Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション3「宇宙生存環境」
平成29年度の活動

平成29年度 受賞

アップルトン賞(Appleton Prize)

【受賞者】大村善治 (京都大学生存圏研究所教授)
【授与組織名】 国際電波科学連合 (URSI)
【受賞年月】2017(平成29)年8月
【受賞対象】
 放射線帯における非線形波動粒子相互作用の理論、コーラスおよびイオンサイクロトロン放射のシミュレーション、相対論的電子の加速および降下現象に対する顕著な貢献
(For significant contributions to nonlinear wave-particle interaction theory, simulations of chorus and ion cyclotron emissions and the associated acceleration and precipitation of relativistic electrons in the radiation belts)

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地球惑星科学振興西田賞 (Nishida Prize)

【受賞者】海老原祐輔 (京都大学生存圏研究所准教授)
【授与組織名】日本地球惑星科学連合 (Japan Geoscience Union)
【受賞年月日】2017(平成29)年5月23日

課題1 宇宙環境を利用・改善する宇宙システムの研究 (山川 宏)

  1. 惑星間の太陽風の動圧を帯電した多数のワイヤで受け止めて推進力に変換する帯電セイル宇宙機の推力モデルをParticle-in-cell法により導出した。
  2. 静止軌道における衛星の帯電現象の数値解析を行い、静止衛星の帯電モデルを構築した。
  3. 地球に接近する小惑星の地球衝突回避に向けて、小惑星とその小惑星に近接させた宇宙機の双方を積極的に帯電させることにより、重力に加えてクーロン力を用いる能動的な小惑星の軌道変更能力を明らかにした。

成果発表

  1. K. Hoshi, H. Kojima, T. Muranaka, and H. Yamakawa, Thrust Calculation of Electric Solar Wind Sail by Particle-in-cell Simulation, Annales Geophysicae, Vol. 34, pp. 845-855, 2016, doi:10.5194/angeo-34-845-2016.
  2. K. Hoshi, H. Kojima, and H. Yamakawa, Particle-in-cell Simulation of Potential Structure around Electric Solar Sail Wind Tethers, The 30 ISTS Special Issue of Transaction of JSASS, Aerospace Technology Japan, Vol. 14, No. ists-30, pp. Pb-83-Pb-89, 2016.
  3. K. Hoshi, Y. Muranaka, H. Kojima, H. Usui, I. Shinohara, and H. Yamakawa, Numerical Analysis of Active Satellite Charging in the Geostationary Environment, Journal of Spacecraft and Rockets, Vol. 53, No. 4, pp. 589-598, 2016.
  4. K. Yamaguchi and H. Yamakawa, Near Earth Asteroid Deflection Mission Using Coulomb Force Attractor, The 30 ISTS Special Issue of Transactions of JSASS, Aerospace Technology Japan, Vol. 14, No, ists30, doi: 10.2322/tastj.14.Pd_119, 2016.

課題2 シミュレーションによるサブストームの研究(海老原祐輔)

概要

宇宙生存圏が大きく乱されるサブストームが起こるしくみを大規模シミュレーションによって調べた。

活動内容

スーパーコンピューターKDKを用いてオーロラを再現し、その発生源を調査している。

研究成果

極域では明るいオーロラが激しく舞うことがある。サブストームと呼ばれ、このとき高さ100キロメートル付近の電離圏を数百万アンペアもの電流が流れて極域の地磁気を大きく乱す。大規模数値シミュレーションの結果を解析し、電離圏と呼ばれる超高層大気でおこる分極と電磁流体の性質を持つ磁気圏が強く結合していることでサブストームを特徴づけるサージが現れることを提案した。また、太陽風から磁気圏に流入した電磁エネルギーが螺旋を描きながら電離圏に至るまでの過程を示した。磁気圏にエネルギーを運ぶ動脈である。サブストームが起こると一度熱エネルギーに転化し再び電磁エネルギーに戻るようだ。地上で見るとサブストームが局在化した領域から始まることと関係していると思われる。

成果発表

  1. Ebihara, Y., and T. Tanaka, Why does substorm-associated auroral surge travel westward?, Plasma Physics and Controlled Fusion, 60, 014024, 2018.
  2. Ebihara, Y., and T. Tanaka, Energy flow exciting field-aligned current at substorm expansion onset, Journal of Geophysical Research: Space Physics, 122, doi:10.1002/2017JA024294, 2017.

