Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション5-2 「脱化石資源社会の構築 (植物、バイオマス、エネルギー、材料)」
平成29年度の活動

[バイオマス植物の分子育種と生物生産]

リグニン代謝工学に基づくイネ科バイオマス植物のテーラーメード育種技術の開発(梅澤俊明、飛松裕基、鈴木史朗)

種々のバイオマス利用目的(エネルギー生産、材料および化成品への変換)に応じたイネ科バイオマス植物のテーラーメード育種技術の基盤構築を目指し、リグニンの量や構造を様々に改変した形質転換イネの作出と特性評価を行う。同時に、有用リグニン形質を持つ大型イネ科植物種の選抜育種も実施する。

最近の活動内容

  1. 転写因子を利用したリグニンの増強による高発熱型イネの作出と特性評価
  2. リグニンの化学構造を様々に改変した形質転換イネの作出と特性評価
  3. ソルガム、エリアサス、さとうきびのバイオマス特性解析と優良系統選抜

関連の研究成果

  1. Koshiba et al., MYB-mediated upregulation of lignin biosynthesis in Oryza sativa towards biomass refinery. Plant Biotechnol. 34:7-15 (2017).
  2. Lam et al., Disrupting Flavone Synthase II alters lignin and improves biomass digestibility. Plant Physiol. 174:972-985 (2017).
  3. Takeda et al., Regulation of CONIFERALDEHYDE 5-HYDROXYLASE expression to modulate cell wall lignin structure in rice. Planta 246:337-349 (2017).
  4. Cui et al. Host lignin composition affects haustorium induction in the parasitic plants Phtheirospermum japonicum and Striga hermonthica. New Phytol., 210:710-723 (2018).
  5. Miyamoto et al., Comparative analysis of lignin chemical structures of sugarcane bagasse pretreated by alkaline, hydrothermal, and dilute sulfuric acid methods. Ind. Crops Prod. 121:124-131 (2018).
  6. Miyamoto et al., A comparative study of the biomass properties of Erianthus and sugarcane: lignocellulose structure, alkaline delignification rate, and enzymatic saccharification efficiency. Biotechnol. Biochem. in press (DOI: 10.1080/09168451. 2018.1447358).
図 リグニンの化学構造を改変した形質転換イネ(右)とイネ科植物における一般的なリグニンのモデル構造式(左)

光合成微生物を用いた太陽エネルギーによるイソプレン生産技術の開発(矢崎一史、杉山暁史)

イソプレンは合成ゴム等の工業原料として世界中で利用されている。しかし、その供給の全てを化石資源に依存にしており、持続的なイソプレン生産法の開発が求められている。本研究では、ポプラ属樹木のギンドロ(Populus alba)からイソプレン合成酵素遺伝子PaIspSを用いた代謝工学的手法により、光合成微生物であるツノケイソウを用いて効率的にイソプレンを生産させること目指す。

最近の活動内容

  1. ギンドロのイソプレン合成酵素遺伝子PaIspSを発現させた形質転換ツノケイソウからイソプレンの生産を確認した。
  2. イソプレン生産性のさらなる向上を目指し、新たな発現コンストラクトの構築と形質転換を進めている。

[革新的バイオマス変換技術]

マイクロ波・生物変換プロセスによるバイオマスの化学資源化(渡辺隆司、西村裕志)

脱化石資源社会を目指し、マイクロ波反応、糖質分解酵素、エタノール発酵細菌などにより、熱帯産や国内バイオマスを機能性化学品原料、燃料などに高効率で変換するシステムを開発する産学連携・国際共同研究を行う。

最近の活動内容

  1. 副生グニン由来の発酵阻害物質吸着剤を利用した自己完結型のバイオエタノール生産システムの開発を開発した。
  2. マイクロ波により収率が3倍まで増加する木材からバニリンを高収率で生産する銅錯体・過酸化水素反応を開発した。
  3. 木材を室温で溶解し折り曲げできる透明フィルムを作成する方法を金沢大学と共同で開発した。

関連の研究成果

  1. A. Kaiho, D. Mazzarella, M. Satake, M. Kogo, M., R. Sakai, Takashi Watanabe, Construction of di(trimethylolpropane) cross linkage and phenylnaphthalene structure coupled with selective β-O-4 bond cleavage for synthesizing lignin-based epoxy resins with controlled glass transition temperature. Green Chem., 18, 6526-6535 (2016). 
  2. Saito et al., Characterization of the interunit bonds of lignin oligomers released by acid-catalyzed selective solvolysis of Cryptomeria japonica and Eucalyptus globulus woods via thioacidolysis and 2D-NMR, Agric. Food Chem., 64:9152–9160 (2016).
  3. Yoshioka et al., Self-sufficient bioethanol production system using a lignin-derived adsorbent of fermentation inhibitors, ACS Sus. Chem. Eng. 6:3070–3078 (2018).
  4. Qu et al., Direct production of vanillin from wood particles by copper oxide–peroxide reaction promoted by electric and magnetic fields of microwaves. ACS Sus. Chem. Eng. 5:11551–11557 (2017).
  5. Nishiwaki-Akine et al., Transparent woody film made by dissolution of finely divided Japanese beech in formic acid at room temperature, ACS Sus. Chem. Eng. 5:11551–11557 (2017).
図 マイクロ波によりバニリン収率を3倍まで増加させる銅錯体反応を見出し、空洞共振器を用い、電場による高い反応促進効果を示した。また、915MHz連続式マイクロ波反応装置を開発して、スギ材から耐熱性ポリマーを生産した。

