Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション2「太陽エネルギー変換・高度利用」
平成29年度の活動

ミッション全体のミーティングリスト

合計5回の全体ミーティングを実施し以下の項目を議論した。

第1回:平成29年6月5日
第2回:平成29年7月12日
第3回:平成29年9月4日
第4回:平成29年11月6日
第5回:平成29年12月27日

・昨年度までの成果の整理・認識の共有化
・今期5年間のミッション2の発展方法
・予算配分課題の設定: 下記4課題
 
 1.窒素ドープセルロースからの燃料電池用カソード触媒の合成   
 2.化学反応用マイクロ波加熱容器の研究開発   
 3.バイオマス利用におけるセルロース抽出前処理の簡素化
 4.脂質変換大腸菌を用いた合成生物学的アプローチによる細胞壁形成研究

ミッション2関連研究
(ミッション2シンポジウム発表ポスター一覧)

第356回生存圏シンポジウム(平成29年11月27日開催)にて、ミッション2関連研究ポスター発表を実施した。以下に、ポスター発表された研究テーマ20件を示す。ポスターセッションでは、各発表者にミッション2概略図上に各研究テーマの位置付けを付箋紙で表してもらった。

1) セルロース生合成におけるセルロース分子集合過程の直接観察
2) マイクロ波反応を用いたサトウキビバガスから抗ウイルス物質の生産
3) 選択的白色腐朽菌Cerporiopsis subvermispora由来lytic polysaccharide monooxygenase (LPMO) に関する研究
4) セルラーゼ糖質結合モジュールとリグニン間相互作用のNMRによる解析
5) ビフェニル/PCB 分解細菌 Rhodococcus wratislaviensis T301 株の dye-decolorizing peroxidase 遺伝子の単離と発現
6) バイオマス利用におけるセルロース抽出前処理工程の簡素化
7) リグニン親和性ペプチドを結合したラッカーゼ遺伝子を導入した酵母でのエタノール生産
8) 選択的白色腐朽菌Ceriporiopsis subvermisporaが分泌する脂質関連代謝物の生合成酵素遺伝子の探索
9) バイオマス炭素化物の機能性発現のための比表面積と空孔径分布の解析
10) リグニン親和性ペプチド配列を担持した組換え型ラッカーゼによるリグニン分解反応
11) Chemical structure and molecular assembly of lignocellulose produced in lignin-modified rice mutants
12) 哺乳動物体内を経たリグニンの化学構造解析
13) 木材リグニンのβ-O-4開裂酵素反応前後の分析
14) 多層基板フィルタを用いた小型整流回路の研究
15) マイクロ波電力伝送に向けた送電距離と受電アンテナに応じた高効率ビームの検討
16) 高調波利用型レトロディレクティブによるマイクロ波無線電力伝送の研究
17) 整流回路へ間欠信号を入力した際の動作に関する実験
18) 電磁界結合を利用したマイクロ波加熱装置の開発
19) マルチコプタを用いた火山観測機器へのワイヤレス給電のための送電アンテナの研究
20) マグネトロンを用いる無線電力伝送と通信システムの研究

 

<平成29年度の特筆すべき成果(1)>

化学反応用マイクロ波加熱容器の研究開発 
三谷友彦、西尾大地、篠原真毅(京大生存研)

化学反応プロセスに用いるためのマイクロ波加熱装置の設計を電磁界シミュレーションにより実施し、試作装置の性能を評価した。今年度は電磁界結合を利用した新しい方式によるマイクロ波装置を開発し、特許2件を出願した。今後は加熱効率の向上や金属筐体による遮蔽がない環境でもマイクロ波漏洩の少ない装置開発を目指す。

研究成果

  1. 三谷友彦、西尾大地、加熱装置、特願2017-181071、2017/9/21
  2. 三谷友彦、西尾大地、加熱装置、特願2018-017324、2018/2/2

 

<平成29年度の特筆すべき成果(2)>

シロアリによるリグニン分解・利用に関する研究
Didi Tarmadi1、飛松裕基1、小林優2、梅澤俊明1、吉村剛1(1 京大生存研、2京大院農)

