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生存圏フォーラム33回連載コラム

オーロラと宇宙生存圏 
北極圏にある研究所に2年間勤務したことがある。オーロラが高頻度で現れるというオーロラ帯の直下にあり、秋から春にかけては毎晩のようにオーロラを見ることができる。オーロラの特等席だ。オーロラの光は微弱なので、市街地では殆ど見ることができない。そこで市街地から数十キロメートル離れた森の中によく出かけた。周囲には人影も民家もない。自分の呼吸の音しか聞こえない静寂の世界だ。そこで空を見上げると、天空から光の矢が自分めがけて向かってくるような錯覚に陥る。オーロラの発光原理は理解しているが、ときに恐怖を感じることさえある。大自然の営みを受け止めているようで、人間のはかなさを痛感する。厚い大気が宇宙から降り注ぐ高エネルギーの粒子を遮るため、幸いなことにオーロラが人間に直接影響を及ぼすことはない。ところが、大気の外側に一歩踏み出すと飛び交う高エネルギー粒子と直接対峙することになる。対策を講じるためには高エネルギー粒子の挙動を知る必要があるが、宇宙はあまりに広大で、全体を把握することが極めて困難だ。地球周囲の宇宙空間は意外にわかっておらず、予測技術も殆ど進んでいないのが現状である。そこで数値シミュレーションが威力を発揮する。スパコンの性能は年々向上し、生存圏研究所のスパコンでは1万並列の計算が可能になっている。数値シミュレーションを活用して太陽と地球の関係についてよりよく理解し、安全な宇宙の利用に貢献することが目標である。
(生存圏フォーラム会員 京都大学准教授 海老原 祐輔)