【プレスリリース】矢吹正教特任准教授らが、線状降水帯など豪雨予測への貢献が期待される気温ラマンライダー用の多波長分光検出器を開発しました
気温ラマンライダー用の多波長分光検出器を開発―気温・水蒸気量をいつでも安定に同時計測し、線状降水帯などの豪雨予測への貢献を期待―
近年、全国各地で水災害の激甚化が深刻な問題となっており、気象予報精度をさらに向上できれば、被害低減にもつながり得ることが期待されます。大気境界層における気温・水蒸気量の鉛直分布の高頻度・高精度の観測は、水災害を引き起こす局地的な降水過程の理解や、気象予報精度の改善に役立ちます。光を用いたリモートセンシング手法の一つであるラマンライダーは、光源波長からシフトした波長帯に現れる空気分子からの微弱なラマン散乱光を分光計測することで、高度ごとの気温と水蒸気量の情報を得ることができます。気温は、温度により形状が変化する純回転ラマンスペクトルの計測から求めますが、実用性の高い多波長検出法ではスペクトルの中心に現れる強い弾性散乱光(レーザー波長と同じ波長に現れる散乱光)の除去が課題となっていました。
このたび、矢吹正教 生存圏研究所特任准教授の研究グループと英弘精機株式会社は、深紫外波長のレーザー光を用いて気温の高度分布を計測するラマンライダー用の迷光の少ない多波長分光検出器を共同開発しました。先行して開発された水蒸気量の高度分布を計測するラマンライダーに追加することで、気温・水蒸気量を昼夜問わず安定に同時計測することが可能となり、線状降水帯や局所的な豪雨などの予測精度向上に寄与できると期待されます。
研究者のコメント
「約10年かけて構築した迷光の影響が少ない光学系による観測から、気温が推定できるところまで来ました。今後は激甚化する気象水災害に対応すべく、社会実装に向けた取組を推進していきたいと思います。」(矢吹正教)