木材食害性昆虫類におけるリグノセルロース分解・利用に関する知見は、将来のバイオマス変換・利用における新技術の開発に貢献する可能性がある。本研究では、重要な木材害虫であるイエシロアリ(Coptotermes formosanus Shiraki)におけるリグニンの分解・利用について、スギ、ブナおよびイナワラから調製した単離精製リグニン(MWL)を用い、高分解能多次元NMRによる消化物の構造分析と生物試験によって検討を行った。また、後腸内微生物相への影響について、直接観察およびARISA法によるDNA多型分析によって解析した。その結果、イエシロアリの消化管中において高分子リグニンが部分的な分解を受けることが証明され、多糖類とともに摂食させた場合、その存在が後腸内原生動物類の維持およびシロアリ自身の生存率に正の影響を与えることが明らかになった。さらに、後腸内細菌相についても餌中に混入した高分子リグニンの影響が認められた。これらの結果は、木材食害性昆虫類のリグノセルロース分解・利用において、リグニンの存在というものが重要な生理学的意味を有していることを示している。

研究成果

  1. Didi Tarmadi, Tsuyoshi Yoshimura, Yuki Tobimatsu, Masaomi Yamamura, Takuji Miyamoto, Yasuyuki Miyagawa and Toshiaki Umezawa: The effects of various lignocelluloses and lignins on physiological responsesof a lower termite, Coptotermes formosanus, J. Wood Sci., DOI 10.1007/s10086-017-1638-z
  2. Didi Tarmadi, Tsuyoshi Yoshimura, Yuki Tobimatsu, Masaomi Yamamura and Toshiaki Umezawa: Effects of lignins as diet components on the physiological activities of a lower termite, Coptotermes formosanus Shiraki, J. Insect Physiol., 103, 57-63 (2017).
  3. Didi Tarmadi, Yuki Tobimatsu and Tsuyoshi Yoshimura: Hydrogen and methane emissions by the lower termite Coptotermes formosanus Shiraki on various lignocellulose and lignin diets, Jpn. J. Environ. Entomol. Zool., 28(4), 173-180 (2017).
  4. Didi Tarmadi, Yuki Tobimatsu, Masaomi Yamamura, Takuji Miyamoto, Yasuyuki Miyagawa, Toshiaki Umezawa and Tsuyoshi Yoshimura: NMR studies on lignocellulose deconstructions in the digestive system of the lower termite Coptotermes formosanus Shiraki, Sci. Rep., (2018) 8:1290, DOI:10.1038/s41598-018-19562-0.

課題1 バイオリファイナリーへ向けた生体触媒、人工触媒の開発 (渡辺隆司)

[2017度トピック:木材から単離したリグニンに配列依存的に結合するペプチドのコンフォーメーション変化を解析]
単離リグニンに配列依存的に結合するペプチドを見出し、研究成果を2016年にScientific Reportsに論文出版し、プレス発表した。2017年度に、リグニンに配列依存的に結合する12-merペプチドをタンデムに連結することにより、リグニンへの親和性が10倍上昇すること、このペプチドに針葉樹および広葉樹リグニンを加えることにより、ペプチドのコンフォーメンションが変化するが、ペプチドおよびリグニンの構造により異なる挙動を示すことを明らかにし、論文発表した。

研究成果

  1. Satoshi Oshiro, Asako Yamaguchi and Takashi Watanabe, RSC Advances, 7, 31338 – 31341 (2017)
  2. 大城 理志、山口亜佐子、渡辺隆司 「タンデムダイマー化したリグニン親和性ペプチドの結合解析とペプチド配列を担持した酵素によるリグニン分解、第62回リグニン討論会 (名古屋,2017/11/20)
  3. 渡辺隆司 「リグニンファーストの植物バイオマス変換プロセスについて」 バイオインダストリー協会、植物バイオ研究会 第13回会合 「バイオマス生産と利活用セミナー」 (東京,2018/2/26)(招待講演)
  4. 渡辺隆司 「リグニンファーストの植物バイオマス変換プロセスについて」 新化学技術推進協会 エネルギー・資源技術部会・バイオマス分科会 講演会 (東京,2017/11/20)(招待講演)

課題2 有用芳香族化合物生産のためのビフェニル/PCB分解細菌の利用 (渡邊崇人)

本研究では、様々な芳香族化合物分解系を有するビフェニル/PCB分解細菌を用いて木質バイオマス等から有用な芳香族化合物の生産を目指している.今年度は、昨年度に引き続き、ゲノミクスやプロテオミクスの手法によりこれらの分解細菌から育種のための有用な遺伝子や酵素の探索、同定及び発現解析を行った.

