menu

生存圏フォーラム第45回連載コラム

当たり前のこと
 前職でポスドクをしていたころ、ノーベル賞受賞者とお話しする機会を得た。そのころの研究テーマはそのノーベル賞受賞者とほぼ同じであり、短い時間ではあったが科学的なディスカッションをさせていただいた。その時に感じたのは「何も特別なことやってないなあ」というものだった(もちろん目の付け所、判断のタイミングなど凡人には及ばない点も多々あるのだろうけど)。つまり当たり前のことを当たり前にやった結果がノーベル賞級の業績につながったのだと思う。勇気づけられた一方で、「同じことやっているはずだけどなあ・・・」と凹んだのも事実である。あまり人に憧れをもつことがない人間なのだが、この姿勢はかっこいいなあと心から思っている。何とかつめ跡を残して、自分の実感として「当たり前のことを当たり前にやった結果です」という感想をどや顔で言ってみたいものである。

(生存圏フォーラム会員 京都大学准教授 T. I. )