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生存圏フォーラム 第29回連載コラム

一昨年末に発効したパリ協定と呼ばれる温暖化対策に関する多国間の国際的な取り決めがあります.これについては,某国の大統領がこの協定から離脱するとかなんとかいっているのでご存知の方も多いかもしれません.実はこの協定,一つ重要なポイントがあって,それこそいわゆる京都議定書以来ずっと国際的な論議がおこなわれてきたのですが,足並みの揃わなかった温暖化対策に対して,今回はじめて気候変動枠組条約に加盟する196カ国全てが参加する枠組みとして動き出したという点です.同じような話があって,いわゆるオゾンホール問題が顕在化したとき,30年ほど前になりますがモントリオール議定書というオゾン層破壊物質の規制を目的とする国際的な約束事が決められました.これには当初からすべての国連加盟国が批准し,みなが足並みを揃えてオゾン層破壊物質の削減を強力に推し進めてきたことで現在ではオゾン層が回復基調にある,そういう地球に今私たちは生活しています.オゾン層の回復はある意味で,私たち人類が勝ち得た大きな成功体験であったわけですが,うまくいった話はなんとなく記憶の彼方にいってしまいがちなものです.このパリ協定を通して温暖化対策に向けた人々・国々の意識を揃えることにより,私たち地球の持続可能性を阻む要因を少しでも小さくすることができればよいなと考えています.
(生存圏フォーラム会員 京都大学教授 塩谷 雅人)