研究成果

  1. 廣瀬遵,米村凌,末永光,木村信忠,渡邊崇人,宮武宗利,横井春比古,二神泰基,後藤正利,藤原秀彦,古川謙介.PCB/ビフェニル分解性シュードモナス細菌の安息香酸分解系トランスポゾン欠失株の諸性質.日本農芸化学会2018年度(平成30年度)大会(名古屋) 2018. 3. 15-18. (発表日 2018. 3. 16)
  2. 藤原秀彦,中尾桜,東沙紀,末永光,木村信忠,渡邊崇人,廣瀬遵,二神泰基,後藤正利,古川謙介.ビフェニル分解特性を高頻度に転移・欠失するP. putida KF715株のゲノム再編成能に寄与する遺伝因子.環境微生物系学会合同大会2017(仙台) 2017. 8. 29-31. (発表日 2017. 8. 30)
  3. 廣瀬遵,寺野貴洋,横井春比古,末永光,木村信忠,渡邊崇人,二神泰基,後藤正利,藤原秀彦,古川謙介.同一サイトで分離されたPCB分解性細菌(KF株)10菌株のビフェニル分解系bph遺伝子の多様性.環境微生物系学会合同大会2017(仙台) 2017. 8. 29-31. (発表日 2017. 8. 29)
  4. Watanabe, T., Yoshioka, K., Kido, A., Lee, J., Akiyoshi, H., and Watanabe, T. Preparation of intracellular proteins from a white-rot fungus surrounded by polysaccharide sheath and optimization of their two-dimensional electrophoresis for proteomic studies. J. Microbiol. Methods 142C, 63-70 (2017). doi: 10.1016/j.mimet.2017.09.009
  5. Suenaga, H., Fujihara H., Kimura, N., Hirose, J., Watanabe, T., Futagami, T., Goto, M., Shimoda, J., and Furukawa K. Insights into the genomic plasticity of Pseudomonas putida KF715, a strain with unique biphenyl-utilizing activity and genome instability properties. Environ. Microbiol. Rep. 9, 589-598 (2017). doi: 10.1111/1758-2229.12561

課題3 窒素ドープセルロースからの燃料電池用カソード触媒の合成 (畑俊充)

パルス通電加熱により、Fe、およびCoを吸着したセルロースアセトアセテート、およびメラミンからなる窒素ドープカーボンを調製し、固体高分子型燃料電池用カソード触媒を製造した。窒素ドープカーボンの黒鉛型窒素とピリジン型窒素が酸素還元活性発現において重要な役割を示すことを明らかにした。

研究成果

Hata, T., Asakura R., Uchimoto, Y., Bonnamy, S., Benoit, R., Bronsveld, P., Honma S., Synthesis and characterization of nitrogen-doped carbons from cellulose with applications to the oxygen reduction reaction, BIOMASS & BIOENERGY (in submitting).

課題4 リグニンの基礎化学とグリーンコンバージョン (渡辺隆司、西村裕志)

環境調和型リグニン分解・変換系を実現するために、リグノセルロースの化学構造に依拠した分析と自然界における微生物のリグニン分解系の解析を進めている。
関連して The 2nd Asia Research Node Symposium on Humanosphere Science(アジアリサーチノード国際会議のオーガナイズドセッション“Wood Biomass Conversion – Green Chemistry and Biological Processes”を5名(うち海外から4名招聘)の招待講演により開催した。(2017年7月19日、図)

 

研究成果

  1. Nishimura, H., Yamaguchi, D., Watanabe, T., Cerebrosides, extracellular glycolipids secreted by the selective lignin-degrading fungus Ceriporiopsis subvermispora, Chem Phys Lipids, 203, 1-11, 2017.
  2. Suzuki, D., Nishimura, H., Yoshioka, K., Kaida, R., Hayashi, T., Takabe, K., Watanabe, T., Structural characterization of highly branched glucan sheath from Ceriporiopsis subvermispora, Int J Biol Macromol, 95, 1210-1215, 2017.
  3. Nakazawa T, Izuno A, Horii M, Kodera R, Nishimura H, Hirayama Y, Tsunematsu Y, Miyazaki Y, Awano T, Muraguchi H, Watanabe K, Sakamoto M, Takabe K, Watanabe T, Isagi Y, Honda Y, Effects of pex1 disruption on wood lignin biodegradation, fruiting development and the utilization of carbon sources in the white-rot Agaricomycete Pleurotus ostreatus and non-wood decaying Coprinopsis cinerea, Fungal Genet. Biol., 109, 7-15, 2017.
  4. Nguyen, T D., Nishimura, H., Imai, T., Watanabe, T., Kohdzuma, Y., Sugiyama J., Natural durability of the culturally and historically important timber: Erythrophleum fordii wood against white-rot fungi, J. Wood Sci., 2018. https://doi.org/10.1007/s10086-018-1704-1

