生存圏フォーラム 第22回連載コラム
私はよく病院で血液を採取されます。血液をとられるときは、いつも少しドキドキします。「血液の色が宇宙人みたいに緑色だったらどうしようかしらん。」これは普段みていないものを、あからさまに目の前で示されることに対する不安というか、興味ということです(私だけだったらすいません)。普段見ないものが見られる瞬間のドキドキは、科学を進歩させてきた人類の原動力と同じ種類のものと思います。「まだ誰も見たことがない現象をみつける」、「わからなかった真実を明らかにする」、「想像もしなかった技術で、不可能を可能にする。」そもそも私の血液が緑色だったら大発見なわけで、そこにある真実はなにか?というところから科学が進歩していくのでしょう。科学とそれを基盤にした技術は人間の生活を豊かにしてきましたが、同時に、科学は「好奇心」や「驚く喜び」を通して、人の心も豊かにしてくれると思います。「あら?」、「なんで?」、「なんだろ?」、「信じられない!」、「すごーい!」、「うそー!」、「へー!」、「びっくりぽんや!」(くどいっ)。この明るい「?」と「!」はとってもいいですね。近年はどちらかというと科学の世界も「もの」へつながる部分が強調される気運があると思います。しかし、心も純粋に豊かにしてくれる科学のやくわりも、やはり大切にしていきたいと思いますし、私たちが取り組む生存圏科学(やっと出ました)も、そうであって欲しいと願います。
(生存圏フォーラム会員 京都大学准教授 小嶋 浩嗣)