 

図 木質バイオマスからのバイオエタノール生産時に副生する残滓リグニンから発酵阻害物質吸着体を製造し、自己完結型の発酵システムを開発した。

リグノセルロースの分岐構解析を基盤とした環境調和型バイオマス変換反応の設計(西村裕志、渡辺隆司)

リグノセルロースを有効利用するための成分分離・変換反応を設計する上で、リグニンおよびリグニンと多糖の分岐構造に関する分子情報が重要である。本研究では基盤的な分析技術とそれを使った分子構造解析を行い、酵素反応によるリグノセルロースの環境穏和型変換反応を探求する。

最近の活動内容

  1. 二次元NMR法によるリグノセルロースの定量解析法の開発
  2. 新規エステラーぜを用いたリグニンー糖結合フラクションの分解と二次元NMR法を用いた反応性評価
  3. 海洋微生物由来の新規分解酵素を用いたリグニンー糖結合フラクションの分離と分解

関連の研究成果

  1. Okamura, H., Nishimura, H., Nagata, T., Kigawa, T., Watanabe, T., Katahira, M., Accurate and molecular-size-tolerant NMR quantitation of diverse components in solution. Sci.Rep. 6:21742 (2016).
  2. Nishimura, H., Kamiya, A., Nagata, T., Katahira, M., Watanabe, T. Direct evidence for alpha ether linkage between lignin and carbohydrates in wood cell walls. Sci.Rep. 8:6538 (2018) doi:10.1038/s41598-018-24328-9
  3. 日経新聞電子版「京大、植物細胞壁中のリグニン・多糖間結合を解明(2018.5.7)」
  4. 西村 裕志, リグノセルロースの構造分析と環境調和型変換, バイオマス変換研究会春季講演会(第68回日本木材学会大会), 京都市(2018年3月) [招待講演]
  5. 西村 裕志, 木質バイオマスの分子構造とマイルドな変換法, バイオマス資源の利活用に向けた化学生命研究の最前線, 高知市(2018年3月) [招待講演]
  6. 西村 裕志, 溶かして知る・活かす、木の化学, 京都大学森林科学公開講座, 京都市(2017年10月) [依頼講演]
  7. Hiroshi Nishimura, Structural analysis towards the lignocellulosic biomass conversion, The 1st International Symposium on Fuels and Energy, Hiroshima (2017年7月)
  8. 西村 裕志, 木材成分のリグニンから機能性化学品へ ―微生物に学ぶ有効活用―, 京都大学総合博物館 Lecture series, 京都市(2017年6月) [招待講演]
  9. Hiroshi Nishimura, Structural analyses and the bioprocesses for wood biomass conversion, Asia Research Node Symposium on Humanosphere Science, Penang, Malaysia (2017年2月)
  10. 西村 裕志, リグニン-多糖複合体の解析と定量2次元NMR法, 第61回リグニン討論会 企画講演, 京都市(2016年10月) [招待講演]

効率的バイオマス酵素糖化プロセス開発に資するバイオマス構造変化のその場分析(今井友也、杉山淳司)

バイオマスの酵素糖化過程において、複雑な階層構造をもつバイオマスがどのような構造変化を経るのか把握することは、糖化プロセスの効率化に極めて重要である。本課題では、酵素糖化に伴うバイオマス構造の動的変化をSAX法を用いてその場観察し、効率的酵素糖化プロセスの開発に資する情報を引き出すことを目的とする。

最近の研究活動

木材を模した人工コンポジットの市販セルラーゼによる分解反応のその場測定を放射光施設SAXSにより行い、酵素分解に伴うモデルバイオマスの構造変化過程をプロファイリングした。

関連の研究成果

Penttilä et al., Enzymatic hydrolysis of biomimetic bacterial cellulose–hemicellulose composites. Carbohydrate Polymers, in press (DOI: https://doi.org/doi:10.1016/j.carbpol.2018.02.051)

[バイオマスをベースとした先端機能材料]

セルロースおよびキチンナノファイバーを用いた成形品の開発(矢野浩之、阿部賢太郎)

持続可能な資源であるセルロースの幅広い利用展開を目指すべく、安全かつ簡便な手法で成型品(フィルム、繊維、フィルター等)を製造する手法を開発する。パルプを機械的解繊することで得られるセルロースナノファイバーを利用することにより溶剤を使用すること無く高い力学特性を示す成型品の開発を目指す。