講演等:

  1. 西村裕志, 木材成分のリグニンから機能性化学品へ ―微生物に学ぶ有効活用, 京都大学総合博物館Lecture series-研究の最先端-, 京都市, 2017.6.10. (招待講演)
  2. 西村裕志, 溶かして知る・活かす、木の化学, 京都大学森林科学公開講座, 宇治市, 2017.10.14.
  3. Hiroshi Nishimura, “Structural analysis towards the lignocellulosic biomass conversion”, The 1st International Symposium on Fuels and Energy, International Conference Center Hiroshima, Hiroshima, 11th July, 2017.
  4. 西村裕志, 木質バイオマスの分子構造とマイルドな変換法, バイオマス資源の利活用に向けた化学生命研究の最前線(高知大学バイオマス講演会), 高知市, 2018.3.2.(招待講演)
  5. 西村裕志, リグノセルロースの構造分析と環境調和型変換, 日本木材学会バイオマス変換研究会春季講演会, 京都市, 2018.3.16.(招待講演)

課題5 バイオマス形成における高分子集合機構の解明 (今井友也)

バイオマスは高分子性の固体であることから、その合成機構を解明するためには生化学と高分子科学を必要とする。これらの融合研究により、バイオマス有効利用の基礎情報を与える。

研究成果

  1. 田島寛隆、 Paavo Penttilä、今井友也、杉山淳司、湯口宜明 「セルロース合成の時分割X 線小角散乱による計測」 第55回日本生物物理学会年会(熊本市,2017/9/19-21)
  2. Paavo A. Penttilä、今井友也、湯口宜明 「時分割小角X線散乱測定によるセルロース合成酵素活性のその場観察」 第24回セルロース学会年次大会(岐阜市,2017/7/13-14)
  3. 今井友也、中島啓介、石水毅 「脂質変換大腸菌による真核生物膜タンパク質の発現」 2017年度生命科学系合同年次大会(神戸市,2017/12/6-9)
  4. 今井友也、田島寛隆、Paavo Penttila、杉山淳司、山本響湖、湯口宜明 「X線小角散乱法による セルロース合成酵素のライブ観察」 第11回細胞壁研究者ネットワーク定例研究会(京都市,2018/10/28-30)
  5. 今井友也、石水毅、中島啓介 「脂質変換大腸菌による細胞壁生合成関連酵素の発現」 第68回日本木材学会大会(京都市,2018/3/14-16)
  6. 田島寛隆、Penttila Paavo、山本郷湖、杉山淳司、今井友也  「時分割小角X線散乱による試験管内セルロース合成のその場観察」 第68回日本木材学会大会(京都市,2018/3/14-16)
  7. Hirotaka Tajima, Paavo. A. Penttilä, Kyoko Yamamoto, Yoshiaki Yuguchi, Junji Sugiyama, Tomoya Imai 「In situ measurement of cellulose biosynthesis using small angle X-ray scattering」 The 255th ACS National Meeting Spring(New Orleans,2018/3/16-21)
  8. Tomoya Imai, Junji Sugiyama 「Cellulose II formation by cellulose synthase: Negative data can make themselves positive」 The 253rd ACS National Meeting Spring(San Francisco,2017/4/2-6)
  9. Paavo A. Penttilä, Tomoya Imai, Masahiro Mizuno, Yoshihiko Amano, Junji Sugiyama, Ralf Schweins 「Applications of small-angle scattering for characterizing the nanoscale morphology of bacterial cellulose」 The 3rd International Symposium on Bacterial Nano Cellulose(Fukuoka,2017/10/16-17)
  10. Shi-jing Sun, Tomoya Imai, Junji Sugiyama, Satoshi Kimura 「Molecular anatomy of cellulose synthase complex in Acetobacter」 The 3rd International Symposium on Bacterial Nano Cellulose(Fukuoka,2017/10/16-17)
  11. Tomoya Imai, Shi-jing Sun, Junji Sugiyama 「CESEC: a platform to assay cellulose synthase activity」 The 4th International Cellulose Conference 2017(Fukuoka,2017/10/18-20)

課題6 バイオマス利用におけるセルロース抽出前処理工程の簡素化 (吉村剛、堀井三郎、岡久陽子)

モウソウチク粉を水酸化リチウム溶液に浸漬し、常温・常圧下で180分間撹拌処理することによって、回収後のセルラーゼによる糖化効率を80%近くまで向上しうることを見出した。また、本処理がセルロースナノファイバー調製における工程の簡素化につながる可能性も確認した。

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