課題3   放射線帯の相対論的電子フラックス変動の研究 (大村善治)

  1. 最近 の衛星観測により、地球を取り巻く放射線帯の形成・消失過程には、ホイッスラーモード・コーラス放射および電磁イオンサイクロトン(EMIC)トリガード放射という周波数が変動する電磁波動が深く関与していることが分ってきた。
  2. これらの波動では非線形過程が本質的に重要な働きをしていることから、テスト粒子計算 により相対論的電子の非線形ダイナミックスを明らかにした。

成果発表

  1. Y. Hsieh and Y. Omura, Nonlinear dynamics of electrons interacting with oblique whistler-mode chorus in the magnetosphere, J. Geophys. Res. Space Physics, 10.1002/2016JA022891, 2017.
  2. Y. Kubota and Y. Omura, Rapid precipitation of radiation belt electrons induced by EMIC rising-tone emissions localized in longitude inside and outside the plasmapause, J. Geophys. Res. Space Physics, doi: 10.1002/2016JA023267, 2017.
  3. J. C. Foster, P. J. Erickson, Y. Omura, D. N. Baker, C. A. Kletzing, S. G. Claudepierre, Van Allen probes observations of prompt MeV radiation belt electron acceleration in non-linear interactions with VLF Chorus, J. Geophy. Res. Space Physics, doi: 10.1002/2016JA023429, 2017.
  4. Y. Katoh and Y. Omura, Electron hybrid code simulation of whistler‑mode chorus generation with real parameters in the Earth’s inner magnetosphere, Earth, Planets and Space, 68, 192, 2016.

課題4 宇宙電磁環境の精密・多点観測を可能にする超小型プラズマ波動観測器の開発(小嶋浩嗣)

宇宙空間電磁環境を探査する衛星やロケットに搭載されるプラズマ波動観測器の小型化はすでに潮流となりつつある超小型衛星での利用において必須のものである。超小型衛星は宇宙空間の「多点同時観測」を実現するための重要な手段であり、それに搭載可能なプラズマ波動観測器の小型化は大きな技術的ブレイクスルーが無い限り不可能である。そのため我々はプラズマ波動観測器専用のICチップ(ASIC: Application Specific Integrated Circuit)を自ら開発し、超小型化する研究に取り組んできた。平成29年度はASICによる超小型化技術を利用して、通常の設計では実現できないスペクトル観測タイプのプラズマ波動観測器チップの開発に成功した。このチップでは従来方式では大型になって実現不可能な、フィルタとサンプリング周波数をダイナミックに変更し、観測周波数を高速に変更しながら観測できる5mm角新型スペクトル観測チップを実現した。

開発に成功した新型スペクトル観測器のチップ内レイアウト[Zushi et al., 2017].

成果発表

Zushi, T., H. Kojima, and H. Yamakawa, One-chip analog circuits for a new type of plasma wave receiver on board space missions, Geosci. Instrum. Method. Data Syst. 6, doi: 10.5194/gi-6-159-2017.

課題5 新規材料の宇宙利用可能性に関する研究(上田義勝)

将来の宇宙利用に期待される新規材料として、微細気泡技術に関する基礎・応用利用研究を継続している。我々はこの微細気泡の基礎特性に関する研究と、応用試験、また融合研究として、いくつかのミッションにまたがる形として、各大学や研究機関とも共同研究を行ってきている。

成果発表

Hamamoto, S., N. Nihei, Y. Ueda, P. Moldrup, and T. Nishimura, Effects of Flow Rate and Gas Species on Micro- and Nano-Bubble Transport in Porous Media, Environmental Engineering, 2017 (in press).

課題6 低軌道宇宙環境耐性をもった木質系炭素膜の微細構造解析(畑 俊充、小嶋浩嗣)

高度200から700kmの低地球軌道において、宇宙機の表面材料は原子状酸素(AO)により急速な酸化劣化を生じる。本年度は、木質から作ったダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜がAO照射によりどのような影響を受けるか調べるために、DLC膜の内部構造を透過電子顕微鏡(TEM)および電子エネルギーロス分光分析(EELS)で解析した。

最近の活動内容

  1. AO照射前と照射後のDLC膜の定量的微細構造解析
  2. AO照射前と照射後のDLC膜の定性的TEM観察
  3. AO照射前と照射後のDLC膜の定量的TEM-EELS解析

 

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