最近の活動内容

  1. セルロースナノファイバーを用いた紡糸繊維の開発
  2. セルロースナノファイバーと合成ポリマーの複合体化による高強度ハイドロゲルの開発

関連の研究成果

  1. キチン・キトサンの最新科学技術、日本キチン・キトサン学会編、技術同出版、2016
  2. セルロースナノファイバーの実用化技術、S&T出版、2016
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セルロースナノファイバー由来の紡糸繊維

 

 

 

 

 

 

 

 

バイオマスからのエネルギー貯蔵デバイスの開発(畑 俊充)

電気二重層キャパシタの開発において、高純度で炭素化収率の高い原料を用い、高エネルギー密度化と高容量化を図ることが重要である。本研究では、熱硬化性樹脂にバイオマス由来材料を複合化することにより炭素材料を調製し、高性能なスーパーキャパシタを開発する。

最近の活動内容

凍結乾燥処理を行うことにより、複合炭素化物のミクロ組織とナノ空隙構造の発達が電気二重層キャパシタの静電容量の向上につながった。

関連の研究成果

  1. 大西慶和, 井出 勇, 畑 俊充 , Subyakto, Yusup Amin, フェノール樹脂・セルロースナノファイバー複合炭素化物の微細構造, 第15回木質炭化学会, 福岡市 (2017年6月)
  2. 大西慶和, 畑 俊充, 井出 勇, Subyakto, Yusup Amin, 熱硬化球状樹脂多孔質炭素化物の調製及び特性, 第44回炭素材料学会年会, 桐生市(2017年12月)
  3. 大西慶和, 井出 勇, 畑 俊充, Subyakto, Yusup Amin, 齊藤丈靖、鈴木伸一郎, フェノール樹脂とセルロースナノファイバーの複合炭素材料の充放電特性に及ぼす凍結乾燥処理の影響, 第68回日本木材学会大会,京都市 (2018年3月)

[マイクロ波エネルギー伝送技術の社会実装]

マイクロ波無線電力伝送に基づくIoT技術の実証研究(篠原真毅、三谷友彦)

脱化石燃料依存社会構築のため、IoT(Internet Of Things)による社会システムの高度化が求められている。本研究では、マイクロ波無線電力伝送を利用したアンコンシャス(無意識)のワイヤレス給電システムや電池レスセンサーの開発を行い、無線により電源と情報の両方を供給する次世代IoTシステムを提案と実証試験を行う。

最近の活動内容

  1. JST Center of Innovationの一環として、介護施設の入居者が身につける電池レスセンシング装置の開発と実証
  2. マルチコプターからワイヤレス給電を行なう火山観測用の電池レスセンサーを開発と実証
  3. 有機半導体を用いたバッテリーレスIoTセンサーの開発
  4. マイクロ波送電の法制化とIoT技術のビジネス化

関連の研究成果

  1. Wang et al., Study on 5.8 Ghz single-stage charge pump rectifier for internal wireless system of satellite, IEEE-Trans. MTT, 65:1058-1065 (2017).
  2. Matsumuro et al., Study of a single-frequency retro-directive system with a beam pilot signal using dual-mode dielectric resonator antenna elements, Wireless Power Transfer, 4:132-145 (2017).
  3. Matsumuro et al., Novel dielectric elements for high-directivity radiation, IEICE Trans. Electron, E100-C:607-617 (2017).
  4. Yang et al., Experimental study on a 5.8 GHz power-variable phase-controlled magnetron, IEICE Trans. Electron, E100-C:901-907 (2017).
  5. 読売新聞 「マイクロ波応用が切り拓く未来」(2017年8月10日)、日経産業新聞 「無線で電気供給 活躍の場広げる」(2017年8月17日)、日経新聞 「スマホ・車 どこでも充電」(2017年9月17日)などメディア紹介多数
図 2017年度に開発したマイクロ波送電用薄型人体貼り付け型アンテナ(図表新規挿入をお願いします)

マイクロ波電磁環境下における昆虫生態系への影響調査(柳川 綾、三谷友彦)

マイクロ波帯でのワイヤレスネットワーク需要は今後更に増加すると予想される。電磁波の一層の活用のためには、哺乳類以外の生物が被り得る影響についても十分な調査が必要である。そこで、昆虫目をモデルに、電磁波が生態系に与えうる影響について調査する。

最近の活動内容

  1. サンプル昆虫のESR測定
  2. IoT使用環境を構成する物質サンプルの誘電率測定
  3. 電磁波照射下におけるシロアリ病原菌感受性試験
  4. 高大連携事業として、課題を通した高校生らとの研究交流等
  5. LBE INRA Narbonne (フランス) の研究者らとの国際共同研究へと発展

関連の研究成果

  1. Yanagawa, A., Insects and human activities on microwave usage, HSS2017/7th ISSH, Bogor, Indonesia (November, 2017) (招待講演)
  2. 柳川 綾 ら、IoT (Internet of Things) 電磁場エネルギーにおける昆虫生体の熱エネルギー吸収性、第62回応用動物昆虫学会、鹿児島市 (2018年3月)

図 昆虫体内に吸収されるマイクロ波エネルギーの測定

平成28年度活動報告はこちらから

 

 

 

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