生存圏フォーラム40回連載コラム
平成三十年度卯月、今年は桜の開花が早かったように思います。雨も降らず、花冷えもなく、あっという間に咲いて、あっという間に散り始めてしまいました。故郷の九州では、さくらはソメイヨシノのばかりでしたが、枝垂桜、ヤマザクラ、寒山桜、カンヒ桜など、京都にはいろいろな桜があり、お花見が昔よりもっと好きになりました。3月末は、学会シーズンで、まず実験室の外へ出るという機会に恵まれ、週末以外に花を楽しむ機会があるので、桜は割と楽しめます。今年は3月末に東京に海外共同研究者の先生が来ることになっていたので、それまでに桜が咲けばいいな、と思っていました。同じ週に雪が降るなどの出来事はありましたが、幸い桜は満開。滝廉太郎の世界を感じたいと、来客にかこつけてぜひとも「隅田川クルーズを!」と願っていましたが、時間が許さず。代わりに慶応大学医学部近くの新宿御園で桜を愛でて、その後日、学会のあった鹿児島甲突川沿いでソメイヨシノを楽しみ、京都に戻ってきてからは、せっせと平野神社まで足を運びました。平野神社では、おりしもお琴の演奏会が行われていて、春風の中ではらはらと舞う桜の花びらに響くお琴の音色を聴きながら、桜ほど散る姿の美しい花はないのではないかしら、とうららかな春の日を楽しみました。毎年春が来るたびに咲いて散る桜は、その年々で表情を変え、それでも常に美しい。四季を楽しむことは、桜の木のように、風雨に負けず根を下ろし、倒れることなく笑顔で次の季節を迎えようという、一つの気概ではないかとふと思ったのでした。
(生存圏フォーラム会員 生存圏研究所助教 柳川 綾)