University of Technology Lanna (RMUTL), Iwate University and Kyoto University, 8th international symposium of collaborative researches in Fukushima since the Great East Japan Earthquake (390th RISH Symposium), コラッセふくしま, 福島市, 2018.12.12
  2. Yoshikatsu Ueda, Remediation technology for cesium and related application studies using fine bubble water in Fukushima Agriculture Field, First International Workshop on the Application of Fine and Ultrafine Bubbles, Innovacorp Enterprise Centre, Halifax, ハリファックス・カナダ, 2018.8.28
  3. 上田 義勝、二瓶 直登、谷垣 実, 福島県飯舘村の水田及びその周辺部の放射性セシウム分布について, 環境放射能除染学会 第7回研究発表会, 東京都江戸川区 タワーホール船堀, 東京, 2018.7.4
  4. Yoshikatsu Ueda, Yomei Tokuda, Naoto Nihei, Minoru Tanigaki , Stanislaw W. Gawlonski, Agricultural Field Measurement of Radioactive Cesium in Fukushima, Central and Eastern European Conference on Health and the Environment (CEECHE), The University of Agriculture in Kraków, クラクフ・ポーランド, 2018.6.11
  5. Naoto Nihei, Yoshikatsu Ueda, Radioactive cesium distribution around paddy field in Iitate village, Fukushima., 日本地球惑星科学連合2018年大会 , 幕張メッセ, 千葉市, 2018.5.21

課題6 ライダーによる大気微量成分の計測

研究代表者 矢吹正教(京都大学 生存圏研究所)

大気物質からのミー散乱やラマン散乱、蛍光を検出して大気微量成分(エアロゾル、水蒸気、気温など)を精測するライダーを開発し、大気環境変動の解明や気象予測精度の向上に必要となるデータを取得する。平成30年度は、森林内のエアロゾル鉛直分布や水蒸気水平分布を計測する走査型ライダーの開発、およびオゾンゾンデ・ラジオゾンデを用いたオゾン・水蒸気ライダーの評価実験を行った。

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成果発表

  1. F. Kitafuji and M. Yabuki, High spatial resolution aerosol lidar for observing the aerosol distribution within and above the forest canopies, Japan Geoscience Union Meeting 2018, AAS06-P18, 2018.5.20-24.

課題7 熱帯荒廃草原の植生回復とバイオマスエネルギー生産に向けたイネ科植物の育種

研究代表者 梅澤俊明(京都大学 生存圏研究所)
共同研究者 飛松祐基、宮本託志、高田理江、武田ゆり、山村正臣、鈴木史朗(京都大学 生存圏研究所)、水野広祐(京都大学 東南アジア地域研究研究所)、小西哲之(京都大学 エネルギー理工学研究所)、坂本正弘(京都大学 大学院農学研究科)、サトヤ ヌグロホ(インドネシア科学院)、サフェンドリ コマラ ラガムスタリ(インドネシア政策大学院大学)

東南アジアの天然林伐採跡地に成立する荒廃草原の適切な管理と植生回復は、歴史的負の遺産の補償と環境保全および資源生産・利用に関わる課題であり、これら熱帯荒廃草原の植生回復とバイオマスエネルギー生産を目指した研究を進めてきた。本ミッションでは、本年度より新たに上記研究の展開として、太陽光発電とバイオマス生産を連携させた炭素隔離に適するバイオマス植物の育種を進めている。特に、高炭素含量の高成長性イネ科バイオマス植物の育種を進めている。

成果発表

  1. Downregulation of p-COUMAROYL ESTER 3-HYDROXYLASE in rice leads to altered cell wall structures and improves biomass saccharification, Y. Takeda, Y. Tobimatsu, S.D. Karlen, T. Koshiba, S. Suzuki, M. Yamamura, S. Murakami, M. Mukai, T. Hattori, K. Osakabe, J. Ralph, M. Sakamoto, T. Umezawa, Plant J., 95, 796-811 (2018)
  2. Lignin characterization of rice CONIFERALDEHYDE 5‐HYDROXYLASE loss‐of‐function mutants generated with the CRISPR/Cas9 system, Y. Takeda, S. Suzuki, Y. Tobimatsu, K. Osakabe, Y. Osakabe, S. K. Ragamustari, M. Sakamoto, T. Umezawa Plant J. 97, 543–554 (2019)

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