津田研究室(京都大学生存圏研究所 大気圏精測診断分野)

津田研究室が取り組んでいる研究についてご説明します。

研究内容 / GPSによる大気観測:掩蔽観測

GPS衛星が地平線に沈む(または昇る)際の電波を連続的に受信することで、気温や水蒸気の鉛直分布を求めることができます。当研究室では、そのための受信機や信号処理システムの開発から気象学的応用まで幅広く取り組んでいます。

GPS掩蔽観測とは

掩蔽現象(Occultation )
月や惑星の背後に、星が隠れる現象。食とも呼びます(月食、日食)
電波掩蔽観測
人工天体(Mariner、 Voyager等)が掩蔽される際に、電波が惑星大気を通過し、わずかに屈折します。この信号から惑星大気の構造を推定します。1960年代より金星・火星の大気、ガス状惑星(木星・土星等)、惑星の輪の研究に活用されました。
GPS掩蔽観測
GPS電波を用いた地球大気の掩蔽観測。地球の場合、観測点と受信点が近いので、掩蔽観測は非常に困難でした。GPS衛星の登場と、衛星軌道要素(位置・速度)の決定精度が向上したことで、はじめて実現しました。 (位置〜10cm、衛星速度〜0.1mm/秒)

低軌道衛星や航空機、山頂でのGPS観測

 GPS電波の掩蔽観測は、1995年に低軌道な人工衛星に受信機を積むことから始まり、現在も新しい衛星搭載の計画が次々立てられています。最近当研究室では、より安価に多量の掩蔽データを取得するため、山頂や航空機でGPS電波を受信して同様な観測を行うための開発に着手しました。そのための受信機も企業と共同開発しています。

GPS掩蔽観測の威力

 人工衛星による従来の大気観測は鉛直分解能には乏しく、良くて2km程度でした。しかし、GPS掩蔽観測では500mをも下回る分解能で観測でき、その結果鉛直に薄い構造を持つ大気現象が解明できるようになりました。

 図は、気球による直接観測とGPS掩蔽法の比較です。GPS観測が驚異的な精度と分解能を持つことがわかります。

GPS掩蔽観測により明らかになった大気現象のグローバル分布

 大気中には、大気重力波と呼ばれる波動が存在し、大気循環等に重要な役割を担っています。そのグローバルな分布をGPSを使って始めて明らかにすることが出来ました。

↑当研究室で求めた大気重力波のグローバル分布

 GPSは、通信障害をもたらす電離層の擾乱も観測できます。

↑当研究室で求めたスポラディックE層発生のグローバル分布

GPSによる総合的な地球環境モニタリング

 GPS電波の衛星受信は、大気の掩蔽観測にとどまらず、地球内部や海洋深層の変動を明らかにするのに役立ちます。当研究室を中心に、そのための大型研究プロジェクトを実施しています。

現在進行中の研究・開発テーマ

精密測位衛星による地球環境監視技術の開発

科学技術振興事業団の同名の大型プロジェクト(代表:津田敏隆)において、大気だけでなく固体地球や海洋までも含めてGPSで変動をモニターするための開発を行っています。
航空機搭載受信機の開発
電子航法研究所及び企業と共同で、航空機のナビゲーションと大気観測を同時に行うためのGPS受信機を開発しています。
人工衛星搭載受信機の開発
当研究室は、ブラジルが打ち上げ予定の人工衛星EQUARSにGPS受信機を搭載予定です。
GPS掩蔽観測データ配信システムの開発

EQUARS衛星で受信した掩蔽観測データを気象庁に配信し、天気予報に活用するためのシステム構築を行っています。
掩蔽観測データを用いたグローバルな大気の研究
大気重力波等の研究を通して、地表から電離圏にいたる大気の上下結合を研究しています

当研究室での関連学位論文

関連する研究・プロジェクト

研究
プロジェクト

当研究に用いられる装置

 当研究は、以下の装置を用いておこなわれています。

- TSUDA Laboratory - Research Institute for Sustainable Humanosphere [Contact]